軍雛 遠くの方から、楽し気な音楽が聞こえてくる。けれど、類はそちらの方を見ず、じっと海を見つめていた。
「はあ、つまらないな」
海から視線を逸らし、今度は空を見上げた。星々が輝いているが、手を伸ばしても届きそうにない。欲しいものは手に入らないのだと言われているようで、そっと地面に視線を降ろした。
本当は、今頃、ショーをしているはずだった。会場にいる人たちをあっと驚かせ、そして笑顔にするのだと、そう決めていた。けれど――
「僕のショーは、危険すぎる、か……」
ショーの準備をしていると、周りの大人たちが一斉に止めてきた。いくら危険はないのだと説明しても、幼い子どもにはさせられないのだと聞く耳も持ってもらえない。だから、類は諦めて、こうして会場の外でぼんやりと景色を眺めることにしたのだ。
6779