ある日の夜、突然彩夢から送られてきた「別れよう」という端的なLINE。
何となく、分かってた。もうきっと、私達は長くないことも。
でも、心が着いていかなくて、「ちゃんと話がしたい」と返信をした。最後に、彩夢の本心が聴きたかった。
しかし、そんな願望も虚しく1ヶ月程未読無視されている。
もうきっとブロックされているのであろう彩夢とのトーク履歴を何度も読み返しては思い出に浸る。彩夢は文面でも優しい。
私にとっていつでも欲しい言葉をくれる彩夢は理想の彼氏ではあったものの、本音でぶつかり合うことはなく、それがどうしようもなく、苦しかった。ちゃんと、心から彩夢と分かり合いたかった。
彩夢より良い男なんて居るはずもないと知りながら、なんか新しい出会いでもないか
なと渋谷の街を歩いていると、とあるカフェが目に入った。
ここ、彩夢が「##name1## ちゃんが好きそうな内装とメニューだから、開店したら一緒に行こう」って誘ってくれたところだ……。もうオープンしてたんだ。
入店しようと足を止めると、窓際の席にやけに目を引く男が座っていることに気が付いて、溜め息が出る。その男__いや、彼、の目の前にはいかにも今どきといったファッションに身を包んだ同年代くらいの女性がいて、2人は随分と楽しそうに話し込んでいた。
彼女は切らしたことがないとは言っていたが、まさかこのレベルだとは思ってもみなかった。そもそも、私はまだ、きちんと別れたと認識してもいないのに。私はまだ、彩夢のこと。
ふつふつと湧き上がる未練と悔しさと、その他色々な感情が綯い交ぜになり、ツカツカとヒールを鳴らして2人に近づく。
私と目が合う直前の女が、あまりにも幸せそうな、満ち足りた顔をしていて、思わずテーブルにあったコップを手に取る。
__バシャッ!
「ちょっと!」
派手な音と共に彩夢の髪や顔から服へ、水が滴り落ちる。
瞬間、時が止まり、やってしまった、と思った。
視野の広い彩夢にとって、私の衝動的且つ周りが見えなくなるところはきっと嫌だったに違いない。こんな女とは別れたくもなるか。
髪から水が滴り落ちる彩夢は本当に絵になっていて、かっこよくて、更に腹が立った。
彩夢の前に座っていた女が彩夢!と心配そうに声をかけ、彩夢にピンク色のハンカチを渡し、彩夢は躊躇なくそれを受け取って髪を拭きながらこちらへ視線を動かした。
「##name1##ちゃん……どうしてここに?」
「私まだ、彩夢と別れるなんて言ってないから!」
「……え、いや、何勘違いしてんの……」
飽きた。
これ実は目の前に座ってんの普通に彩愛です。