路地裏の猫「猫…いた…ちょっと見てくる」
そう告げてすぐ、視界の端に映った猫を追いかける。「あんま遠くに行くなよォー」背後の仲間の声に上げた左手をヒラヒラと揺り、前を歩く猫と共に路地へと消える。ゆらりくらりと自分のペースでとことこ歩く猫を追う足は軽い。追われて逃げているというよりも、時折振り向く両眼はこっちだ着いてこいと言っているようで。
(触らせてくれるかな…)
猫の尻尾を見ながら考え事をしていると、ふ、と立ち止まった。気を抜いた瞬間、予想外の方向へ猛ダッシュ。予想外というのは今までの歩いて来た道、股の下を潜り抜け数m先の更に細い道へと曲がって行った。
「…残念」
綺麗な猫だった。汚れも穢れもない白い猫。顔は少しふてぶてしかったが、瞳の色は例えるならば晴れ渡った空の色。皆のところに戻ろう、元来た道を重い足取りで歩き始める。
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