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    yukarixxx000

    @yukarixxx000
    二次創作が好きなオタク。大体男同士カプを書いてます。
    ※ポイピクにアップした作品は後日ピクシブにも投稿します。

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    ヴェパシ。
    弊ヴェパシなので炎帝様は駄犬ちゃんにめろめろ仕様です。
    ドラちゃんコラボイベント、エンディングでのふたりのやり取りから妄想が広がったネタです。

    公開と秘匿のボーダーライン「おせっかいなんだ、貴様は」
     むっつりとした声でそう言うと、パーシヴァルは紅茶を飲んだ。シェロカルテが特別なルートから仕入れた品で、滅多に市場に出回らない珍しいものらしい。紅茶マニアの間ではかなり人気なのだと言う。実際、紅茶はうんと美味かった。ふだん飲んでいる紅茶に比べて、香りも味もずっと上等だ。
     しかしどれほど素晴らしい紅茶であっても、パーシヴァルの不機嫌を直してはくれなかった。パーシヴァルは眉をひそめながら、隣に座るヴェインをにらむ。剣呑なまなざしをくれてやったつもりだったが、ヴェインは怖気づくこともなく、「またそうやって素直じゃないこと言って」と肩をすくめるだけだった。
    「さっきのもそうだけど、もっと素直になってもいいんじゃねえの?」
     さっきの、というのは、のび太に感謝されたパーシヴァルが「礼を言われるようなことはなにもしていない」と答えた一連の流れを指している。そうして、近くでその会話を聞いていたヴェインが「パーさんってば素直じゃないんだから」と口を挟み、更に「ホントはスッゲェ喜んでるから、許してやってくれよな」とのび太に言ってのけたことが、パーシヴァルの言うところのおせっかいだった。ヴェインが余計なことを言ったので、パーシヴァルは機嫌を損ねているのである。
     ヴェインとしては、良いことをしたつもりなのだろう。だがパーシヴァルにしてみれば、うっとうしいおせっかいでしかなかった。むしろ迷惑だった。
     パーシヴァルとのび太の会話にとつぜん割って入ってくるのも失礼だし、パーシヴァルに呆れるような物言いをしてみせたのも不愉快に思われた。「許してやってくれよな」という言い方だって癇に障った。まるでパーシヴァルが聞き分けのない幼子で、ヴェインはその失態をフォローする保護者であるかのようだ。馬鹿にされているようで、腹が立った。
     しかしそれらの行為は、ヴェインにとっては気遣いのつもりなのだ。だからヴェインには、自分が悪いことをしたという意識がまるでない。パーシヴァルがにらんでも動じていないのがその証拠だ。
    「ま、素直じゃないのも、パーさんの味わい深いところだと思うけどさ」
     言って、ヴェインはグラスを呷った。もっとも、グラスの中になみなみと注がれているのは酒ではない。オレンジジュースだ。
     今夜の催しでは、酒の類はごくわずかしか用意されていなかった。主役であるドラえもんたちが、まだ幼い子どもであるためだ。飲み物だけでなく、料理も子どもが喜びそうなメニューが中心だった。それでも誰も文句を言わず、にこにこしながら楽しんでいるのだから、まったくこの空にはお人好しが多い。そういう空だからこそ、愛おしいのだけれども。
    「貴様に味わわれる筋合いはないな」
    「筋合いがなくても、勝手に味わっちゃうもんねー」
     ヴェインがへへっといたずらっぽく笑うので、パーシヴァルは閉口した。
     はーあ、とわざと大げさに溜め息を吐いてみせても、ヴェインに反省する様子は見られない。これだから駄犬は、とパーシヴァルはヴェインから顔をそむけて、多くのひとで賑わう会場を眺めた。
     パーシヴァルとヴェインが座っているのは端の席だから、会場の様子がよくわかる。ドラえもんたちはもちろん、グランやルリア、他の面々も、皆一様に笑顔だった。朗らかな喧騒に満ちた空間には、何か美しいものがいっぱいに溢れているように感じられた。
     自分はきっとこういう美しさを守りたいからこそ騎士であるのだろう、とパーシヴァルは思う。こっそりとヴェインの様子を窺えば、ヴェインは頬杖をつき、穏やかな微笑みを湛えながら、パーシヴァルと同じく宴を楽しむひとびとを見守っていた。細められた目には優しさが溶けている。だからきっと、ヴェインが騎士である理由だって、パーシヴァルと似たようなもののはずだ。そう考えると、少し気分がよくなった。
     ヴェインの横顔はおおらかであたたかく、けれど精悍でもあった。この男なら頼れる、信じられる。そう思わせてくれる、優しくも力強い顔かたち。
     おせっかいで口の減らない駄犬だが、この横顔は、いい。パーシヴァルは思わずヴェインの横顔に見入った。肉付きのよい頬にそうっと触れたくなるような、その一方で決して触れずにおきたいような、不思議な心地がした。
     ふいに、ヴェインはパーシヴァルに向き直った。ふたりの視線がばちりとぶつかる。
     ヴェインはきょとんとして、それからにやりと笑い、「パーさん、俺のことじっと見てたの? 見蕩れてた?」
    からかうような、それでいて嬉しそうな声音だった。パーシヴァルの顔はカッと熱くなる。
    「そんなわけがあるか、馬鹿」
     パーシヴァルはそっぽを向いて、荒々しい仕草で再び紅茶を飲んだ。ほんとうはそんなわけがあったのだが、その事実をヴェインの前で認めるなど、パーシヴァルのプライドが許さなかった。
    「えー、ほんとは俺に見蕩れてたんだろ? 素直になっちゃえって、ほらほらあ」
