(帰還本より後、ロモスで暮らしている二人の話)収穫祭と言やあ、その名の通り。老若男女関係なく畑に出回り、その年の豊作物をあちこちで収穫しては運び、収穫しては運び。
蟻と同じで、細々と列を成して人が動く様を、ただ城下の端の方で腕を組み眺めていた。
勇者サマはご立派な心得で他の民に混ざり、楽しそうに土を掘り返したり重たい木箱を軽々と持ち上げて運んでいく。
楽しそうに笑って他の人間と手を取り作業をする。実に素晴らしいことだ。
俺はというと、収穫といえば魔物が作物が荒らしにくる可能性を考慮して、中には混じらず分身たちとともに畑やらの近くを警戒していた。
警戒が過ぎたのか。
それとも、目の前に広がる風景が長閑過ぎて、逆に言えば気が緩んでいたのか。
ドンッ、と肩を叩かれるまで、人がそばに寄っていたことに気が付きもしなかった。
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