ラブコメ。.
何故そんな雰囲気になったのか、今でも分からない。
窓から見える茜色の空。教室に入り込む夕陽の光。どこか遠くで聞こえる生徒たちのざわめき。
目の前には自分と同じ色の透き通った瞳がある。金とオリーブの虹彩と、それを縁取るターコイズブルーの睫毛。通った鼻筋と、赤く色付いた薄い唇。少しだけ自分と違うのは、僅かに釣り上がった目尻だ。殆どのパーツは自分と酷似しているが、やはり多少の差異はある。
それは鏡で見る自分の顔よりも、よっぽど見慣れた顔だった。その見慣れた顔が直ぐ鼻先にある。吐息が触れるほど、体温を感じるほど、近くに。
フロイドは口を開こうとする。何かを──ひょっとしたら片割れの名前を、いつものように呼ぶ為に。
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