「凄いじゃないか!連覇の快挙だよ!」
「い、いやそれほどでも、先輩の指導があってこその優勝です・・・」
「謙虚なんだな、君は。そのハングリー精神とガッツさえあればもっと上まで行けるぞ!」
先輩からお褒めの言葉を頂戴した。・・・とはいえ、僕の頭は家ことで一杯だった。この勢いで勝ち抜いていこうという高揚感で満ちているのに、なぜか頭には、麻里の顔が浮かんでしまう。こんな大事な時期なのに、ちゃんとコミュニケーションがとれていない。僕が忙しいせいで家事を任せてしまっているから、疲れているはずだ。・・・早く家に帰って、麻里をいたわってあげたいものだ。
「あ、そうそう」
先輩がスマホを取り出して、画面を見せる。そこにはショートタイツ姿の男性がリングで拳を上げている画像だった。顔は三十代後半くらいだろうか、渋い笑みを見せている。
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