人間不信夜更けから降っていた雨は、寝ている間に相当酷くなったらしい。一際大きい落雷の音で目が覚めた。体を起こすと、さっきまで温まっていた背中を、冷えた空気が撫でていく。
寝直す前に水を飲もうと思ったのは、本当に何となくだった。だからリビングで佇むミスタを見付けたのは、ただの幸運だったのだろう。彼は雨の打ち付ける窓の前で、雷が鳴るのを待つように、じっと外を見つめていた。雨の音が好きだと言っていたが、明かりも付けず窓に貼り付いている様は、少し不気味でもあった。柄にもなく『それ』らしい。動かない背中を何となく見つめていると、ミスタは頭だけ振り向いて、肩越しに俺を見る。
「……起きたんだ」
「ああ、すぐ寝直すがな」
ミスタは一言、「そっか」とだけ呟いた。そしてあっさり窓を離れて、俺の横を通りすぎる。
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