駆け落ちマイロード ジローが目を覚ますと、すっかり日は落ちて、民家の少ない郊外の空には星が瞬き始めていた。また居眠りをしてしまった──苦笑して、横に転がっている古びた王冠を拾い上げ、ジローは再び歩き出した。
ジローには大切な使命があった。この錆び付いた王冠を、今は亡き偉大なる王に捧げ、高貴なる魂を蘇らせるのだ──そう言いつけられて城を出たはいいものの、実のところジローは、この役割の意味や、蘇らせた魂とやらをどうするのかについて何も知らず、ただ、城での勉強や雑用仕事に飽きていたところに舞い込んだ暇つぶし程度にしか考えていなかった。
そんなジローが言いつけられた使命を背負って城を出たのが今から約三日前。本当ならば一日もあればたどり着く、国の外れの小さな森に、城を出てから三回目の半月が頭上を通り過ぎていったころ、ジローはようやく足を踏み入れた。ここにかの古代王が眠っていると言うらしい。
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