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    Na0

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    寝かしつけの際に見たリンゼル。
    元ネタは絵本のあれです。
    ハテノの家を初めて二人で訪れた話。

    ちいさくて ふるい おうち 私は、このハテノ村の端で、それを守る騎士の一族をずっと見守ってきた。ただの古い家守りの精霊だ。
     一時は住む者もおらず、玄関の扉すら無くし、風雨にさらされ解体されそうにもなったが、不思議な事に少し前のおかしな事象の前後に姿を消した若き一族の主が、在りし日の姿のままふらりと戻って、私を買い戻した。
     若い主は以前と少し様子が違ったが、私を大切に扱ってくれた。まぁ、ほとんど家に寄り付かず、時にはボロボロになりながら戻ってきたと思えば、翌朝すぐに出かけて行き、しばらくまた姿を見せない。そんな留守の間、風雨や害虫、害獣から家を守る。それが私の役目だった。
    主が不在でもやる事は変わらない。
     あの日、思い詰めた様子で珍しく数日滞在した後に、主は姿を消した。あれからもうすぐ季節が一巡りする。
     私の管理は、カツラダという若者が見てくれた。時々、窓を開けて空気を通し、埃を外へ出す。そして、疲れたと時々主の寝台で昼寝をしていく。まぁ、完璧ではないが、なかなか見どころのある奴だ。しかし、主はその者に私を譲ったわけではないらしい。
     と、言う事は、私はまだ主の物だということなのだ。無事ならばいい。ここへ戻れぬ事情もあるのだろう。
    私は家守り。ここに住まう者を守護するのが使命だ。離れていても主の無事を祈ろう。
     そんな事をずっと思いながら過ごしてきた。
    しかし、それは突然だった。あの日、主がここに戻った時と同じく、その時は訪れた。
    「こちらです。討伐へと向かってからから1度も戻っていないので、少し埃臭いかもしれません……」
     村から私に通じる唯一の道。あの古めかしい橋の方から、何やら楽しげな声が聞こえてきた。
    あれは、我が主のそれか?
    「かまいません。貴方がどんな所で過ごしていたのか、気になってしまって。私の方こそ迷惑ではありませんか?」
     何だろう。耳に心地よい若い娘の声もするようだ。
    「そんな事ありません!」
     何やら主にしては饒舌で、どこか声が浮足立っているような。そんな気がする。あぁ、知ってるぞ。この感じ。
    「なら良かった。まぁ!ここに『リンクの家』と書いてあります!」
    「そうなんです。では、さぁどうぞ」
     私の正面にある玄関の扉が開く。久しぶりではないか、我が主。歓迎しよう!
    「失礼します」
     開けた扉と主を横に、入ってきた娘は、玄関のマットで靴の泥を落としてから、私の中へと入ってきた。なかなか礼儀正しく、躾けられているようだ。
    「最低限の物しかない、殺風景な部屋ですが」
    「あたたかい感じがします。良い家ですね!」
     女は最初キョロキョロと見回して、私を興味深く見ている様だった。好意的で、なおかつ何やら娘も浮足立っているようだ。よし、よし。良い感じではないか。
     思い出す。あの時も、その前も。その前の前の主も、こうやって伴侶となる娘を連れてきた。懐かしい。赤子が一人で歩くようになり、あっという間に少年から青年へ。そして、新たな主となり次の主をもうける。その節目の空気がする。
     もしかしたら、また次の主へと私は役目を繋げられるのか?それこそ望外の喜びという物だ。
     おや? 私も浮足立ってうっかりしたが、娘の様子が変だぞ。中央に置かれたダイニングテーブルでぴたりと視線が止まってしまった。はて。何か若い娘の気に障る物でもあったかな?
    「ありがとうございます。もう古くて、あちこちガタがきてもおかしくないんですが。初めてここに来た時、どうしてか守りたくて。解体寸前のここを買いました。……いつかここを、ゼルダ様に見ていただけたら、と。そう思っていたので思いがけず夢が叶いました。ありがとうございます!」
     あぁ、主はそうか。そこらへん鈍い男だったのか……。確かに他に女を連れて来た事は1度もなかったな。娘の様子が変だそ!主、早く気付け!
    お前の。いや、この家にとっても大切な好機ではないのか?
    「……本当に?」
    「え?」
