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    aoinishiki

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    aoinishiki

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    ぐだちゃんを迎えにいくジュナさんの話(ジュナぐだ♀)

     風が頬を撫でて目を覚ました。
     夕焼けに包まれた教室はどこかぼやけていて、まだ頭が寝てるんだな、と思った。
     「おはようございます」
     声が掛かる。聞き覚えがあるから誰かは分かる。声のした方向に視線を向けても人影はぼんやりとしたままだった。
     「アルジュナ、先輩。あれ、ここ2年の教室ですよね?」
     「えぇ、誰かさんがあまりにもゆっくり眠ってらっしゃるので、様子を伺いに」
     「そ……か。すみません、お手数を」
     当たっていた安堵感と、自分は教室の机を寝所にして安眠できるタイプだっただろうかという疑問と。
     「風紀委員は大変ですね」
     「おや、貴女もですか。私は風紀委員ではありませんよ、あれは源頼光どのの役目だ」
     ――そう言われると、そうだった気もする。凛とした声でご禁制、と風紀をただそうとする姿が頭の片隅を過って、違和感を覚える。うちの学校はセーラー服だったっけ?
     着ているはずの制服を確かめようとすれば、頭痛がして諦める。
     「体調が優れませんか?」
     「は……い。頭痛と、怠さと、まだ頭が眠っているみたい」
     「もう少し眠りましょうか。校舎を閉め出される前に起こしますよ」
     魅力的な申し出だ。なぜだかわからないけれど、わたしはとても疲れていて、動くのも嫌になっているような状態だ。
     けれど、起きて向かわなければいけない場所がある、だから意識は手放せない、そう確かに思うのだ。
     「義務感であるならなおさら、休めるときに休むのは悪いことではありません」
     「義務感であることは否定出来ないけど、意地でもあるんだ」
     「頑固ですね……」
     「アルジュナに言われたくない……」
     まだくらくらしている。けれど、目の前は少し見えるようになった。羨ましいくらいきれいな黒髪、夕陽を艶やかに反射する褐色の肌、その奥で光る黒い瞳は今は優しく、何かを考えているようだ。
     「ここでもう少し休んだところで、誰も文句は言いませんよ。急いだところで、やらねばならない ことが増えるだけだ」
     「あなたから出てくる言葉らしくない」
     あぁ、だからこそ分かる。分かってしまった。彼らしくない、けれど確かに彼の中にあるその考え。それを露わにしてもらえることはすごくうれしくて。だから断ってしまうのは勿体ないのだけど。
     「大丈夫、もう起きるよ。自分が何をしていたか思い出した。外傷はないね?」
     「えぇ、精神攻撃を受けたときの反動だとダヴィンチは言っていました」
     どちらの攻撃だろうか、アトランティスか、ブリテンか。もしくはその両方だろうか、ここ最近、揺らいでしまっているようだ。
     「バイタルに問題はありません、最初はサーヴァントの誰かの夢かと調査があり、呼び出された感覚はないかという調査があり、そうしているうちに貴女のことを考えていた私が此方に呼び出されるようにやってきた、という訳です」
     申し訳なさそうにアルジュナは夕焼けを眺めた。
     「迎えに来てくれたのがあなたで良かったよ。これ、わたしがカルデアに来る前最後に見た学校の景色でね」
     自分で行くと言っておきながら、少し怖くなって珍しくこんなに居残りをしたのだ。門限だってもしかすると超えてしまうかもしれない時間。でも、それなりに愛着のあった校舎に自分なりの別れを告げたかったのかもしれない、と今になって思う。
     「きれい、ですね」
     「うん、一緒に見られてよかった。だから」
     もう大丈夫だ。頭もすっきりして、この直後に戦闘だと言われてもなんとかなる予感がする。
     「やはり、らしくなかったでしょうか」
     意識を体に戻すため、アルジュナと手を繋ぐ。あとは彼の導きに応じて歩き出せば良い。のに、歩き出した途端、彼はぽそり、とそんな事を言う。
     「常に答えねばならぬ貴女だ、誰も見ていない此処であれば、そう頭を過りました」
     「ありがとう、あなたの気持ちはすごく嬉しい。でもね、だからこそ、というか」
     甘い誘惑は彼にとって卑怯なものだったのかもしれない。わたしだけでなく、彼にとっても居心地が良かったのかも知れない。けれど
     「旅が終わってないから。終わったらまた、約束しよう?」
     自分への誓いじみた願い。それをアルジュナは、ため息一つ、受け止めた。
     「必ず、ですよ。守れなければ地獄の果てであろうと追いかけますから」
     「守るよ、アルジュナ絶対逃がす気ないでしょ」
     「おや、貴女のサーヴァントなのですから、当然では?」
     軽口をたたきながら、足を前に進める。
     やがて景色は光に飲まれて、この意識がなくなるまで、しっかりと掴んだ手の感触を感じ取る。
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