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    レニ/右爆/轟爆
    眠れぬ夜の小さな図書館

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    轟爆/DomSubユニバース/リーマンパロ

    #轟爆
    bombardment

    ジンクス 風が、強い。

    ゴウゴウ、ゴウゴウと耳元を容赦なく打つせいで何も聞こえずまるで世界から隔絶されてしまったかのようで、

    だからだろう。突然向かってきたソレに反応が遅れ『爆豪くん、キャッチ!』と叫ばれ思わず手を伸ばしてしまったのは。すかさず女子に取り囲まれ、狡い、羨ましいと連呼されるがこちとら全くの不本意だ。こういう煩わしいことに巻き込まれないようにわざと離れた所に避難していたのに、何で、どうして、

    強い風に煽られて軌道を大幅に変え、俺の後頭部目掛けて襲撃してきたそれは小さな薔薇の花束、

    『ブーケトスを受け取った人は次に幸せな結婚するのよ!』

    何で、こんなことに。

    +++

    結婚式の二次会に呼ばれて参加してみたものの、何処に座って何を喋ったらいいのかさっぱり解らない。出来れば早く帰りたいが、会社の先輩の結婚とあっては早々に帰るのは不味そうだ。何より困るのは女性に言い寄られることで、『轟さんは結婚願望ありますか?』あると言ってもないと言っても面倒なことになる質問をしてくる女子社員が入れ替わり立ち替わり隣にやってくる。しなだれかかられそうになる度にトイレに立つことで回避して、

    そうして何度目かのトイレから戻ると自分が座っていたテーブルは埋まっており、仕方なく空いている場所を探すと覚えのある白いのを見つけ、自然と足が向いた。ムードを上げるためだろう、変に明度が落とされた薄暗いこの空間の中で発光しているような白いそれの正体は、

    淡い色の金髪と真白な肌の持ち主、隣のフロアの爆豪勝己。

    いつも鋭い視線を纏い話しかけ難い雰囲気を醸し出している青年は、今は何だか具合が悪そうに見える。一見すると酒に酔った上司の女性に絡まれているだけ、だが。普段から誰にも媚びることなく強い言葉で他者を跳ね除けて歩いているような強気な爆豪が、上司といえど押され気味になることはまずないだろうに、今、爆豪はシートに力無く沈み込み、項垂れ、辛うじて座っているといった風体だ。

    『さあ、飲んで』

    酒を強要するのは立派なパワハラだが、それだけではなさそうだ。グラスを握る爆豪の両手は震えている、その震えが手を動かすまいと抵抗していることに気が付いた瞬間、俺は2人の間に割り込んだ。

    『爆豪、借ります』

    そのまま腕を掴み、腰に手を回して立たせてトイレの個室に引き摺り込む。顎に手を掛けて顔を覗き込むと、蕩けた紅い瞳は彷徨い俺を認識していない様子、

    間違いない、これはサブドロップだ。先程の女性の上司はおそらくDomで、爆豪に望まぬプレイを強要していたのだろう。Subは望まぬプレイを強いられるとサブドロップを起こし、重篤な場合は死に至ることもあるという。その白い頬を手の甲で軽く叩きながらなるべく穏やかな声で話しかける。

    『爆豪、お前、Subだったんだな。俺はDomだ、今からお前を助ける為に簡単なプレイをするから従ってくれ』

    見ず知らず、とまではいかないけれど、ろくに話したこともない俺の言葉がサブドロップした状態の爆豪に届くだろうか?これでダメなら救急車を呼ぶとして、出来ればSubであることが周囲に知られない様に助けてやりたい。腕を解けば崩れ落ちてしまうであろう爆豪を抱き締めた状態で出せるコマンドといったら顔を見せろとか視線を合わせろとか。あとは舐めろ、くらいだろう。望まぬプレイの重ね掛けにならない様、なるべくマイルドなものをと考え、

    Look(見ろ)

    と囁くと暫くして白い顔が持ち上がり、蕩けた紅い瞳がおずおずと差し向けられる。いつもは刺す様な鮮やかな紅は蜂蜜の様にどろりと溶けていたが、視線は合っている。次第に濁りは消えて透明度が高くなり、やがて俺の姿を映し出した所で、

    『と、ど、ろ、き』

    と掠れた声で言う。そうだ、俺は轟だ。ちゃんと見てくれたな、良い子だ、そう言って頭を撫でると一層脱力していくが、もう呼吸は荒くない。サブドロップを抜け出してサブスペースに入ったのだろう。病院に行くか聞くと行かないと言うので、タクシーを呼んで爆豪を家まで送り届けたものの、1人にするのは心配で、結局その晩は爆豪の家に泊まることにした。

    +++

    朝起きたらリビングのソファに隣のフロアの轟焦凍が寝ていて驚いたが、昨日のことは何となく覚えていたので、叩き起こさずに済んだ。心配してくれたのだろう、自分の情けなさに腹が立つがコイツに罪はない。ソレどころか頭のおかしいセクハラ上司から庇ってくれた恩人だ。他人の結婚式で浮かれた挙げ句に結婚前提の交際を迫ってきただけでも鬱陶しいのに、コマンドまで引っ張り出してきやがって、思い出したらまた吐きそうになって洗面台に行くと、ボールに水が貼ってあり薔薇の花束が浮かんでいた。どうやら轟は雑な人種らしい。


