インセクター4斑猫は森の中を宛もなく歩いていた。
いつしか日はどっぷりと暮れ、電灯のひとつもないこの森は、真っ暗な闇の空間へと姿を変えていた。
僅かな月明かりが差すだけでは、どうにも独りで歩くには心もとない。
薄曇りの空に浮かんだ月は、度々分厚い雲に遮られ、道標たる光明を消してしまう。
しかし、斑猫は足早に歩を進めていく。
もう、1時間くらいはこうして歩いているだろうか。
墨汁の中に沈んでいるような錯覚さえ覚える暗闇だが、斑猫には進む道が見えていた。
道が見えている、というよりは、道が分かっている、と言った方が正しいか。
頬を撫でる風が、耳に入り込む様々な音が、鼻孔に入り込む湿った木や土の臭いが、靴底越しに伝わる地面の感触が、斑猫の脳に不可視の道を感じさせている。
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