Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    @rikukuri1123

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💜 💛 💜 💛
    POIPOI 11

    @rikukuri1123

    ☆quiet follow

    司と過ごした大切な部屋から思い出のものがなくなり、悲しく思う類の話です。
    ギャグです。
    ワンライ 演目「室内」「さみしい」

    思い出は手放さない 部屋が、がらんとしている。
     あんなに温かった室内が、今では冷たく感じてしまう。さみしい、なんて、思わず呟いてしまうけれど、それを拾ってくれる人物は今はいない。
     二人でおそろいで買ったマグカップも、色々な思い出が詰まったアルバムも、全てここにはない。「天馬司人形だ!嬉しいだろう!」と言って、輝く笑顔でプレゼントしてくれたかわいらしい人形も、僕の手元にはもうなかった。
     司くんとの大切な思い出。それが、この部屋にはたくさん詰まっている。
     ベランダに出て、一緒に星を眺めた夜。僕が星ばかり見ていると、司くんは「隣に輝かしいスターがいるというのに、いつまで星を眺めているんだ!」とプンプン怒り出したことがあった。僕は、司くんがあまりにも煽情的(お風呂上がりでケアしたてだったからか、唇がいつも以上にぷるぷるしていて、今にもキスしたいと思うほどだった)だから、あまり司くんの方を見られなくて、星を眺めていたのだけれど。でも、拗ねたように唇をツンと出している司くんがかわいくて、結局キスしたのは、いい思い出だ。
     それに、あのキッチンでは、よく一緒に料理をした。僕が頑なに野菜を食べようとしないため、司くんは仕方ないとばかりにみじん切りにして、味が分からないようにしてくれていた。ああ、後、司くんのエプロン姿が煽情的(司くんの夏場の部屋着は短パンが多く、その上にエプロンをつけると、まるで裸エプロンのようになるのだ)で、料理中にお触りをしようとする僕に、司くんが怒るというのも、いつもの光景だった。
     こうして思い返してみると、なんだか僕はいつも怒られている気がする。けれど、僕も最近司くんに怒ったことがある。だって、司くんが、勝手にこの部屋の思い出をなかったことにしようとしたのだ。あまりの悲しさに僕が涙を流して取り消してほしいと頼んでも、「もう決めたことだ」と言って、司くんは取り合ってくれなかった。もっと早くに僕が気づいていれば、こんな最悪の事態は防げたのだろう。けれど、後悔してももう遅い。司くんの様子に気がつかなかった僕が、きっと悪いんだ。
     僕は、二人掛けのソファーが置いてあったところに座り込む。きっと、僕たち二人が一番一緒に過ごした場所だ。もう、そのソファーもないけれど。

    「おーい、類!」

     ああ、司くんの声が聞こえる。そう言えば、僕がソファーで寝落ちしてしまったとき、こうやって司くんが起こしてくれたなぁ。
     だなんて思い出にふけっていると、部屋の扉が開かれた。

    「なんでそんなところに座り込んでいるんだ!?」
    「色々思い出していてね……」
    「なぜ今なんだ!早く大家さんのところへ行って、退居手続きをしないといけないだろう!」

     司くんはまたプンプンと怒っている。けれど、僕の方が怒りの気持ちは大きいはずだ。

    「だって!司くんが勝手にこの部屋を手放そうとするから!」
    「なんだと!?引っ越すのだから、当たり前だろう!」
    「当たり前じゃないよ!この部屋には、僕たち二人の思い出がたくさん詰まっているんだよ!?引っ越すとしても、僕はこの部屋も借り続けたい!」
    「いや、なんで二つも部屋を借りる必要があるんだ!?」

     司くんは、全く訳が分からないと言った表情でこちらを見てくる。いや、訳が分からないのは、僕の方だ。司くんとの大切な思い出を手放すだなんて、僕にはできないというのに。
     
    「ほら、そんなことを言っていないで、早く大家さんのところへ行くぞ!」

     そう言って司くんは僕の腕を掴んでくる。けれど、僕は抵抗するために、体育座りをして顔を埋めた。大家さんと退居手続きなんてしたら、それこそこの部屋から出ていかなくてはならなくなる。断固拒否だ。
     
    「はぁ……。類、顔を上げろ」
    「嫌だよ」

     僕はさらに顔を埋めて、抵抗の意志を見せる。すると、司くんは僕の顔を掴んで、無理やり顔を上げさせた。今、僕の首からぐぎっという音が聞こえた気がする。
     僕が恐る恐る首をさすっていると、司くんが真剣な顔で僕と目を合わせてきた。

    「類!オレを見ろ!」

     司くんにこう言われて、見ないわけにはいかない。そう思って司くんと目を合わせる。すると、司くんは嬉しそうに微笑んだ。

    「類。お前は、思い出の中のオレが大切なのか?いや、違うはずだ。類は、オレがいれば、それだけで十分だろう?」

     そう言う司くんは、あの日一緒に見た星空よりも、キラキラと輝いていた。
     ドクン、と、僕の心臓が音を立てる。
     ああ、大好きだ。

    「もちろんだよ!司くんがいれば、それだけで僕は幸せだよ」
    「そうだろう、そうだろう!」
    「フフフ、司くん、大好きだよ」
    「ああ、オレもだ!」

     司くんがニッコリと笑った。僕も、司くんが愛しくて、抱きしめようとする。

    「さて、それでは、さっさと退去手続きをするぞ!」
    「えっ」

     けれど、抱きしめようとした腕は、空を掴んだ。司くんはさっと立ち上がって、大家さんに電話をかけている。あまりの切り替えの早さに、僕はついていけない。だって、さっきまで甘い雰囲気だったはずだ。だというのに、司くんはもう退去手続きを進めている。
    もしかして、さっきのあの話は、早く手続きを済ませたくて、したのだろうか。
     僕はさみしくなって、ポケットに忍ばせていた司くん人形(司くんからプレゼントされた天馬司人形ではなく、自作のものだ)を撫でた。
     そして、人形に誓う。新居についたら、思う存分司くんに甘えるのだと。司くんがそんな態度をとるのなら、僕も好きにさせてもらうのだと。

     後日、司くんが解約したあの部屋は、ある人物によってすぐに契約されたことを、司くんはまだ知らない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖💖💖☺💖☺🙏🙏❤💖💖❤☺💕☺💖💖💖💖💕💞👏🇱😍💖☺👏💖💖💖☺☺💞💞💖☺💕💕💕💒💘🙏💜💛👍👍👏👏💒🙏
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works