     ほらみたことか! 娘は何かを気にしているぞ! 早く気付け!
    「私は、やはり貴方の任をもっと早くに解いた方が良かったみたいですね」
    「ゼルダ様?」
    「すみません。その……こちらにいらした貴方の大切な人は、今どちらに?」
     何だ? 何を言っている? ……そうか、主よ! 食器だ! 彼女はテーブルの上にある食器が二組ある事で、大変な誤解をしているぞ!
    「え? 大切な人なら……その、こちらに」
    「な?! 変にはぐらかさないでください! 私は貴方の事を、……貴方を心配して……。どなたか大切な方と暮らしていたのでしょう?」
     娘よ……何て健気な。そうか……。しかし、そうだよな。主の事を思えば身を引くか。しかし、それでは、そなたが辛い。
     この一族を長年見つめてきた私なら分かる。相手を思いやる気持ちのある、健気な娘ではないか。
     主よ。一刻も早く誤解を解け! 私はこの娘に決めたぞ!
    「そんな人はいません!? 何で急にそんな事をおっしゃるのですか?」
     ようやく事態を飲み込めたのか、慌てた主が娘の手首を掴んだ。そうだ! しかし、惚れた女は優しく扱え! しくじるなよ!
    「おれは、ここに……ここに貴女をお連れできて本当に嬉しいと思っていたんです。それに、見ていただきたい物があって、それをご一緒できたらと……ずっと思っていました」
    「リンク……」
     よし! よし! よくやった! 絆された女の気配がするぞ! いけ! 私も、ありもしない手を握る気持ちだ!
    「ここに、貴方と……もうお一人の食器があります。てっきり、誰かここにいらしたのかと。貴方が一緒にいてくれる事で、私は……とても助けられました。感謝しています。けど、もし貴方が私が思うよりもっと何か自分を犠牲にしてやいないかと……心配になってしまって」
    「食器? あぁ、それは……その……」
     そこで言葉を濁すな! 新たな誤解を招くぞ!
    おっ、何だ。急に男の顔になったな。そうだ、その娘を逃すなよ!
    「この家を整えていた最後に、棟梁がくれたんです。『いずれ、この家で一緒に住みたい相手ができたら使えばいいワ』って。その時は、ここは武器を置いておいたり、疲れて寝に帰って来る場所でしかなくて、そんな事思ってもみなくて、だたそこに放っておいたんです。けど……」
    「……けど?」
    「記憶を取り戻して、しばらくして……気づいたんです。上に、ゼルダ様にお見せたい物があって、それを飾った頃。この家はおれのなんだなぁって。ここに全てが終わったら戻って来ようと。ここがおれの家なんだと、そう思えるようになって……」
     主、お前そんな事を思っていたのか……。
    「そして、……その……あの……一度でいいから、貴女に訪れていただけたら、と。その時、この食器も使っていただけたらと……そんな大層な事を思ってしまっていただけで……」
     押しが甘い! きっとそこが主の良い所なんだろうが……それで娘は、納得するわけが……。
    「リンク……」
     あれ? 娘よ、何をうっとりとした声を? これでいいのか? はっきり言葉にできない上に、これだけの事で顔を真っ赤にしてる、こんな不甲斐ない主でよいのだな?
    「ありがとう……その……嬉しいです」
    「ゼルダ様……」
    「今回、こちらにお邪魔したのは……その、プルアとの共同研究を進めたくて、しばらくハテノでの逗留先を検討していました。貴方が……嫌でなければ、その食器、私に使わせていただけますか?」
    「も、もちろんです!」
     やったぞ! あぁ、あぁ、そのデレた顔。わかるぞ。この家の男は皆そうだった。剣の腕は確かなのに、惚れた女にはめっぽう弱い。
    まぁ、それが幸せの秘訣らしいがな。
    「その、貴方が私に見せたいという物を、見せてもらえませんか?」
    「喜んで!」
     主が、今更ながら気づいて、慌てて娘の手首を離した。
    これは、これは。ここも人の出入りは増えるが、賑やかになるにはまだ先か。
     おっ! しかし、階段をエスコートする所作は中々ではないか。
    主。幸せになれ。我が腕に住まう者に幸あれ。私の願いは、それだけだ。
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    yu___n1227

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