可愛い蝶々2「そっか。三郎は偉いなぁ」
兄貴の声がデレデレしてる。顔も、溶けそうなくらい目尻が下がってて、すげー甘い表情だ。推しキャラの等身大フィギュアを一緒に見に行った時よりデレてる。よくうちに家事の依頼をしてくれるお客さんの家で生後2ヶ月の子猫を見せてもらった時の顔に似てるけど、それよりもデレ度は数ランク上だ。
三郎が俺と兄貴の間に座る。首を傾けて、兄貴を見る。それから「三郎、偉い?」って確かめるみたいに繰り返した。兄貴が「ああ」ってすぐに頷くと、「じゃあね、じゃあね」って言ってから、少し黙る。その後で、言った。
「いい子いい子して?」
そのおねだりを聞いた瞬間、兄貴の表情からデレが消えた。デレだけじゃなく、他の感情も全部消えた。急に真顔になった兄貴が、三郎に手を伸ばす。頭を撫でられた三郎が「えへへ」って笑う。
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