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    書く書くっつってマジで申し訳ないんだけど本当にこう…どう持ってけばいいのかわかんなくなっちゃった 一旦置いとかせてください

    電気店のおじさんとコマ坊その商店街には、「コマ坊」と呼ばれているロボットがいる。
    コマ坊は山吹色の塗装がされている、まあるい目をした男の子だ。お正月に回すおもちゃのコマみたいな飾りが頭に乗っているので、それでコマ坊と呼ばれている。

    コマ坊はある台風一過の朝、商店街の端っこの、白樺電気店のシャッターの前でエネルギー切れで倒れていた。
    その時のコマ坊は、まだ名無しのロボットだった。電気店のハルヤおじさんは、名無しのロボットが自分の自慢のお店に向かって助けを求めてきたことに気分を良くして、重たいそれを奥さんのナツコおばさんとふたりでうんうん言いながら運び込み、名無しのロボットが壊れていないかハッチを開けて調べようとした。
    幸いにもそのロボットの中に雨水や泥が浸み込んだりはしていなかったし、どこもなんにもぶつけていなくて大きな修理は必要なかったが、ハルヤおじさんはむむっと唸って黙り込んでしまった。
    名無しのロボットの体の中に詰まっていたのは、田舎町の商店街ではお目にかかる機会もないような、見るからにお高そうななにかの機械。後でコマ坊に直接聞いて、それがいわゆる「オートバランサー」とか呼ばれているものだとわかったが、少なくともその時のハルヤおじさんにはそれがなんなのかわからなかった。

    どうやらこれはなにかワケありのロボットらしいぞ。

    そう思った電気店の夫婦は、ひとまずそのロボットを作業台に寝かせ、充電のためにいくつかのコードを繋いだり問屋にE缶のお取り寄せを頼んだりした。ともかく一度起こしてやって、話を聞いてみなければ。


    「……あれ、ここは」
    「あら。おとうさーん、ロボットちゃんが起きましたよー!」
    「おーおー、待っとれ。うん、ああよかった、ちゃんと充電できたなあ。どこか痛いところとかないかい」
    「え、ええと、無いけど……あんたたち誰?」

    ゆっくり起き上がってきょろきょろあたりを見回しているそのロボットに、ハルヤおじさんはさっき受け取ってきたばかりのE缶を一つ渡してあげた。ロボットは一言「ありがとう」と戸惑いがちの口調で言って、缶の中身を飲み干した。どうやらよっぽどお腹が空いていたらしい。

    「うん、いい飲みっぷりだ。飯も食ってくか」
    「いやおれは食品接種に対応してないから……じゃなくって!」

    山吹色のそのロボットは、声変わりが終わったばかりの子供のような声で慌てた。

    「えっと、まず助けてくれてありがとう、ございます。おれは……ええい言っちまえ。その、タップマン、っていう名前です。……聞いたこと、ある?」
    「おお、ご丁寧にどうも。ふーむ、タッ、ク? プ? プか。……どうだっけなあ、母さん」
    「うーん、ごめんなさいねえ、ちょっとわかんないわ。あたしたちこんな田舎に住んでるもんで、都会のはやりはわからんのだわ」

    タップマンと名乗ったそのロボットは、電気店の夫婦が首を傾げているのを見ながら、どうしてかホッとしたような顔になった。

    「そっか。いや、知らないんだったらそれでいいんだよ。うん、あんたたち恩人だからちゃんと名乗んなきゃって思って……」
    「恩人? いやあ、大したことはしとらんよ。俺たちゃ拾って寝かせただけだ」
    「それでも助かったよ。E缶まで……お礼したいけど、おれなんにも持ってないや」

    困ったような顔をしているタップマンに、ハルヤおじさんは首を横に振った。お礼を貰いたくて助けたわけではないし、見知らぬロボットだろうが元気になったのだったらそれは嬉しいことだからだ。
    それより気になることがある。どうやらすごい技術で造られたらしいロボットが、どうしてエネルギー切れを起こして倒れたりなんかしていたのか、だ。ハルヤおじさんはその辺にあった丸椅子を引っ張って来て、作業台の近くに置いて座った。簡単に夫婦で自己紹介をした後に、それで、と話しかけてみる。

    「コマ坊はどっから来たんだい。あんな雨の日に散歩だなんてわけないだろうし、旅でもしてきたんじゃないのかね」
    「こっ……コマ坊!?」

    タップマンが上げた素っ頓狂な声に、ハルヤおじさんはちょっと驚いた。ナツコおばさんはウフフと笑いながら、タップマンの肩に細い手を置く。

    「やだ、ごめんねえ。うちの人、勝手にあだ名付けるのが好きなのよ。多分、頭の飾りがコマに見えるから『コマ坊』なんだと思うわあ」
    「おう。たっぷ、っつうより呼びやすいだろうが。俺ぁ横文字は苦手でよ」
    「コマ坊って……」
    「どうだい。お前さん、なんだか訳ありっぽいからな。名乗るのだってつっかえてたろ、コマ坊って呼ぶんでいいか?」
    「もう、お父さんってば」

    コマ坊と呼ばれたタップマンは、ちょっとの間ぽかんとしてから、いいよコマ坊で、と頷いた。
    ほっぺが少し赤かった。


    コマ坊はハルヤおじさんの見立て通りにちょっと訳ありのロボットで、自分がどこから来たのかは絶対に言えないし、自分を作った人が誰かも言えないんだとうつむいて言った。働いていたところであんまりうまくいかなくて、仲良しの子や弟みたいな子、お世話になった人たちもいたのに全部置いてきてしまったんだ、と悲しそうな声で話してくれた。コマ坊の排熱用ファンがシュルシュルと回る音の間に、ハルヤおじさんの相槌が静かに響いていた。

    「おれ、もうあそこに帰るの嫌なんだ。でも行きたいところもなかったし、やりたいこともなかったんだ。……あー、多分泣きたい感じの気持ちなんだけどな。おれの顔、涙を出す機能がついてない……」
    「そうかあ、うん、つらかったなあ」
    「……つらかったんだなあ、おれ」

    空っぽになったE缶が、ぺこんとへこむ音がしていた。


    「ねえコマちゃん。コマちゃんさえよければなんだけどね、うちでお手伝いしてみない?」
    「へっ?」
    「おおそりゃいいな。袖すり合うも、っつうしな、うん。コマ坊、行くとこ無いんだったらよ、うちで働いていかねえか」
    「え、え、そんな、おれ別に」
    「カケルの部屋も空いてるわけだしねえ。ベッドじゃなくてお布団で悪いけど、でもお部屋探さなくってもいいわよ」

    トントンと話が進んでいく。田舎町の電気店の夫婦は、この少年風のロボットに対してとっても優しい気持ちになったのだ。
    つまり、行くところが無いんだったらここに住んじゃえばいいじゃない。

    「まあ、コマ坊さえいいんだったらの話だよ。俺らにゃ追い出す理由なんかねぇんだ」
    「人手も欲しかったとこだしねえ。むしろ、いてくれたら助かるってくらいなのよお」
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