     しかしヴェインはパーシヴァルの言うことなどちっとも信じていないようで、にやにやしながらパーシヴァルの肩を小突いてくる。パーシヴァルは苛立ちを隠すことなく、乱暴にヴェインを振り払った。それでもヴェインはにやけたままだ。
     パーシヴァルはヴェインの脚を蹴ってやるが、それでもヴェインはにやけ面を引っ込めなかった。
     くそ、と悪態を吐きたいのをぐっと堪えて、パーシヴァルは紅茶を飲み干した。
    「……何であんなおせっかいをしたんだ」
    「うん?」
    「のび太にわざわざ、ほんとうは喜んでいるから許してやってくれ、と言ったことだ。……別にあんなことを言う必要はなかった」
     ヴェインのにやけ面をどうにかしたくて、パーシヴァルは話題を変えた。あの腹立たしいおせっかいについて、弁明があるなら聞いてやらないこともない、という思いもあった。
    「うん、必要なかったかもな」
    「はあ?」
     ヴェインがあっさり頷いたので、パーシヴァルは目を見開く。
    「のび太ならきっと、パーさんがほんとうは優しくていいヤツだってわかってくれてるよ。わざわざ俺がフォロー入れる必要、なかったと思う」
    「なら、どうして……」
    「だって、もしも万が一、のび太がパーさんのことを冷たくて怖いヤツだって勘違いしてたら、そんなのって悲しいじゃん。だから、念のためにフォローしときたくてさ」
     へへ、とヴェインは笑う。照れくさそうな笑い方だ。そんなヴェインを訝しく思い、パーシヴァルは訊ねた。
    「……俺が冷たい人間だと勘違いされて、それでどうして貴様が悲しむ?」
     ヴェイン本人が誤解されるわけではないのに。パーシヴァルが冷淡な人間だと思われたところで、ヴェインには何の損害もないだろうに。
     怪訝な顔をするパーシヴァルを見て、ヴェインはきょとんとしながら首を傾げた。
    「優しいヤツが誤解されちゃうのは、悲しいことだろ?」
     何でそんな当たり前のことを訊くのだろう、と不思議に思っているような雰囲気で、ヴェインは答えた。屈託が無い仕草だ。毒気の無い表情だ。パーシヴァルを見つめる瞳は純粋そのもので、何の曇りも汚れもなかった。
     パーシヴァルはその瞬間、ヴェインの持つ澄み渡った善性に直に触れたような気がした。その善性は美しさでもあった。
     ――どうしてこいつは駄犬のくせに、ときおりふいに、俺では敵いようもない美しさを見せつけてくるのだろう。
     ヴェインという男の美しさを痛感して、パーシヴァルは言葉を失った。何も言えずにヴェインをただただ見つめていると、ヴェインは「それにさ」と言葉を続けた。
    「俺の好きなひとが変なふうに誤解されるのだって、すっげえ悲しい」
    「……は」
    「好きなひとの良いところは、やっぱ、きちんとわかってもらいたいじゃん」
     思ってもみない言葉に、パーシヴァルは呆気にとられた。
     ヴェインは頬を薔薇色に染めて、ふへへ、と締まりのない笑みを浮かべる。その表情には美しさなど欠片もなく、けれどその代わり、壮絶な愛くるしさがあるのだった。
     パーシヴァルの顔はますます熱くなる。ヴェインは頬だけを赤くしているが、パーシヴァルは顔中が真っ赤だ。ヴェインが目を細めて「うわ、パーさん、顔がいちごになってる」と笑う。声はからかうようなのに、瞳と笑みにはたっぷりの愛情が溶けていた。そのまなざしと笑顔はパーシヴァルただひとりにだけ向けられているのだと思うと、気がおかしくなりそうだった。
    「あ、でも」
     ヴェインはちょっと恥ずかしそうに声を潜めて、「いまみたいなパーさんの可愛さは、誰にも知られたくない、かも」
     ばか、このばか、だから貴様は駄犬なんだ!
     そう叫びたい衝動を堪えて、パーシヴァルは机に突っ伏した。
     優しいのは俺よりも貴様のほうだろう、とか。
     他の誰にどう思われようが、ヴェインが俺を善く思ってくれていれば、それだけで俺は何にも負けないでいられるのだ、とか。
     可愛いのは貴様のほうだばかこのばかほんとうにばかだ貴様はどうして不意打ちでそういう破壊力の高いことをするんだこの駄犬! だとか。
     言いたいことはいくらでもあった。いくらでもあったのだが、パーシヴァルはぶるぶる震えるばかりで、ただの一言も発することはできなかった。
     そんなパーシヴァルの髪に、ヴェインの指が触れる。太く、厚く、あたたかい指。誰かを守ることに長けた優しい指が、パーシヴァルの髪を丁寧に梳く。愛情の滲む手つきだったものだから、パーシヴァルはヴェインが愛おしくて愛おしくて、いよいよ心臓が破裂しそうになった。
     ――この男の優しさこそ、他人に正しく伝えねばならない。
     愛しさの洪水の中で、パーシヴァルは思う。自分はいくら誤解されてもいいが、ヴェインが誤解されるのは許せない。ヴェインがいかに善良で美しい人間であるか、いっそこの空の全ての人間にわからせてやりたかった。もっとも、ヴェインはパーシヴァルと違って素直に善性を振り撒く男なので、パーシヴァルが特別何かをする必要などないだろうが。
     ――だが、この指の優しさは。
     ヴェインがどれだけ優しくパーシヴァルに触れるかという、そのことだけは、パーシヴァルただひとりの秘密にしておきたい。宝箱に大事にしまうように、誰の目にも触れぬように隠しておきたい。パーシヴァルは、ヴェインのことが、好きなので。
     賑やかな宴会場の中で、パーシヴァルとヴェイン、ふたりの周りだけが静かで、そのくせやたらとあたたかく、きらきらとして、甘かった。
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