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    55Catwalk

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    55Catwalk

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    モブ女注意




    私の名前はメノコ。大都市ヤマトの左近衛大将・ミカヅチ様のお屋敷で働く下女の1人だ。普段は掃除や洗濯、お食事の準備などを手伝っているが、シチーリヤ様の命により只今御使いに出ている。朝早く又は夜遅くしか出歩かないため、明るい太陽のもとを歩くのはどこか新鮮な気持ちになる。特に今日は足取りが軽い。何せ御使い先はあの右近衛大将・オシュトル様のお屋敷なのだ。何も隠さないが、私はオシュトル様が大好きである。視認もされぬだろう距離からしかそのご尊顔を拝見したことはなかったが、皆が口を揃えて美丈夫と頬を染める。町で購入した絵姿も大変美しく、こんな方が現実に生きているのかと信じられぬ思いだ。いつかお会い出来たらと小さな夢を胸に努力を重ね、今の職まで辿り着いた。

    今その努力が報われるとき!

    「御免ください」

    緊張のため少し上ずった声が出たが、玄関先で声をかけると奥から家人らしき老人が出てきた。ミカヅチ様の御使いであることを手早く伝えて荷物を渡し、お返事を頂戴したい旨も伝える。家人は「しばし」と言葉を残して奥に消えていった。代わりに水桶を手にした下女が現れて玄関を上がるように促される。

    いよいよオシュトル様のお屋敷に上がる。

    ゴクリと唾を飲んだところで背後の玄関扉が勢いよく開いた。心臓が口から出なかったのは奇跡だろう。ギョッとして見やれば、ひょろりとした男が気だるげに立っていた。

    「あら、ハク様。いらっしゃいませ」
    「お邪魔する。オシュ…ヤツは今居るだろうか?」

    待て。オシュトル様を「ヤツ」呼ばわりだと?

    「ええ、おります。朝から今か今かと首を長くしてお待ちしていらっしゃいましたよ」

    オシュトル様が!?

    「どうせまた面倒な話だろう、イヤだなぁ」

    なんですって!?

    「おいおい、オシュトル様に対して面倒くせェは無いだろうよ。アンちゃんよぉ」

    見れば顎髭を生やした柄の悪そうな男がニヤニヤと笑っていた。裸足でドスドスと派手に歩く姿に思わず眉間が寄ってしまったのは仕方あるまい。信じられぬ話だが、この男はオシュトル様が正式に雇いいれている者の1人で、ミカヅチ邸でも見かけたことがある。美しいオシュトル様がこのような下品な男を使っているとは予想外で、最初に見かけたときは驚いたものである。

    「おっとそうだ。ネエちゃんがミカヅチ様の使いの方…で間違いねぇかい?」
    「はい」
    「これを届けてくんな、オシュトル様からの書簡だ」
    「確かにお預かりいたします」

    結局オシュトル様には会えず仕舞いだった。まあそう簡単にお会いできるはずがないかと落ち込む己を慰めながら、メノコは屋敷を後にしたのであった。


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    55Catwalk

    TIREDうたわれるもの
    オシュハク



    とある昼下がり。

    「………」

    ルルティエは1冊の書物を手にヤマトの大通りを歩いていた。
    事の発端は、贔屓にしている女性専門の書店からだった。アンジュに持ち帰られてしまった限定書籍を再び手に入れるため、大慌てて書店へ飛び込んだのである。しかし、さすが限定品というべきか…山と積まれていたはずの空間には完売御礼の札がちょこんと鎮座しているのみ。あまりの現実に、燃え尽き固まるルルティエに書店の店主は申し訳なさそうに声をかけてきた。

    『せっかく来てくれたのに品を切らしちまって悪かったね。代わりと言っちゃなんだが、コレをあげよう』

    ぺらりと冊子の表紙をめくってみる。1枚、2枚、そして最後まで。それは何も書かれていない真っ白でなんの変哲もない冊子だった。
    白楼閣に戻ってきたルルティエは早速寄合に使っている部屋に顔を出してみたが、あいにくと誰もいない。ソファに体を沈め、改めて白い冊子をめくってみた。そして、ふと目に止まった筆をとるとサラサラと青年の立ち姿を描いてみる。どことなくハクに似た、というかハクその人な絵を描いてしまったことに1人恥ずかしく頬を染めていると、

    「それはハクじゃな 2757

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