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    秀二🐻‍❄️

    ヘキの墓場🪦
    現在はくるっぷメインのため、通常は更新していません

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    私のスマホが壊れたので、スマホが壊れた鯉月です(何も考えていない)

    付き合っていてまだ同棲していません。
    これがきっかけで同棲したらしいです。

    これからスマホと物件見に行こう せっかくの休日だというのに、朝起きたらアンラッキーがひとつ。スマホがうんともすんとも言わない。電源を長押ししても充電してみても、真っ暗な画面のまま一切反応してくれない。昨夜、少し高いところから落としたがそれがいけなかったのかもしれない。
     今日はいつも通り月島と会う約束をしている。しかし、どこでかは決めていない。少なくとも私か月島の家、どちらかで会うつもりだった。月島もそのはずだ。時刻は8時30分。店はまだ開いていない。月島は休日でも早起きする男だし、早めにあちらの家へ向かおう。
     反応しないスマホと財布、替えの下着類などを持ち私は家を飛び出した。月島の家までは約40分。



     4年半使っていたスマホがついに寿命を迎えたらしい。朝起きたら、全く反応しなくなっていた。試せることは全て試したが画面がつく気配はない。長いこと使っていたから仕方ないのかもしれない。今までお疲れ様。
     今日は鯉登さんの家に行くか、俺があちらに行くかの予定だった。朝起きてから決めようと思っていたらこれだ。連絡の取りようがない。電話番号でも控えておけば良かっただろうが生憎と控えがない。鯉登さんの名刺に書いてあるのも会社の代表番号と仕事用の携帯番号のみだ。
     時刻は8時きっかり。鯉登さんはおそらくまだ寝ているだろう。こうなれば、こちらから鯉登さんの家に行くしかない。いらない心配をかけるより鯉登さんが起きる前にチャイムを鳴らせばいいのだ。
     念のため動かないスマホと財布、あとは替えの下着類をリュックに詰め家を出た。ここからであれば40分もあれば到着できるだろう。ついでに飯の買い物もして行こうか。




    「……留守か?」

     9時過ぎに月島の家に到着した私は、数回チャイムを鳴らした。しかし月島は出てこない。あの男は早起きであるし、その上寝起きもいい。寝ていたかと思えば、心配になるほど一瞬で起きて活動を始めるような奴だ。家にいるならば反応しないわけがない。相変わらずスマホは反応なしだが、もしかしたら連絡をくれていていたのかもしれない。

    「月島ぁん……」

     何となく心細い気持ちになってくる。早く月島の顔を見たい。声を聞きたい。月島が私の家に向かっていると信じて踵を返した。




    「……留守なのか」

     腕時計を見ると9時30分。鯉登さんの立派なマンションに着いた俺は、これまたご立派なドアのチャイムを鳴らした。数回鳴らしてみたが反応はない。中に人がいる気配もない。さすがに起きている時間だろうから、眠っていて気づかないということはないだろう。あの人は耳もいい。
     きちんと約束もしていなかったから、もしかしたらどこかへ出かけたのかもしれない。軽く飯でも作ろうと買い物をしてきたが、このまま引き返すか。幸い今日は涼しいから腐る心配もない。

    「……」

     そう、はっきり何時にどこでという約束をしてないのだ。だから仮に鯉登さんが他の用事でどこかへ出かけたのだとしても、俺は咎められない。そう理解しているが少し面白くない。自分勝手だろうか。もしかしたら鯉登さんは『やはり今日の約束はキャンセルで』とスマホに連絡をくれているかもしれないじゃないか。不明確な約束とはいえ、無断で予定を流すような人ではない。せっかくの土曜だというのに何とも面白くない。

    「……俺は何をやっているんだ」

     こんな思考をするとは、なかなかに重症だ。自分としては束縛や嫉妬をするタイプではないと思っていたのだが。なんだかんだしているじゃないか。
     来たばかりで踵を返すのも、それはそれで面白くない。高層階のため廊下を見下ろせば下界が見える。ため息をつきながら何気なく空を眺め、下へ視線をやった。

    「あ」

     通りをやたら早足で歩いている人が見える。大股でずんずんとこのマンション方面に向かっている。遠いためはっきりとは見えないが、鯉登さんに似ている。鯉登さんならいいと思っているからそう見えるのだろうか。その人はあっという間にマンションの下までやって来て、恐らく建物に入ってきた。
     鯉登さんだろうか。そうだといい。先ほどまで勝手に拗ねていた手前、何となく気まずい思いがある。エレベーターに背を向け、俺は意味もなくもう一度空を眺めた。空は快晴だ。

     2分もしないうちにエレベーターの到着音が聞こえてくる。ドアが開く音と同時に、耳に馴染む声が聞こえてきた。

    「月島っ、やっぱり!」
    「……おはようございます」

     偶然という風を装いたいが、場所が場所のためそうもいかないだろう。俺の気まずさもつゆ知らず、鯉登さんは眩しい笑顔で駆け寄ってくる。

    「すまん、スマホが故障してしまって何も連絡ができなかった」
    「え、あの、俺もです」
    「そっちもか!嫌な偶然もあるものだな」

     どうやら互いに同じ状況に陥っていたらしい。とりあえず家に上げてもらおうかと思ったが、鯉登さんが何か言いたげな顔をしている。

    「どうしました」
    「あの、本当はもっとしっかり準備してから言いたかったんだが」

     数秒後、気恥ずかしげな鯉登さんから告げられた言葉に俺も頷いた。俺も同じことを考えていたのだから。
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