廻る歯車の箱庭カチッ……カチッ……カチッ。
巨大な二つの歯車が噛み合いながら、ゆっくりと回りながら巡る。歯車が止まること無く廻るから、この奇妙な世界も廻る。ゆっくり、時間を掛けて。
――べしゃり。
灰色の空に半透明な0と1が、迷子になったパズルピースの様に浮かんでいる。小さな黒い塊が、宙から落っこちてきた。背中にゼンマイをくっつけたリスが、小さな螺旋を投げ棄てて飛び退く。もぞもぞ、赤茶の煉瓦の上で小さく身動ぐ黒い塊。
ぴょこんっ、小さな三角の耳が二つ。不機嫌そうにゆらゆら揺れる逆立った尻尾。アーモンドに似た大きな眼が、忙しなく動く。どうやら、宙から落っこちてきたのは黒い猫らしい。黒猫は丁寧に顔や耳を洗い、辺りを一瞥して澄まし顔で歩き始めた。黒猫が向かう先には、小さくペンギンの様なものが見える。
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