ねこのしん(小) 私は猫である!名前は鯉登音之進。薩摩で生まれ、大日本帝国陸軍北海道第七師団歩兵第二十七聯隊に所属していた軍人だ。ちなみに最終的にすごく偉くなった。しかし、今は一般的な猫である。
「にゃん、にゃん」
「くっ」
「ごろごろ」
「あざとい……」
「ふふ、それがいいくせに」
私は子ども猫。身長は月島より低いしまだ筋肉もない。いや月島の筋肉がすごすぎるのか。とにかくまだまだ子どもだ。けれど、だからこそ良いこともある。私が猫っぽく鳴いてみせると月島は手で顔を覆う。はじめは何かあったのかと思ったが、どうやら私の可愛らしさにやられているらしい。私たちの衣食住のために日々働いてくれる月島のため、私は今日もにゃんにゃんするのだ。
「閣下、仕事が手につかなくなるのでほどほどにしてください」
「ないごて?癒されるだろう」
「癒し効果が強すぎてだめになります」
月島、私のこと好きすぎだろう。私も好きだ。
月島は最近転職した。私を見つける前はだいぶよろしくない会社で働いていたようだ。しっかりと私を養うため、健康的な生活を送るためとのこと。再会してからあっという間に転職した。すごい行動力じゃないか。
不思議なことに、現世には二種類の猫がいる。人間に猫の耳と尻尾をつけたような猫。昔もいた小さくてすばしっこい猫。私は前者だ。前者の猫は大きくなると人間と同じように仕事することもできる。もちろん、飼い猫として家で過ごす奴も多い。私は早く大きくなって月島を支えてやりたい。そう話すと月島は妙な顔をした。
「別に、無理に働かなくてもいいじゃないですか」
「おいが月島を養いたい!」
「俺がお世話すると言ったでしょう。貴方はずっと家にいて……俺を待っててくれればいいんです」
私より太い両腕で抱きしめられる。もう数年も経てば私も負けないくらいの身体つきになるはずなのだが。後頭部に低い鼻が擦り付けられる。これは相当きている時の仕草だ。
「月島ぁ、だいぶ疲れちょ」
「そうじゃなくて、貴方がそんなこと言うから」
「気を悪くしたか」
「なんと言いますか……」
腕を後ろに回し坊主頭を撫でてやると月島はぽつりぽつりと呟いた。
「あの頃は貴方の帰りを待つばかりでしたから、今度は貴方に待っていてもらいたいんです。待ち続けることは簡単ですが、ふとした瞬間におそろしくなります」
「……そんなこと考えとったか」
「もう時代は変わったので、許してください。今は貴方が待ってくれていると思うと毎日どんなことも頑張れます。我儘だと分かっていますが、やはり貴方にここにいてほしい」
今世の月島は素直に気持ちを吐露することが多くなった。長い間秘められていた気持ちに胸が痛くなるが、それ以上に愛しさを感じてしまう。
っていうあれを読みたいです。