Stigma 黒く淀んだ決意を胸に、セバスチャンは愛車のアクセルを捻った。エンジン音が低く唸り、静かな山々に木霊していく。普段よりも激しくそれを轟かせ、ズズシティへの長い道を下る。吐き出す排気で、澄んだ山の空気を黒く汚しながら。
◯
「セバスチャン、ライナスのテントを倒したのはお前だろう」
「は? ……知らないよ」
ディメトリウスから、家の裏手にある流浪人の住まいを倒したと、謂れもない罪で誹られたことがきっかけだった。
実際、何度か石を投げ込んだことはあった。それだって元はといえば、今回みたいに抱える必要もないストレスをディメトリウスから負わされているせいだった。
だが今回ばかりは完全に濡れ衣だ。昨晩は風が強かったし、恐らくその時に柱が傾いたか何かしたのではないだろうか。
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