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    霧雨みず

    @kirisamemizu
    主に一次創作でイラストを描いてます
    アナログ透明水彩、デジタルが中心です
    よろしくお願いいたします

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    霧雨みず

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    本編2話目です

    ##BLUEMOON本編

    BLUEMOON #2出会ったが運の尽き「もう行ってしまうのか」
    「はい。」
    「そうか、寂しくなるな。」
    次の日、リュウは荷物をまとめて出ていく準備をしていた。
    そこにちょうどナギが声をかけてきた。
    「5年間お世話になりました、師匠」
    そうリュウがぺこりと礼を述べると、
    ナギは照れくさそうに返した。
    「よせやい。こっちこそ、ありがとな。
    ……ああそうだ。伝え忘れてたことがあった。
    まずはこの近くにある蒼い月が見えたと言われている
    湖のそばの街に行くといいぞ。」
    「はい。では、僕はこれで。」
    「ああ。また会おうな、リュウ。」
    これからリュウの旅が始まった。
    少しずつ小さくなってゆく背中を、
    ナギは寂しそうに見つめていた。


    「蒼い月が見えた湖、か……。
    師匠の言うこと、本当なのかな」
    伝説の話とはいえ、リュウは実際のところ半信半疑だった。
    ただ単に、自分を独り立ちさせようとした口実ではないかと。
    とはいえ、遅かれ早かれこうなっていたのだと。
    リュウは色々な考えを巡らせながら道を歩いていると、
    やがて看板が見えてきた。
    「なになに……ここから西に行くと
    蒼月ノ湖。夜になると美しい蒼い月が見れます。
    ほんとだ。あれでも、もう蒼い月は現れないはずじゃ……。
    とりあえず、夜になるのを待ってみるか。
    それまで、街に行ってみよう。」
    看板には東に進むとナギが言っていたであろう街があるそうなので、
    リュウは東に進むことにした。

    しばらく歩いていると、賑やかな街が見えてきた。
    ここは月の都と呼ばれている街らしい。
    ぐるりと街を見渡すと、あちこちにお月様のマークをつけた看板や
    のぼりの店が連なっていた。
    やはり、蒼い月の伝説は本当なのだろうか。
    キョロキョロと店を見渡していると、月の形をした饅頭のような食べ物を売っている
    店の老婆が声をかけてきた。
    「あら、この辺では見かけない子だねえ。
    この街は初めてかい」
    「は、はい。」
    「そうかいそうかい。
    さっき見渡してたからわかると思うが、
    この街にはね、夜になるとこの近くの湖に世にも珍しい真っ青な月が夜空に浮かんで
    綺麗なんだけど、なんでも月が出るときに願い事をすると
    夢が叶うと言われてるらしいの。
    それでね、私達もそれにちなんでご利益があるようにって
    月をあしらったものを売ってるのさ。」
    「へ~。だからみんな月の形のものを売ってるんですね。」
    「そう。よかったら、1つ持っていくかい」
    老婆は笑顔で饅頭を差し出す
    「ごめんなさい、僕甘いもの、ダメなんです……。」
    「そうなのかい女の子なのに珍しいねえ。」
    女の子に間違えられたことに地味にショックを受けつつ、
    リュウはその店を後にした。

