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    すみれ

    🍨📘小説の溜まり場

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    すみれ

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    『好きって言って』「行秋・・・ずっと伝えられなくてすまない。ぼくは行秋が・・・その、恋愛感情込みで好きなんだ。」
    僕はその言葉に何て応えれば良かったのだろう。親友として過ごしたいのだと、そう思ったばかりだというのに。僕は重雲に何も言えなくて、黙ってその場から走り去ってしまった。

    * * *

    「・・・最悪。」
    それは重雲の想いを知ってしまったからか。それとも重雲を傷つけるように逃げ出してしまった自分自身に対してか。いや、きっと踏ん切りつかない自分の心に対してなのだろう。・・・怖い。幼馴染として、親友として。その関係が失われてしまうことが酷く恐ろしい。でも、その先の・・・恋人という関係に憧れてしまう自分もいるのだ。
    木の幹にもたれかかって、膝を抱えて俯く。自分はどうしたいのだろう。重雲が僕のことを好きだって、それはすごく嬉しいことのはずなのに。重雲の言葉を聞いた瞬間に、嬉しくて、喜ばしくて、泣きたくなるほどに感情揺さぶられた自分がいたはずなのに。『親友』という肩書きに執着している自分が離してくれないのだ。
    サッと、足元に影が降りる。そして同じようにして誰かが隣に座る気配。
    「やっと追いついた、相変わらず速いなぁ」
    「どうして・・・追いかけてきたの?」
    重雲は逃げ出してしまったことを攻めることはせず、ただただ隣に座っていた。
    「行秋は、ぼくが告白したのが嫌だったのか?」
    「・・・・・・分からない。嬉しかったはず・・・だよ。」
    自分の感情への答えが見いだせなくて、自信が持てなくて。そんな自分が悔しくなって泣きそうになる。でも、告白を台無しにされた上に泣かれては流石に重雲が可哀想だろう。ぎゅっと己の体を抱え込むようにして完全に殻に閉じこもる。だって、そうでもしないとこの濁流のようにうねった感情を全て重雲にぶつけてしまいそうだったから。
    「行秋、話して欲しい。」
    「・・・何を?」
    「どうしてそんなに苦しんでるのか。・・・話して欲しい。」
    そっと重ねられた手はとても暖かくて、あぁそういえば小さい頃はよく手を繋いでいたな、なんてことを思い出す。
    「・・・君と、親友でいたい。一番の親友を、譲りたくない。」
    「うん」
    「でも、君の特別な存在にもなりたい・・・あはは、これじゃ僕がただ我儘なだけだね。」
    力なく笑っても、答えは返ってこない。あぁ、駄目だ。きっとこの傲慢な思いは伝えるべきではなかった。重雲に・・・嫌われてしまった。
    顔を見るのも怖くなって、何だか目の奥が熱くなって。もうどうにでもなれとやけくそな気持ちにさえなった。重雲は暫く黙っていた。二人の間に沈黙の帳が降りる。
    「・・・・・・行秋」
    先に沈黙を破ったのは重雲で、その声には困惑がありありと醸し出されていた。
    「どうして、付き合ったら親友じゃなくなるんだ?」
    「・・・・・・え?」
    俯いていた顔をばっ、と勢いよく上げる。やはりというか、不思議そうにしている重雲と目が合う。
    「付き合っても親友のままでいいんじゃないか?元々ぼくはそのつもりだぞ。」
    「で、でも恋人になって、そしたら友達とは違う・・・関係、に」
    「友達から恋人になったからってそんなに変わるものじゃないだろう?今まで通り一緒にいて、今まで通り遊んだり・・・ほら、今までと何も変わらない。」
    「そ、それじゃ、恋人になる意味が無いじゃないか。」
    「ある。・・・行秋にちゃんと大好きだって伝えられる。」
    繋がれた手はそのままに、優しく頬に触れられる。その瞳にはいつもより暖かな、むず痒くなるような・・・そんな熱が籠っていて。
    「それに、行秋がぼくの親友の一番になりたくて、特別な存在にもなりたいって言ってくれた時・・・行秋があんなに苦しんで話してくれたのに、嬉しいと思ってしまったんだ。ぼくの方がよっぽど傲慢だな。」
    なんでもない事のように、君がそうやって笑うから。あぁなんだ、僕が悩んでいたことは君みたいな太陽に簡単に溶かされてしまうようなものだったのだと。何だか気持ちが軽くなって、一度深呼吸する。重雲は何も言わなかった。僕の言葉を待ってくれていた。

    「重雲、僕も君のことが・・・」
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