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    Na0

    雑文をポイっとしにきます🕊

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    Na0

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    井戸端会議まで。牛歩な進行です。
    今回もNPCに個人的解釈と、出番多めです。

    それはきっとあなたとおなじ(仮)45

    「ねぇ?聞いたぁ?」
    「まぁ本当?」
     村の洗濯場は、井戸端会議で忙しいハテノの奥様達の社交場だった。
     サラサラ、チョボチョボと、初めて訪れる者は誰でも清水の音に気づいて振り返るだろうし、空気に気持ちの良い水の湿り気が帯びる。そんな日常の清廉ささえ、おしゃべりに夢中の者にとっては、村を駆け抜けるそよ風程も気に留められない。
     ナツコとアイビーの母、アマリリは、昨日も朝から晩までたっぷり話したはずなのに、まだ話足りないと、清ました口調で挨拶もそこそこに話に花を咲かせていた。
     話題は、もっぱら二人が興味をもった事を雑多に続く。隣の養鶏場の強気な亭主と掴み所のない女房の夫婦喧嘩と風変わりな息子の事。昨日、馬で通り過ぎた旅人が、スラッとして渋く好みであった事。自分の畑の作物の出来から、採れすぎて困って適当に大鍋で煮たら家族に不評だった事。子供が手が離れて、本当に有り難いが、研究所にいるというシーカー族の女の子を探してスパイごっこと、毎日日暮まで出かけて行ってしまう話まで。村の本当に些末な事から大事まで、毎日この調子だ。
     時々、盗み聞きしようと耳を傾けようものなら怒られてしまう。
    聞かれて困る事。特に人の陰口、噂話は、特に小声になる。今もそうだった。よろず屋の店先で立ち話に興じる若夫婦の話題になると殊更だ。
     こしょこしょと話しては、小さく笑い声をたてる。面白がる様で、少し皮肉の混じった視線を寄越す。
    それに気づいて、ゼルダは顔を強張らせた。
    お喋りの高揚感に意気揚々と歩き出した歩調が、止まりそうな程ゆっくりとなる。
    「おはようございます」
     一歩。ニ歩。二人の横を通り過ぎてから、意を決してゼルダが挨拶をすると、ナツコとアマリリはチラリと一瞥して、それからニコリと型通りの笑顔を見せた。
    そして、「おはよう」と、だけ言うやいなや、視線を戻してすぐにまたお喋りに戻る。 
     二人の様子に、ゼルダは眉間にシワを寄せ、その眉尻を下げた。
    彼女には、そんな二人の態度に思い当たる節がありすぎた。
     数日前の事だ。洗濯場の水が自動でコンコンと溢れる様子を気にしたゼルダが、それを観察していると、洗濯仲間なのかと二人が話しかけてきたのだ。
    「ゼルダさんも洗濯かい?」
    「あ、いいえ。この水が何もしなくても湧き出るる仕組みが気になりまして」
    「水? あぁ、そうだね。そういえば何もしなくても出てくるね」
    「はい。とても素晴らしいと思います。どなたが造られたか、知っていますか?」
    「知らないねぇ。子供の頃からあるし」
     新緑の瞳を輝かせるその様に、ナギコは呆れ気味に答えた。何がそんなに面白いのか理解できなかったからだ。
    そんな事よりも美しい容姿に声を持つのだから、もっと違う方に情熱を傾けたらと前々から思っていた。
     家庭的な振る舞いや、女性的な服装。既婚女性として、努力の方向性が違うと井戸端会議の話題に何度もあがっていた。もっとも何もしなくてもここまで魅力的で、甲斐甲斐しい旦那がいるのだから、風変わりな方が村の平和の為にもいいのか。とも話していた。
    「では、水源はどこに? ここでは洗濯を?」
    「そうよ。それで、あっちは炊事」
     そんな思惑に気づくわけもなく、ゼルダが質問を重ねると、今度はアマリリが橋向こうの共同炊事場をさした。彼女もまた、理解に苦しむと少し迷惑顔だ。
     しかし、村のよろず屋を営む家の者として、若者に教えてやらないわけにもいかない。
    誰にでも親切に。親身に。そう娘にも言い聞かせて育てたのだから。
    「野菜や山菜の泥を落としたり、食器を洗ったりするのさ」
    「野菜を洗うのですか?」
    「……ああそうだよ。洗う、よ」
    「どうしてですか? 」
     ナギコとアマリリは、無言で顔を見合わせた。
    予想も常識も越えた質問に、ただ面食らうしかなかった。
    「山や土から捕れた物は、泥や枯れ草なんか付いてるし、虫も付くし……」
    「なるほど! そうでしたか! その際は、洗濯の時の様に、何か灰や油、薬を用いるのですか?」
    「水でただ洗うの! ゼルダさんは洗った事ないのかい?」
    「はい! 今度、ぜひ見せてください!」
     そこで流れた微妙な空気と果てしない距離感は、ゼルダにとって生々しかった。その後、延々、懇懇とハテノの女の生き方という価値観を、優しさと世話好きという名目の二人の先達の自分語りに一日を費やされたのだ。
     思い出して、ゼルダは胸を抑えると、くるりと踵を返して、研究所の方へと、また歩みを進め始める。
     リンクはその様子と井戸端会議を見比べ、何かを悟った様に頷くと、大きく息を吸った。
    そして、一気に吐き出しながら「おはよう!」と大きな声で叫んだ。
     そのあまりに通る大声に、少し離れた東風屋の女将のセンが何事かと振り向いた。
    アイビーもまた箒を抱きしめる様にして、4人をうかがっている。遠くからソテツがほっほっほと息を乱して、自らの店先まで駆け足で戻ると、手を庇にやはり見守った。
    「わぁ?! なんだい! 大きな声を出して! 子供じゃあるまいし」
    「そうよ! びっくりするじゃない!」
     負けじと大きな声で返すナギコとアマリリ。
    二人共むっとした様子で、リンクを睨みつけてきた。
    慌てたゼルダが3人の間に入ろうと、手を伸ばした時だ。
    「ネー。ママ、どうちたの?」
    「母ちゃん……」
     周囲で駆けっこしていたはずのナララがいつの間にか近くに来て、ナギコのスカートを不安そうに引っ張った。妹の手をつないでいるナブも何事かと不安げだ。懐いているリンクと母親の顔を、交互に見つめる。
     アマリリは、はっとなって周囲を見渡すと、ナギコの袖をそっと引く。するとナギコも顔をあげて、周囲を見渡した。多くの昔なじみの視線を感じて、これはしまったとアマリリと顔を見合わせる。
     んんっと、ナギコが小さく咳払いをして、ちらりとリンクとゼルダの格好と荷持を見やった。
    それから、白々しく「ゼルダさんは、また研究所?」と尋ねてきた。
    「……はい」
    「精が出るね。気をつけてね」
    「そうね。天気は良いみたいだけど、あそこは寒そうだから。体冷やさない様にしてね」
     気遣いの言葉は優しいのに、それの裏を思うとどこか恐ろしいように、ゼルダには感じられた。
    「ありがとうございます。では、ごきげんよう」
     ゼルダはそっと仮面を被り、にっこりと微笑んだ。鄙びた村に、その笑顔は真実の様に写ったはずだ。
    「ええ、ごきげんよう」
    「ごきげんよう」
     別れの挨拶を口にして背を向けると、ナギコが子どもたちに「何でもないから、あんたたちはあっちで遊んでおいで。ママは忙しいんだから」と、いつもの口調で言うのが聞こえてきた。
    「そうよ。おばちゃん達はお洗濯で忙しいんだから」と、アマリリの声。
     それはいつものハテノの大通りを吹き抜ける風に運ばれて、皆の耳にも届く。
    手を止めていた村人達も、気になりながらそれぞれの仕事に戻っていった。
     ゼルダもまた、前を向く。その背中をぽんっと隣を歩くリンクが軽く叩いた。
    見つめると、その口元には気に病むなとばかりに、小さい笑みがあった。
    だから、ゼルダもそれに応えて少しだけ口角をあげる。しかし、元気は出そうとしても出てこない。
     止せばいいのに、ゼルダは後ろを振り向いた。
    すると、いつもの場所で彼女たちが、またコショコショと声を潜めて話し合う様子と表情が見えた。
    胸に刺さる痛みを感じて、ゼルダはぱっと、それらから目を逸らす。
     覚えがあった。それはいつも城の柱の影や、通路の向こう。城の離れた窓辺から、いつも自分を見ていた物と同じだ。
    その会話の中身も伴う感情も知れぬのに、それはこっそり、べったりと背中に貼り付いて、いつまでも纏わりく。そして、ゆっくりと心を冷やして、凍えさせていくのだ。
     あの二人は、異分子の自分を面白がっているだけで、純粋な悪意があるわけではない。
    それはゼルダにも分かってる。
    良くも悪くも、悪人ではないのだ。このハテノの村人達は。
     しかし、朝のシチューであったまった体が、冷えていく。暗く俯くその横顔を、リンクが心配そうに見つめていた。
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    Na0