    「とはいえ、夜までどうしようか……。」
    街を散策するにしても、この街は結構広く見える。
    全部見て回るのは骨が折れるものだろう。
    するとそのときだった。
    「おっと…!」
    前をよく見ていなかったせいか、
    リュウは目の前にいた水色の髪の少女とぶつかってしまった。
    「あ……すみません。」
    「ちょっと!あなたちゃんと前見なさいよね。
    気をつけなさいよ!」
    怒る少女に、リュウは軽く謝って少女の顔を見る。
    すると驚いたことに、あの少女とどこか似ていることに気がついた。しかし。
    「なに?人の顔じろじろ見て、面白いのかしら?」
    「あ、いや……なんでもないです。」
    そう言って、少女は不満そうに去っていた。
    「(気のせい……だよな。
    アオイに似てる、なんて。そんなわけないか。)」
    一方リュウも、気のせいだと頭を横に振った。
    そんな簡単に、あの人の言う妹がいるわけないんだ。
    自分に言い聞かせていると、急に街がざわつき始めた。
    何があったのだろう。
    駆け足でそこへ行ってみると、頭から血を流している女性が
    倒れていた。
    「どうしました……!?」
    「し、知らない男に急に頭を殴られて……!!
    バッグを奪って、あの路地裏に逃げていきました…。」
    女性が指差す路地裏へと、リュウはそこへ走っていった。
    どうして僕は走っているのだろう?
    見過ごせば良いだけの話。
    野次馬の一部になれば良いだけの、話なのに。
    ―いや。
    困っている人を助ける、それが師匠の教えだから。
    息を切らせて走っていると、
    前を見ていなかったせいか黒い影とぶつかってしまう。
    「うわっ!」
    「きゃあっ!」
    「いてて……って君は…!?」
    見上げると、そこには驚いたことに、さきほどぶつかった少女がいた。
    「ちょっと!なんであなたとさっきからぶつかるわけ!?」
    「それはこっちが聞きたいです!
    …それより、この路地裏にはひったくり犯が潜んでいるんだ!
    早く君は出てー…!?」
    そう言いかけたとき、暗闇から手が現れ、少女の首に白いナイフが突きつけられた。
    「ひったくり犯~?そいつって俺のことかな~?」
    「…!!」
    そう鼻で笑いながら男が現れた。
    「…なーんだ。ってっきりポリ公が追いかけてくるのかと思いきや、
    クソガキ二人かよ。ガキはガキらしくお手手繋いで帰りな。
    …もっとも、騒いだら二人共殺すけどな。」
    「…彼女を離せ!」
    「はあ?離すわけねーだろうが。
    騒いだら殺すっつたろ。頭わりーなお前。」
    「……。あなた、私のことは良いから逃げなさい!
    こんなことで見ず知らずの他人を巻き込むなんてごめんだわ!」
    少女がそうリュウに叫ぶ。
    だがリュウは逃げようとしない。
    「…今更逃げるものか。
    もうすでに充分、君には巻き込まれてるから!」
    すると、男は急に高笑いをし始めた。
    「おやおや、ヒーローぶってんじゃねえよ。ガキのくせに。
    安心しろ、二人まとめて送ってやるからよ!!」
    その瞬間男は、少女の首にナイフを刺そうとする。だが―

    「…ぐっ!!?」
    刹那、どこからか銃声と共に銃弾が壁に跳弾して男の右足に当たった。
    よろめく男。落ちるナイフ。
    リュウの右手の真っ黒なリボルバーの銃からは真新しい煙が立ち上っていた。
    「あなた…その銃は……。」
    驚いて少女はリュウを見る。
    「言ったはずだ。彼女を離せと。」
    「くっ…ぐっ……クソがああああ!!」
    男はよろめきながらリュウに落ちたナイフを持って突っ込んできた。
    「……。少し寝てな。」
    リュウは小さく呟くと、ナイフをかわし顔面に蹴りを入れた。
    「ぐはあああっ!!!」
    壁に吹き飛ばされた男は、そのまま気絶した。

    「……ふう。驚かせてごめんね。」
    リュウは銃をホルダーに仕舞うと、少女に声をかけた。
    「い、いや…別に。
    そ、そんなことより!あなたなんでそんなもの持ってるの!?
    私なんてほっといて逃げればよかったのに…!」
    するとリュウは、帽子をとって少し笑いながらこう言った。

    「うーん。一応護身用、なんだけどねこれ。
    なぜだろう、君を見ると……放っておけなくなっちゃったんだよね。」
    「…馬鹿。あなたって馬鹿ね。
    …それと。私は「君」じゃないわ。『ルナ』っていう名前があるの。」
    「ルナ……か。
    僕は『リュウ』。」
    「リュウね。…ねえ、私気になってたんだけど。
    私と最初ぶつかったときに、誰かと間違えたような顔してなかった?」
    ルナにそう言われ、リュウはキョトンとするがすぐに答えた。
    「ああ―それはね。」
    リュウはルナに事の顛末を話した。
    「ふーん。そのお師匠さんも変なこと言うのね。
    そんなの迷信に決まってるでしょ。
    あなた、そんなことちゃんと調べもせずほいほい受けちゃったの?
    私がその『妹』なわけないじゃない。」
    「そう、だよなあ……。」
    「そんなことより、ほらっ」
    ルナは落ちていたバッグを拾った。
    「これ、持ち主のじゃない?
    早く届けに行きましょう。」
    リュウは頷いてバッグを持って元の場所に戻っていった。

    戻ると女性が何度もお礼を二人に言った。
    ひったくり犯は警察に逮捕され、無事に事件は解決した。
    …後は、本来なら蒼い月が出る夜を待つだけ、なんだけども。
    「ねえリュウ。」
    するとルナが声をかけてきた。
    「…?なに?」
    「…えっと、さっきは助けてくれてありがとう。
    さっき話してたこと、迷信だと思ってたけど……。
    実は私も興味が沸いてきたの。
    ねえ、一緒に行ってもいい?」
    「え、えっと……いいけど。」
    「じゃあ決まりね。この街の事は私がよく知ってるから。
    この後案内してあげるわ。」

    そう言われ、ルナに手を引かれてリュウは街の中に消えていく。
    彼女の手は温かった。
    そう、まるで。あの子のように―。




    3話へと続く。
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