Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    @rikukuri1123

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💜 💛 💜 💛
    POIPOI 11

    @rikukuri1123

    ☆quiet follow

    恥ずかしくて類とイチャイチャできない司が頑張る話です。類は司が触れてくれなくていじけています。
    ワンライ演目「倦怠期」

    ピーマンは類と一緒にいただきました「ねえ、司くん。僕たちは、倦怠期というものに入っているのかもしれない……」
    「なんだと?」
     類の発言に、オレは一度身体を止めた。倦怠期というと、付き合いたての頃のようにラブラブではない時期のことを差すだろう。つまり、オレたちの関係が冷めていると類は言いたいのか?
     オレはびっくりして類の方を振り返ろうとしたが、それはできなかった。なぜなら、オレのお腹には類の腕が回され、ガッシリと後ろから抱きかかえられていたからだ。
    「こんなに密着しているのに、倦怠期だというのか……?」
     全く信じられなくて、オレの頭にハテナが飛び交う。そもそも、この体勢だって類が無理やりしてきた。オレはもう寝たいと言っているのに、もう少しくっつきたいとか言って抱きしめてくるのだ。これで倦怠期だとかいうのならば、世の中のカップルはほとんど当てはまるのでは?
    「だって、司くん、最近冷たくないかい?」
     類が拗ねたように言ってくる。冷たい、そう言われても心当たりがなくて、首を傾げる。すると、いじけたように類がギュッと抱きしめてきた。苦しいんだが……。オレはもぞもぞと抜け出そうとするが、類の腕はビクともしない。類の言い分を聞いてやらないと、解放されないのだろう。仕方がなく、オレは話の続きを促した。
    「どこが冷たいんだ?」
    「付き合いたての頃は、おはようも、いただきますも、ごちそうさまも、さよならもキスしていたのに、今では全くしてくれないじゃないか」
    「いや、それは、お前が恋人なら当たり前にしていると嘘をついたからだろう!」
     そう、付き合いたての頃、オレたちは挨拶をする度にキスをしていた。もちろん人目がつくところでは断っていたが、恋人なら当たり前だよと類に言いくるめられて、挨拶の度にしていたのだ。しかし、あまりの回数の多さに不思議に思ったオレは、恥を忍んで寧々に聞いてみた。恋人というのは、挨拶の度にキスをするものなのかと。その時の寧々の返答は、今でも鮮明に覚えている。噓でしょ……と、信じられないとばかりにそう言われ、距離を一瞬で取られた。その時の恥ずかしさと言ったら、類と1週間は口を利かないくらいのものだった。
    「嘘をついたのは悪かったけれど……。僕は、もっともっとたくさん司くんと触れ合いたいんだよ……」
    「いや、今の状態は十分触れ合っているとは言わないのか?」
     何せ、類はほとんどオレに乗っかかっているかのように後ろから抱き着いているのだ。隙間なんて全くない。これ以上触れ合うことが、可能なのか?
    「違うんだよ。司くんからも触れてほしいんだ。これじゃあ、僕が司くんに触れているだけだ。僕は、触れ合いたいんだよ……」
    「うっ……」
     そう言われると、オレは言葉に詰まってしまった。確かに、類と比べると、オレが類に触れることは少ない。オレが類に寄り添ったり、抱き着いたりすると、それはもう嬉しそうにする。口元は緩み、黄色い瞳を輝かせてこちらをじっと見つめてくる。そうして、我慢できないとばかりに類から顔を寄せてくるのだが、その時の類の目が、オレが愛おしくて堪らないと伝えてくるのだ。そのあまりの熱量に、オレの身体は沸騰したかのように熱くなってしまい、思わず離れてしまう。類がその度にしょんぼりとしているのは分かっているのだが、それでもオレは、そんな雰囲気になるたびに逃げの一手を打ってしまっている。
    「うっ、うっ……。司くんは、もう僕に飽きてしまったんだね……」
    「だ、誰も、そんなことは言っていないだろう!」
     オレが飽きたのだと、類が本気で思っているわけではないことは分かっている。オレが恥ずかしがっているだけなのだと、類も分かっているはずだ。しかし、もっと触れ合いたいというのは本心なのだろう。このままでは、類を不安にさせ続けてしまう。せっかく想いを通じ合わせて恋人になったのに、悲しい思いをさせてしまうのは本望ではない。だが、あの蕩けそうな瞳に写ると、まるでオレが溶けてしまいそうで、逃げたくなってしまう……。
     どうしたらいいのか。そう悩んでいると、オレの手が冷たいものに包まれた。オレよりも体温の低い、類の手だ。慰めてくれるのかと思って、類の手を握り返す。そうして類の方を見上げると、何とも悲しそうな顔をしていた。
    「僕はもっと、司くんと触れ合いたいな……。でも、司くんには無理だよね……」
    「な、無理だと!?」
    「だって、司くんから触れてくれたことなんて、ほとんどないじゃないか……」
    「いや、少しくらいはある……ぞ」
    「うう、少し……」
     類はしょんぼり、と言った様子で項垂れている。しかし、目は真っすぐにこちらに向けられており、瞳に水の膜がうっすらと張ってあるのがよく見えた。う、捨てられた子犬のような目をしている……。
    「ま、待て!少し時間をくれれば、類が満足するまで触れ合えるようにするから!」
     そんな類を放っておけるはずもなく、思わずそう言ってしまった。だがまあ、恋人を満足させられないようでは、スター失格だろう。宣言したのなら、しっかりと頑張らなければな。そう決意を込めて類の方を見ると、類の目がキラッと光ったような気がした。それに、やけにニヤニヤとしている。まさか、さっきまでのは演技じゃないだろうな。
    「ふふ、楽しみにしているよ、司くん!」
     しかし、嬉しそうにしている類を見ると、それを指摘する気は失せてしまった。よし、この天馬司、恋人のために全力全開頑張ろうではないか!オレはカッコいいポーズを決めながら気合を入れた。

