おめでとうなんて言ってくれるな 窓の外の景色にも、もうすっかり夜の帳が下りた頃。革張りのソファーに身を預けていたブラッドリーを誘うように、ノックの音が部屋に響いた。
この部屋にやってくる人物の中で、律儀に扉を叩くような者は限られている。賢者か、たまに魔法を教えてやっているミチルか。しかし今日の其れが、そのどちらとも違うことにブラッドリーは気が付いていた。
ぐっとひとつ伸びをして、長い脚をソファーのアームレストから床へと移す。だが決して音のもとへと歩み寄ることはせず、ブラッドリーは口を開いた。
「入れよ。ドアなら開いてるぜ」
声掛けから一拍遅れて扉の向こうから姿を現したのは、迷うように視線を泳がせた、ブラッドリーの予想通りの男だった。その手にはつまみの白皿と、赤いボトルが一本握られている。
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