砂漠に雨は降っても 寝顔を幸せな気分で眺めていると、ふるりと可愛らしい睫毛が震えてじわりと瞼に涙が滲んでいくのが見えた。そして横向きに寝ているブラッドの鼻筋にじわりと小さな小さな湖を作った後に、耐え切れずに反対の瞳へと流れていく。
同じように涙を滲ませていた瞼にだどりついて、大きな粒となって目尻に流れてシーツへと砂漠に振る雨の様に吸い込まれていった。僕の指がそれを掬い取る前に。僕はブラッドの涙に驚いて、そしてその美しさに目を奪われてしまう。時がゆっくりと流れて永遠にも感じるその瞬間は空を飛んでいる時にも似て僕をはっとさせた。
「……ブラッドリー」
ささやく様に静かに泣いている一番大事にしている存在の名前を呼ぶ。まるで起きて欲しくないという様に空気に溶けた声はきちんと彼の耳に届いたようで、夢の縁にいたブラッドリーは瞼を震わせて星を散らすように涙を振るい落としながら目をゆっくりと開けた。
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