    □□□

     オレは今、類のガレージの前にいる。あれから1週間が経過した。あの後、咲希やネットの力を借りて、オレは類と触れ合うための技を身に着けてきた。完璧である。
    「類!たのもう!」
    「え、なんだいその挨拶は」
     さて、オレが仕入れた情報は、こうだ。恋人と触れ合うことが恥ずかしいのならば、まずは甘えてみることから始めるといいらしい。そして、甘えるためには、弱みを見せるといいらしいのだ。完璧なオレに弱みなんてあるのかと思案したが、咲希に指摘され、一つ見つけた。今日は、それを披露するための物も持ってきている。オレは鞄に手を入れ、勢いよく類に突き付けた。
    「これを見てくれ!」
     どーん!と緑色の物体を見せる。そう、オレの弱みである、ピーマンだ。どうだ、類!これが、オレの弱みだ!しかし、類はズザザザザッと後ろに下がっていった。
    「な、なんて物を見せるんだい!」
     驚くほどに顔が真っ青だ。そう言えば、ピーマンは野菜だったな。ということは、類も苦手なのだろう。しまった、と急いで鞄の中に片づける。
    そうか。類はピーマンが苦手なのか。……類と一緒か。
    「なんでニヤニヤしてるんだい!?何かの仕返しかな!?」
    「いや、何でもない。もう片付けたぞ」
     ピーマンは後で頑張って食べるとして、なんとかここから挽回しなければいけない。ここからは自身の恥ずかしさとの戦いだが、ここで負けるわけにはいかない。類のためにも、頑張らなければ。
    「類!ソファーに座ってくれ!」
    「今度は一体何が始まるんだい……?」
    「いいから、座れ!」
     渋々、と言った様子で類が座る。しかし、真ん中に座ってしまったため、オレが座るスペースがない。
    「左側に寄ってくれ」
    「ええ、いいけれど……」
     類がお尻一つ分左に寄った。よし、これでオレのスペースができたぞ。ストン、と類の横に座る。さて、まずは、肩を寄せてみよう。
    「つ、つ、つかさくん!?」
    「じっとしていてくれ」
     オレは肩をくっつけたいのに、類がザッとソファーの端に行ってしまったため、くっつけられなくなってしまった。類から触れ合いたいと言い出したのに、いざオレがしようとすると、避けるとはどういうことだ。仕方がないので、オレが類のほうへ寄って座り、肩をくっつける。類の体温がこちらに伝わってきて、ほくほくとする。なんだ、やってみると案外楽しいものだな。こうやって類とくっつくのも幸せだし。本当は、今日は肩を触れ合うだけにする予定だったが、調子に乗ったオレは、類の上に座ってみることにした。オレが逃げ出したくなるのは、類の目を見たときなので、見ないようにすればいいだけの話だ。
    「類、じっとしていてくれ」
    「え、なに、なに!?」
     類の太ももに手を添える。ビクッと動いたため、じっとするように言うと、類は無茶な!と言っていたが、無視してそのまま太ももに乗り上げた。必然的に距離が近くなるため、類と目が合わないように、片手で類の目を覆う。と同時に、もう片方の手で、類の両手を抑え込んだ。類に手を退けられたら大変だからな。そうして、無事に類の上に座ることができた。よし、完璧だ。完璧すぎるぞ、オレ!
