命と引き換えになぁ入間。もしお前の命と引き換えにヤクが全部消えるとしたら、お前はどうする?
上に呼び出され何事かと行ってみればそんなことを言われた。
その上司は後暗い噂もなく、所謂真っ当な警察官だった。
アイツの姿とたまに重なるから俺はあまり得意じゃなかったが。
「…質問の意図が見えませんね。」
「中王区からの申し出だ。最近きな臭いヤクが出回ってるのはお前も知ってるな?」
当然だ。そのおかげで業務時間外も捜査しているのだから。
「その元締めに中王区の幹部が関わっているらしい。」
「…。」
正直、だろうな。と思った。
あまりにも情報が制限されていた。全く掴めないという訳ではなく、掴んでも問題ない情報だけに制限されているように感じたのは間違いではなかったらしい。
そして、そんなことが出来るのは財力的にも経済的にもこの国では中王区くらいだろう。
そして中王区はヤクをキツく取り締まらない。
「それで、私がなんですって?」
「入間を中王区直属の部下にすれば、そのヤク及びほかのヤクの捜査に協力すると言っていた。」
それはそれは。大変動きやすくなりそうだ。
中王区ほど大きな機関ならば情報操作はもちろん、取り締まりやガサ入れもしやすくなるだろう。
「それで?中王区に行くことがどうして命と引き換えにって話になるんです?」
「…向こうに行けば、警察官の仕事よりも女の、その、ご機嫌取りみたいな事が多くなると思う」
「…あぁ。」
つまりは性欲処理。
お上からすれば生意気な若造を辱めるだけで随分とストレス発散になるだろうよ。
プライドの高いやつを組み伏せて乗っかって煽る快感は俺もよく知ってる。
だとしても命という言い方はやはり引っかかる。
「身体ならいくらでも差し上げますよ。」
「一生中王区から出られなくなってもか。」
「…そういうことですか。」
「今回お前のご指名は勘解由小路無花果だ。中王区どころか、一室からすら出られる保証はしてやれない。」
「私の身の安否よりも、ヤクが消える保証が欲しいですねぇ」
俺の身体1つでヤクが消えてくれるなら
俺は―…