それってどういう意味ですか?/まおあん 鼻の頭を何かが掠めて思わず空を見上げていた。小さく「あ、」と零すと重なるように隣からも「あっ」と声が上がる。どちらからともなく顔を見合わせて、あんずが「雨」と呟いた。ぽつり、と今度は頬に当たる。あんずの言葉が合図になったみたいにぱらぱらと雨が降り出した。
今日の天気予報は朝からずっと曇り。鞄に折りたたみ傘を入れた記憶はない。すぐにやむような雨だろうか、それともどこかカフェにでも──考えながら隣を見ると、決意を固めたような丸い瞳がこっちを見ていた。
「真緒くん、走れる?」
「え」
あんずが目配せするように瞬きをした。そのまつげにも雨粒がぽたりと触れる。
「はし、る、走れます」
何よりも彼女に風邪を引かせたくなくて、とりあえずそれだけ答えると、あんずは真面目な顔のまま一度頷いた。それから「もうすぐわたしんち!」と、だっと駆け出す。
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