    「ハーハッハッハッ!オレだって、自分から類に触れることはできるのだ!」
     嬉しさのあまり、オレはいつものカッコいいポーズを取る。気分は最高だ!
    「うんうん、さすが司くんだね!」
     そう類の声が聞こえた。類も喜んでくれているのか!そう思って、オレは下を向く。そうしてやっと、オレはとんでもないことをしてしまったのだと気がついた。オレは、カッコいいポーズをするために、両手を離してしまっていたのだ。
    類と目が合ってしまう。黄色い綺麗な瞳に、どんどんと熱が籠っていく。
     ド、と体温が上がる。しまった、これはだめだ!心臓に悪い!一旦立て直さなければ!そう思ったオレは、急いで降りようとする。
    「駄目だよ、司くん」
    「なっ!」
     しかし、いつの間にか類の腕が腰に回り、身動きが取れなくなっていた。オレがそれでも逃げようとすると、ますます類の方に寄せられてしまい、距離が近づいてしまう。
    「ま、待て!一旦降ろしてくれ!休憩だ!」
    「嫌だよ、そんなの。せっかく司くんから乗って来てくれたのに」
     そう言って、類はますます距離を詰めてくる。どうにか藻掻いていると、首筋が温かくなった。
    「大好きだよ、司くん」
     耳元で、囁かれる。心臓がありえないくらいうるさい。このままでは、死んでしまうのではないだろうか。貴重な未来のスターの死因が、ドキドキしすぎて死んでしまっただなんて、カッコ悪すぎるぞ!
    「類!類!ドキドキしすぎて死んでしまいそうだ!」
    「フフ、僕もドキドキしっぱなしだよ」
     類はニコニコとしながらも、全く離そうとしない。それどころか、どんどん力が強くなってくる。くそ、なんとかして、逃げなければ!と、ここで、オレはポケットに入れたままの例の物があることを思い出した。これしかない。オレの心臓を救い出す方法は、これだけだ!
    「類!これを見ろ!」
    「え、なんだい?」
     ニコニコとしながら顔を上げた類に、鞄から取り出したピーマンを見せる。すると、トロトロと嬉しそうにしていた目が、見開かれて、そして……
    「ッ!」
     類の手がオレから離れる。その隙に、オレは急いで類から降りた。
    「あ、ちょっと、司くん!」
    「きょ、今日はここまでにしておいてやる!さらばだ!」
    「え、寸止め!?寸止めかい!?」
     類の必死の叫びが聞こえてくるが、オレは一目散に部屋を出ようとした。しかし、オレはドテッとすっころんだ。絨毯の上だから痛くはないが、何故転んだんだ。そう思って振り返ると、類がマジックハンドのようなものでオレの足を掴んでいた。
    「司くん」
     オレは必死で逃げようとする。まずい、あの目はまずい。
    「ここまでされて、逃がすわけがないよね、司くん」
     ギラギラと光る類の目に、オレは全てを諦めた。ああ、持ってくれ、オレの心臓。
     類にソファーまで連れていかれながら、オレはそう願うしかなかった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💖☺💖💖❤👏💒❤💜💛💖😍💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works