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    雑文をポイっとしにきます🕊

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    私的な記念日なので、書きかけあげておきます。
    たぶんキスの日の前くらいから書いては放置を繰り返している作品です。

    ハテノ村の恋人リンゼル。
    私は、リンクを回生ベースに近衛の記憶が『のってる』イメージの設定で書いてます。
    恋人になるとややフラット気味。
    この後、いちゃこらいちゃこらさせたい。今もいちゃこらしてるけど。

    喋々喃々 二人がハテノで暮らし始めて初めての夏を迎えようとしていた。
    宵の口。窓からは爽やかな夜の風が、夏草の香りと虫の鳴き声を運んでくる。
    それはこのハテノで短く、貴重な過ごしやすい季節の訪れを告げていた。
     しかし、この家に住む恋人達は、そのどちらにも気づかないようだ。
    睦まじくささやき合い、時折どちらかの笑い声があがる。
     今夜はちょっとしたお祝いだった。
    家の改築が終わり、新しい家具を入れたのだ。
    平和な世には不要と無骨なスタンドを減らし、一階奥にスペースを作った。
    柱や床には蜜蝋とハーブを塗り、爽やかな香りのするそこに、二人で腰掛けるのに十分な大きさのソファーと小さなテーブルを置いた。濃紺のソファーは、この村の顔見知りの棟梁に苦心してもらった。ソファーという物を知らない者に、図を描き、丁寧に何を求めているのか説明をして、素人の彼等が知り得る技術を伝えた。
    話に耳を傾け、時折独特の言葉尻に相槌を返しながら、その灰白色の瞳がキラキラと知識欲と職人の意地と誇りに輝くのをリンクとゼルダの二人は見た。
     そこからは早かった。木材の選定に、座面につめる羊毛の収集。編まれる前のリトの羽毛を集めた。リンクは方々飛び回り、全てが揃うまで季節は1年の半分が巡った。
     その間、ハテノで織られた布と紡がれた糸を染め、ゼルダが一針一針丁寧に作ったクッションを置く。カバーは真白く染めた布に青と白、緑の刺繍糸で姫しずかを刺し、中には羽毛を詰めた。
     ソファーの前には小さいながらも暖炉と竈を置いた。それは秋から冬にかけて、この家を暖めるだろう。竈に据えた料理鍋でさっそく何を作ろうか、夏の間に何をしようか。おしゃべりが途切れる事はない。
     杯が空いたと、リンクがゼルダに琥珀色の液体を注ぐ。
    礼と共にゼルダがそれを口に付けた。飲み口の広い白磁の杯から甘酸っぱい香りが溢れて彼女の鼻先をくすぐり、口腔内にはこっくりとまとわりつく甘さと酒の苦味が広がった。
    ゼルダが美味しいと笑うと、リンクも同じ顔をして杯を重ねる。
     改築祝いにともらったシードルの新酒は、昨年のリンゴの出来が良く、以前飲んだ物や記憶にある物よりも美味しく感じられた。
    新しい生活への期待感か、優しい季節だからか。はたまた、こんな特別な夜に、心通わす相手と飲むからだろうか。
     そんな事を考えながら、ゼルダはそっと隣のリンクを覗き見た。
    初めて会った子供の頃は女の子かと見間違えるほど可愛らしかった顔立ちは精悍な物となったが、それでも空色の瞳を飾る長いまつげ、シュッと通る鼻筋。小さくもないが大きくもない形の良い唇。洗ったままの髪の毛はサラサラと流れ、耳からこぼれた1筋は、その横顔を隠しては彩る様に揺れる。ほろ酔いのふわふわとした高揚感が、いつもより想い人をキラキラ輝く物にしていた。
     十分な大きさなのに触れ合う距離で座り、温もりを交わす。何気なく見つめ合い、愛しさが溢れる。リンクがゼルダのこぼれた細い金の一房をそっと指先で耳にかける。そのまま髪を梳く様にして、その滑べやかな感触を楽しみながら引き寄せ、頬に口付けた。
    柔らかく、吸い付くような瑞々しい肌。
    その感触は、いつでもリンクの理性を溶かす。もっと味わいたくなって、触れては離しながら小さく食む様に動かす。
    彼の唇のくすぐったさに、ゼルダは肩をすくめて小さく笑った。
    間近で瞳が重なると互いに胸が熱くなり、鼓動は早まる。
    ゼルダが両手でぎゅっと抱きしめていた杯を、リンクがそっと取り上げて近くのテーブルに置いた。杯がことりと音を立てる。
     恥ずかしさにゼルダが視線を落とすが、リンクが彼女の丸い額に口付けると、そっと顔をあげた。
