まどろみに添う 何がそんなに良いのだろう。いつだって爆豪はそう思う。
ソファに腰掛けた膝の上に、丸みを帯びた頭がひとつ。遠慮もなにもなく転がり込むそれを、黙って受け入れられるようになったのはいったいいつからだっただろうか。
学生時代にはこんなこと考えられなかった、なんて、遠い昔を思い出しては苦笑にも近い息を吐く。ここが己の指定席だと言わんばかりに爆豪の膝に頭を預けるこの男と、ともに過ごすようになり、気づけば五年目を迎えていた。
見下ろした先、映るのは男の顔の左半分。
ふにゃりと溶け切った口許に、無防備に閉じられた薄い目蓋。深い呼吸に合わせるように、髪と揃いの色をした、睫毛がふるりと揺れている。
指先を伸ばす。目蓋の際を、そっとひと撫で。少し歪な、触れた皮膚の感触も、もうすっかりと覚えてしまった。
2262