南の向かい風からとおせんぼ 柔らかな朝の日差しに背中を押されて、モクマは跳ねるように走っていた。
エメラルドグリーンの海がキラキラと輝いている。まるで宝石を散りばめたよう。白い砂浜との境は鮮やかで眩しい。
チェズレイ曰く、ここは海ではなく礁湖、白い砂浜はサンゴ礁だという。遠い地平線まで続く湖はモクマの目には海にしか思えないのだけれども。
黄色いビーチサンダルで白地を踏みしめ、波打ち際を駆ける。腕にかけたビニール袋がモクマのアロハシャツと擦れて鳴る音も潮騒に紛れて唄うようで心地良い。
「ほっ!」
両足でひとつの建物の前に立つ。2週間前から根城にしているヴィラだ。リゾート用ホテルで、部屋にいても海風を感じられる開放感をモクマはいたく気に入っていた。
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