ゆめのかよいぢ、ひとめよくらむ。ある日、女は微睡みのなか、暗い森に立ち尽くしていた。これは夢の中であろう、と女は推察した。というのも、目の前に広がる光景があまりにも、非現実的だったから。
月に照らされて、季節も大きさも、色もとりどりの花が咲き乱れていたのだ。だというのになにだか、爽やかなミントの香りがしていた。
女はそれをぼうっと見やって、きれいだな……と適当なことを考えていたが。
「やあ、こんばんは」
「ルーサーさま」
振り向くとそこにいたのは、女が住まう屋敷の主、ルーサーであった。
夢に現れる彼は普段より小柄で表情豊かだ。屋敷の管理、監視を行っているルーサーは無表情で物静か、そして時に厳しく甲斐甲斐しく小言を言っているのが常であった。しかし夢の中ではそうではない。
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