カランコロンカラン―-
それは少し不思議な夢をだった。
鬱蒼とした木々の奥にあるレトロな硝子張りの扉。どうしてそこに辿り着いたのか、所詮は夢の話である。その辺の細かい設定はなかった。
カランコロンカラン―-
まるで当然のようにその扉を押す。頭の上の方で更に軽快な鐘の音が出迎えてくれて、オレは躊躇することなくその中に入っていった。
「おや」
どうやらそこは喫茶店のみたいだった。
「これは、これは」
カウンター越しに胡散臭い店主がミュージカル俳優みたいな大袈裟なジェスチャーをしている。
「これは意外なお客様だ。いらっしゃいませ」
まるでオレのことを知っているみたいな口ぶりの店主は口髭を一撫でしてから、にっこりと微笑んだ。
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