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    雑文をポイっとしにきます🕊

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    ヘブラで無心に鉱床を割ってたら、鉱石を贈る近衛が浮かびました。なのになんか書きたい事がそれた気がしますが…。御伽噺風のリンゼル。

    御伽噺昔、昔。まだ何者でもない彼が、もう場所も忘れてしまいましたが、とある場所で見たこともないくらいに輝く鉱床を見つけました。
    少年は、吸い込まれる様に魅入られて、迷わず手にしていた練習用の剣を突き立てました。
    剣は粉々に砕け、鉱床もまた同じく砕け散りました。
    師匠でもある父からはまた剣を失ったと怒られました。罰として夕食を抜かれ、父の装備を整えるよう言いつけられました。
    お腹はペコペコ。ラネールからの風も冷たく、いつもなら悲しい気持ちになりましたが、しかし、少年は平気でした。
    なぜなら宝物を見つけたからです。
    それは、大人に見つからないように、そっと鞄に入れて、厩の干し草の中に隠しておきました。
    少年は馬具を油で磨きながら、それをちらりと見やり、満面の笑みを浮かべました。

    宝物は、誰にも見つからないように、部屋の寝藁の中に隠して、時折見つめておりました。
    ゴツゴツした岩の中に、キラキラと輝くそれは、剣と精霊を唯一の友としていた少年を大変慰めました。
    少年は、その卓越した強さから、王都にのぼる事になりました。
    その頃には、空色の瞳を輝かせ、宝物をのぞき込む事は少なくなりました。
    周囲の心無い言葉や視線に、繊細で優しい心を閉ざしていたのです。
    ですが、少年は宝物を王都行きの荷物に、そっと忍ばせました。
    鉱石は、少年にとって、まだ自分を慰める宝物だったのです。

    それから、数年が経ちました。
    少年は青年になり、背中にこの世界で一振りの剣を携え、『退魔の騎士』と呼ばれる存在になりました。
    しかし、青年は孤独でした。
    誰も本当の彼を理解してはおらず、彼もまた模範たれと周囲を拒絶していました。本人の思惑とは別に。

    ある日、青年は王国の姫巫女の近衛騎士に任ぜられました。
    しかし、彼は姫巫女にいたく疎まれていました。
    青年は理由が全く思い当たらず、ただ時間だけが流れていきました。

    ゲルドを表敬訪問する事になった姫巫女。
    その際、転機が訪れました。
    悪漢に襲われた姫巫女を救った青年。
    そこから姫巫女の青年に対する空気が変わりました。
    いつしか二人は、役目を同じくする姫巫女と勇者の枠を超え、互いの孤独を慰め合う仲になりました。
    それを、青年は自分だけだと思っていました。
    同じく、姫巫女も、それは自分だけだと思っていました。
    ですが、互いを思いやる気持ちが、少しずつ。少しづつ。二人の距離を縮めていきました。

    ある日、青年は、自分の宝物を思い出しました。
    今ではわかります。
    子供だった自分にもかけがえのない物だったそれが、この国の王様が所有するどんな宝石よりも大きく、一つの曇りなく透明なダイヤモンドであるかを。
    そして、青年は想像しました。
    これが、心から敬愛してお仕えする主を飾ったら素敵だろうと。

    青年は、悩み、躊躇いもしましたが、結局、その鉱石を姫巫女に贈りました。
    どうぞ内密に、と。二人きりの時に。
    姫巫女は、それを一目見た瞬間。その価値に気づきました。
    知識に溢れた彼女は、それが学術的にも、富と権力を象徴する物としても、他に類を見ない物だと解ったのです。
    とても受け取れない、と一度は断る姫巫女でしたが、青年の想いと共にそれを受け取りました。

    しかし、それはあまりに希少で。誰にも内密に青年が望む形にする事は無理でした。
    すぐに王様の知るところとなり、それは王様の命でゲルドとゾーラの宝石職人の手によって加工されました。
    一番大きな一つは、姫巫女がいずれ戴冠する際の王冠に。
    二番目に大きな物は、王国の王笏に。
    三番目は、姫巫女のブローチに。
    四番目は、二つに分けられて、同じく姫巫女の耳飾りになりました。
    細かく砕かれた物は、それでも大きく、宝珠に加えられたり、王様の王冠にも飾られました。

    国中では、大きな大きな宝石が話題になりました。
    市井の大人から子供まで。
    その一つで、一族を一代養えるらしい。
    その輝きは、謁見の間から城下町の果てまで届くらしい。
    それを身に着けた姫巫女様の美しさは、女神の如くと。
    だが、誰が王家に献上したのか。
    それだけは、誰にも分かりませんでした。
    貴族身分や神殿の神官達も、日向に、影に憶測が飛び交いました。
    しかし、それは謎のままでした。

    ある夜ふけ。
    青年は、王立図書館におりました。
    書架の影。王様の秘密の小部屋で、問われました。
    「あれは我が娘への、妻問いの品で間違いはないか」
    青年は、驚きに心の臓が止まるかと思いました。
    そんなつもりはまったく無かったので、いつも表情に乏しい顔に動揺を浮かべ、礼を欠いた事に許しもなく面をあげて、あたふたとしてしまいました。
    王様は分かっていました。
    爵位や愛を金で求める男ではないと、自ら認めた青年を疑う事はありませんでした。
    「許せよ。少しそなたをからかってみたのだ」
    ふむっと、青年の瞳を見つめて、王様が言葉を続けます。
    「役目を果たせ。いつの日が来たる厄災に備えよ。そなたにしか果たせぬ偉業を成した時。また問おうとするかの」
    それは王様と青年の秘密の約束になりました。

    しかし、悲しい事に、青年が役目を果たすのは、百年先となりました。
    記憶を失った青年は、騎士ではなくただ一人の男に。
    百年の間、国を守った姫巫女は、国を亡くしただの女になりました。
    二人はそれでも手と手を取り合い、世界の安寧の為に生きました。
    二人はいつしか夫婦となって、青年の故郷の古く小さな家で仲睦まじく暮らしました。
    それは、死が二人を分かつまで続いたそうです。
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