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    Na0

    雑文をポイっとしにきます🕊

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    Na0

    ☆quiet follow

    フライング年末。近衛リンゼル。

    あなたへの言祝ぎとあなたへの誓い 真冬の空気が、深々と冷気を寄り添わせて横たわる。
    ハイラル城下町の灯りが、今夜は一層煌めいて見え、それが余計に焦りを友にしてゼルダの心を凍りつかせた。
     かわたれ時。不意に風が吹き始める。日の出が近い。ふるりと、ゼルダが小さく背中を震わせて肩を縮こませると、新年参賀の為に誂えたケープのユキイロギツネの毛皮が唇を柔らかく撫でる。
     しかし、やにわに背に感じる風が和らいだ。
    後ろに仕える彼だろう。ゼルダはもう驚く事も、振り向く事もしなかった。
    「昨年、私にとって何より僥倖だったのは、貴方との事かもしれませんね。リンク」
     返事はない。いかにも彼らしくて、ゼルダは口元をほころばせた。
    「5年です。貴方が退魔の剣を携えて、この城に登ってから。私も子供でした。あの頃、貴方がとても……恐ろしかった。まるで不出来な私を逸らせる、女神が遣わせた使いのようでした」
    「……」
     愛らしい形と褒めそやされるゼルダの耳に、風鳴りに隠されたリンクの小さく息を飲む音が響く。
    「貴方ときちんと話ができて良かった」
     ハイラル平原を望む塔の後ろの空が白み始めた。瞬きする毎に星が消え、山々を空に切り取る。
    「夜が明けます。願い事は、決めましたか?」
    「姫様のご健康とご多幸を」
     複雑そうな表情で、ゼルダは彼を振り向く。すると、彼は赤い紐に手を添え、礼をとって膝をついたが、頭はたれなかった。
     朝日が、白く透き通るゼルダの肌を、その金の髪を照らす。それは頭上のティアラの煌めきを霞ませる程で、リンクは眩しさに瞳を細めた。
     ゼルダもまた、光差す彼の幼いながらも整った容姿に。何よりもその在り方と背中の剣に、同じく瞳を細めた。
     しかし、逸らすことなくまっすぐに彼を見つめ続ける。
    「貴方には感謝を。退魔の騎士、リンク。私は、私の務めを、と。そう……望みましょう。貴方に恥じぬ私に」
    「それは……勿体のうございます」
     ゼルダは小さく声をあげて笑った。
    「勿体無いのは、私です。貴方の務めに、その忠誠に、報いる物は唯一つ。力の覚醒しかありません」
     そう言って、ケープと揃いの柔らかな毛皮のマフから右手を出すと、自らその手袋を取った。
    ほっそりとした指が優美な所作で、リンクの前に差し出される。
     一瞬、リンクは空色の瞳を見開き、しばたたかせると、ゼルダと彼女の御手を交互に見つめた。
    リンクには、真冬のどこまでも澄んだ白い空にもあたたかな、新緑の瞳が揺れているのが解った。
    主として忠誠を求めながら、縋るような少女の不安な心をみた。
     そして、自惚れだろうか。
    男女の機微など全く知らぬ、他人の心すら知らぬ自分が、もしやまさか仕える主の瞳に女の恋慕の情を見た気がした。
     リンクは、そっと手を伸ばした。
    指が、わずかに震える。それを、きゅっと革手袋が鳴る程に一度硬く握りしめ、ゼルダの手を取った。
     逡巡したせいで冷えただろう彼女の温もりは、手袋越しには解り得ない。
    しかし、何か。わずかに流れ込む物を感じた。
     ゼルダもそうなのか。ふっと安堵の息を漏らすが、彼の冷たい唇と彼の温もりが混じる吐息を指先に感じて、反対に息を飲んだ。
    触れたのは、一瞬。離れてしまった切なさに、手を握りしめたのは、今度はゼルダだった。
    「……ありがとう、リンク」
     想いを込めた言葉が、風にさらわれてハイラル平原の果に。遠く彼方へ消えていった。
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    Na0

    DOODLEゼルダが戻った砦が大騒ぎになって、全種族揃って宴会する話。
    4種族そろうのってなかなかないと思う。ゾーラなんて特に清水がないと駄目だし。そんな中でうまれた料理に、自分の成した事を見出してほろりとする事があっていいなぁと…思ったらくがき。
    ゼルダが戻った砦が大騒ぎになって、全種族揃って宴会する話 その日、ゼルダの帰還に砦は歓喜に沸いた。
    鳴り止まぬ彼女を称える声が鳴り止まない。
    リンクは集まる人々からゼルダを守りつつ、自らももみくちゃにされ、多くの物が彼の腕を、その背中を叩いた。
    「よくやった!」と、そう誰かが言った。リンクの胸が熱くなる。
     リンクとゼルダがようやく中央まで進むと、「どいてっ!ちょっとどいてよっ」と、突然プルアが人垣を押しのけて現れゼルダに抱きついた。
    涙を浮かべるプルアにゼルダは、感謝を口にしてその体を抱きしめかえした。
     その光景に、地下の梯子によじ登り氷柱に顔を出した者達も腕を振り上げる。
    「ゼルダ様、万歳!」
    「ハイラルに安寧を!」
     皆が口々に叫ぶ。
    この数ヶ月、誰もが不安の中、できる限りの務めを果たした。ここに──この世界にいる誰しもがそうだった。そこにゼルダは、百年前と変わらぬ命の輝きを見た気がした。
    1808

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