    DOODLEゼルダが戻った砦が大騒ぎになって、全種族揃って宴会する話。
    4種族そろうのってなかなかないと思う。ゾーラなんて特に清水がないと駄目だし。そんな中でうまれた料理に、自分の成した事を見出してほろりとする事があっていいなぁと…思ったらくがき。
    ゼルダが戻った砦が大騒ぎになって、全種族揃って宴会する話 その日、ゼルダの帰還に砦は歓喜に沸いた。
    鳴り止まぬ彼女を称える声が鳴り止まない。
    リンクは集まる人々からゼルダを守りつつ、自らももみくちゃにされ、多くの物が彼の腕を、その背中を叩いた。
    「よくやった!」と、そう誰かが言った。リンクの胸が熱くなる。
     リンクとゼルダがようやく中央まで進むと、「どいてっ!ちょっとどいてよっ」と、突然プルアが人垣を押しのけて現れゼルダに抱きついた。
    涙を浮かべるプルアにゼルダは、感謝を口にしてその体を抱きしめかえした。
     その光景に、地下の梯子によじ登り氷柱に顔を出した者達も腕を振り上げる。
    「ゼルダ様、万歳!」
    「ハイラルに安寧を!」
     皆が口々に叫ぶ。
    この数ヶ月、誰もが不安の中、できる限りの務めを果たした。ここに──この世界にいる誰しもがそうだった。そこにゼルダは、百年前と変わらぬ命の輝きを見た気がした。
    1808

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