自虐でも何でもなく、天職だと思っていた。
目を開ければ蝋燭が揺れている。俺の個性。人の残された時間がよく見える。
「ここは危険です!」
外で何人かの年端もいかないヒーローが叫んでいる。いや、きっとあれは学生だろう。
「早く避難所へ!」
冗談じゃない。
助ける前に助かるかどうかが分かるんだ。こんなにも、消えそうな蝋燭をたくさん見る日々など想像したこともなかった。
俺は所詮、ただの人間だった。蝋燭にしか見えていないと思っていたその炎が次々と消えて行く現場がフラッシュバックする。もう保たない、そう思ったことは人生で数え切れないほどある。だから動揺もなかった。はずだった。あるいは、慣れたと思っていただけで、どこかでそれは蓄積されていただけなのかもしれない。
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