    『爆豪は料理も出来るんだな』

    『魚も卵もただ焼いただけだ、誰でも出来るだろ?』

    俺は出来ねぇぞと言い、何の変哲もない和食を美味い美味いと言って平らげていくこの男は我が社一の美形と名高いはずだが、こうも無邪気な顔を見せられると警戒心が薄らぐ。って、俺は警戒しているのか、コイツに?ああ、コイツもDomだもんな、そうだ、

    『お前、パートナーとかいねぇの?いたら、こんなとこで油売ってたら相手に悪いだろ?』

    『ああ、それは大丈夫だ。パートナーはいねぇ、昨日は久しぶりにプレイしたから何か腹減っちまって、それで、悪ぃ、食糧庫にあった蕎麦勝手に茹でて食っちまった、麺つゆも借りたぞ』

    何だコレは?この無邪気なまるでよく懐く大型犬の様なDomは?

    お前こそパートナーはいねぇの?って訊いたら居ないって即答された。良かったらまたプレイしようなと帰り際に残して立ち去った轟の匂いがまだ残る部屋を持て余しながら、それってどういう意味か解ってンのかってイライラしてしまうのは、

    俺が轟焦凍に淡い恋心を懐いているからだろう。

    そうだ、ブーケ!ジンクスなんかに興味はゼロだが薔薇には罪はない。茎を切って少しでも長持ちさせようと花束を解体した所でポトリと何かが落ちる。ブーケトスを受け取った時には入っていなかったソレはビニールに包まれた紙切れで、開いてみると、

    『好きだ、連絡してくれ』

    という走り書きと電話番号とメールアドレス、間抜けなのか意図的なのか、差出人の名がないソレを握り潰すかどうかを数秒考えてから電話をすると、

    『爆豪』

    嬉しそうな大型犬もどきの声がして目眩がした。てっきり行き当たりばったりな大雑把野郎だと思ったのに、こんなモン仕込みやがって!それから暫くが経ち、


    『ブーケトスのジンクスって本当なんだね!ともあれ爆豪くんと轟くん、おめでとう!イケメン2人で引っ付かれて女子一同ガッカリなんだぞ!』

    いやジンクスなんてクソ喰らえなんだが、全く、なんてこんなことになったんだ?

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    eikokurobin

    DONE轟爆/DomSubユニバース/リーマンパロ
    ジンクス 風が、強い。

    ゴウゴウ、ゴウゴウと耳元を容赦なく打つせいで何も聞こえずまるで世界から隔絶されてしまったかのようで、

    だからだろう。突然向かってきたソレに反応が遅れ『爆豪くん、キャッチ!』と叫ばれ思わず手を伸ばしてしまったのは。すかさず女子に取り囲まれ、狡い、羨ましいと連呼されるがこちとら全くの不本意だ。こういう煩わしいことに巻き込まれないようにわざと離れた所に避難していたのに、何で、どうして、

    強い風に煽られて軌道を大幅に変え、俺の後頭部目掛けて襲撃してきたそれは小さな薔薇の花束、

    『ブーケトスを受け取った人は次に幸せな結婚するのよ!』

    何で、こんなことに。

    +++

    結婚式の二次会に呼ばれて参加してみたものの、何処に座って何を喋ったらいいのかさっぱり解らない。出来れば早く帰りたいが、会社の先輩の結婚とあっては早々に帰るのは不味そうだ。何より困るのは女性に言い寄られることで、『轟さんは結婚願望ありますか?』あると言ってもないと言っても面倒なことになる質問をしてくる女子社員が入れ替わり立ち替わり隣にやってくる。しなだれかかられそうになる度にトイレに立つことで回避して、
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    eikokurobin

    DONE轟爆/雄英2年生
    無自覚でいさせて 朝、ハイツアライアンスのリビングに降りていくと半袖の者がチラホラ目に入った。すぐに6月に入り衣替えが許可されたのだと気が付き、ならば自分も半袖にすれば良かったとチラリと思うが、今から着替えに戻るのも面倒くさいし何よりなるべく早く学校に行きたい。今日のところは自前の個性で蒸し暑さを凌ぐとして足を急がせ、教室に入り目当てを探すと、

    いた。色彩の淡いのがひとり、椅子に座り耳にワイヤレスイヤホンを入れて何かを聴いている。それは、いつも誰より早く登校する、俺の爆豪。

    耳を封じたからといって他人の気配を気にしない男ではないが、そっと足音を忍ばせて近づきわざと耳元でおはようと囁くと、早速距離が近ぇと睨まれる。誰もまだきていない教室に2人きり、しかも恋人の関係でそんなことをいうなんて酷くねェか?と、ちっとも酷いだなんて思っていない口で言いながら唇に唇を寄せると、キスの代わりに鼻の頭を齧られそうになる。おはようのキスひとつ素直にさせてくれないなんて、本当に懐かない猫のような恋人だが、そこがまた可愛いと思ってしまう辺り、自分も中々に重症だと思う。まもなくほかの奴らも登校してくるだろう、それまでのほんの数分だけでも爆豪を眺めていたくて、ひとつ前の席を拝借して向かい合わせに座った所で、
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