    新緑の瞳が、本当はどこにその唇を欲しているのか告げていた。
    だから、リンクは許しは請わなかった。
    迷わず抱き寄せて、ゼルダの唇に自分の物を重ねた。
    いつもより触れた場所があたたかい気がした。
    すぐにわずかに離して、互いの喜びの笑みを唇の動きで感じながら擦り合わせる。
    なぞる様に添わせ、舌先でなぞり、小さく食む。
    遊び、愛しむ様に気持ちを重ね合い、互いの手のひらは相手の背をなぞる。
    リンクの口元、ゼルダの鼻から、満足気なため息が漏れ、鼻先を擦り合わせると、きつく抱きしめあった。
     ゼルダは彼の首筋に顔を埋め、深く息を吸い込んだ。彼の香りで、その胸をいっぱいにする。夏草と水、お日様の香り。体の中から彼に染まっていく様でふわふわと夢見心地だ。それは甘い飲み物によるものか、はたまた恋する気持ちからか、どちらもか。
     そのうっとりとする幸せを噛み締めながら、ふと脳裏に石鹸とハーブの香りが浮かぶ。それは、間違いようもなく『彼』のにおいだった。
     ゼルダはうすら瞳を開き、自身を抱きしめる空色の優しい輝きを見た。感情豊かに揺れる瞳。それを細めて笑う。その時、すこし目尻がくしゃっとする。柔らかな唇は下弦の月の様に細くなり口角が上がる。
    それがそっとゼルダの頬に落とされる。
    彼女はたまらずぎゅっと瞳をつむる。その感触が吐息を残して遠ざかると、離れ難さに新緑の瞳はすがる様に彼を追う。
    するとリンクはその気持ちを知ってか、今度はまるで子供の様な純真さで破顔する。
    その眩しさに、ゼルダはすぐにまたぎゅっと瞳を閉じた。
    頬が熱を持つ。
     間違いなく自分を抱きしめる男が想いを交わした彼である事に安心感と愛しさが胸を満たすが、同時に一抹の寂しさが、その胸の底からじわりと染み出す。
    ゼルダの胸に複雑な感情が溢れ、淡くかの青い花色に染まる布にポツリと涙色の染みを作る。
    「どうしたの?」
     黙り込んで、すがるようにしがみつく恋人の様子に、リンクが覗き込むようにして、そっと細く長いその耳に唇を寄せる。
     その気遣いと愛に満ちた感触に、ゼルダはそっと閉じた瞼をあげた。
    このまま胸に秘めようかと思っていた気持ちを、今ならばリンクに言える様な気がした。
    今まで、とても伝えられなかった。目覚めの訪わぬ自分には許される物ではないと思っていた気持ち。
     それは、リンクに対する甘えだろうか。ゼルダは思った。
    リンクと共に過ごした時間。積み重ねた言葉の数々。寄せ合った信頼。それらに、このずっと秘めていた想いを打ち明けた末に許されたならと願う自身に気がついてしまった。
    しかし、どんな顔をされるだろうか。呆れられるだろうか。がっかりさせてしまうだろうか。不安はある。
    命を賭して仕えた主人の秘密を知ったリンクの反応を恐れながら、全てを彼に明け渡したい感情に囚われる。それは甘い開放感か。それともこの季節のせいか。
    それを答えにできぬまま、ゼルダは彼の自分よりも少しだけ大きな耳にそっと唇をよせた。
    緊張にゼルダの喉がひりつく。
    「あなたにずっと話したかった事があります。私の秘密を、聞いてください」
     耳を峙て、リンクは小さく相槌を返す。
    感じるゼルダのわずかに震える小さな声、その吐息すら愛しく、リンクは頬をすり寄せる。
    それにゼルダはもうっと、困った様に笑う。
    彼の様子に、きっと大丈夫。と、そうわかっていてもゼルダはわずかに震える。
    ならいっそ違う話でやめてしまおうかとも思うのに、彼の息遣いの一つすら愛しくて胸に溢れる衝動は止めようもなかった。
     ゼルダはリンクに向き合うと、そのほっそりとした指先で、彼の顔のラインをなぞる。
    顔にかかる髪の毛は心地よく、自分と違う日に焼けたカサつく肌を顎までたどり着くと、そっと指裏で頬を撫でる。すると、リンクは気持ちよさそうに一瞬瞳を閉じた。
    頬を包み込み、そっと額を合わせる。
     間近でゼルダをうかがう空色の瞳は、主人の告白を行儀よく待っていた。澄んだ色はすでに何もかも包み込む許しをたたえ、何事かと期待をもってわずかに揺れる。
    それに吸い込まれるように、ゼルダは息を吸い込む。
    「じつは、あの頃から貴方の事を慕わしく思っていました……」
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