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    Na0

    雑文をポイっとしにきます🕊

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    近衛リンゼル。恋人ではない。城壁の高い所から、恋人を待つ高貴な方が好物でして。少し前からスクショ撮ったり、フィールドワークしていたのですが、やっと形にできました。

    貴方を待ちわびて かたわれ時。
    遠く山の稜線からハイラル平原と空の境界が、茜色に染まり、群青の帳がゆっくりと降りてくる。
     1つ。また1つと、明かり守りの手によって、城下町の街灯に明かりが灯されていく。
    慌ただしい時間だ。家路を急ぐ者たち、慌ただしく夕餉の準備をする者、メインストリートでは旅人が浮かれて多くの店々を物色して歩き、宿では最後の呼び込みに係の者が声をあげる。
     その喧騒は、離れた城の塔に立つゼルダの耳まで届かないが、その勢いは日の入りのつむじ風にのり、彼女を通り抜けていった。
    ゼルダは、風に乱れた髪を手で押さえ、そっと目をつむると、そこにある気配を感じとっていた。
    (リンク……)
     眼下に城のくねくねとした道を。その先の城門を臨む。日が落ちると、堅牢な城門は閉ざされる決まりだった。
    すでにそちらから城仕えの者たちの声が騒がしい。
    (リンク……まだですか)
     掌を握っては、開き。またきつく握りしめる。
    詰めていた息を吐きながら、先程遣いに出した近衛騎士の顔を想う。
    視察に出た際、馬車の車窓からふと見かけた古物屋の店先。
    そこにずっと探していた古文書があった。
    あの緑の革張りに、金の飾り文字。そして書名。間違いない。
     しかし、公務の道行き。どうしても馬車を停めることはできなかった。
    私室に帰ってからも、ぼんやりとそれを思い出していると、お付の騎士が心心ここにあらずな主人を見かねて尋ねた。
    「姫様、いつもとご様子が。何か気がかりな事でもお有りですか?」
     いつもは、自主的に進言などしてこないリンクが、珍しく口を開いて、ゼルダは驚いた。
    しかし、それも近頃感じる彼との距離の為せる物かと、瞳を伏せた。
    「じつは──」
     いつもなら我儘と、胸にしまい込む望み。自分がそれを口にすれば、周りはその意に沿う様にと動く。それが分かっているから、ゼルダは口をつぐむ事が多い。
     けど、リンクになら、それを素直に口にできた。
    彼は、この国のかけがえのない勇者であったが、二つ返事で、まるで従者の雑務の様な用事を引き受けた。
    「閉門までに戻ります。それまではどうかこの部屋を出るような事はなさらないでいただけますか?」
     彼の問いに、ゼルダは黙ってうなずいた。
    それが、一刻前の事。
    しかし、まだリンクの姿はなく、城の門が閉まり始めた。重く鈍い金属音が、城の石壁に反響し、ふくれ上がって空へと高く登っていく。
    (あぁ……)
     ゼルダは祈る気持ちで、胸の前でぎゆっと手を握りしめた、
    主を置いて持ち場を離れた責は、もちろん自分が負う。
    しかし、彼の名誉にわずかでも傷はつけたくはない。
    (リンク!リンク!)
     心の中で、彼に祈り、きゅっと新緑の瞳を閉じる。心の中で、後悔と彼を信じる気持ちが綯い交ぜとなって、息ができない。
    しかし、無常にも両開きの城門が擦れて、ぶつかる音が響く。
    (ごめんなさい……リンク)
     その時、ゼルダの耳にわずかに馬の蹄の音が聞こえてきた。
    目を開いて、ぱっと顔をあげる。すると、城壁の影と夕闇にもはっきりと、見覚えのある栃栗毛の馬が悠々と登ってきた。
    騎乗した者は、見間違いやうのない体躯に、近衛騎士の制服に金の髪。
     ゼルダは小さく声を漏らした。
    (女神よ、感謝いたします)
     声が届いたはずもない。
    しかし、三の丸を目前にして、リンクがゼルダの方を向いた。
    空色の瞳が、すぐに自分をとらえたのをはっきりと感じた。それがすぐに驚きに見開かれたのも。
    『私室を出ない』その約束を破り、ゼルダは研究室前の回廊にいたのだ。
    (あっ!)
     ゼルダは、胸の手をつい口元へ。気まずさに、遠くの彼を見つめると、その瞳はすぐに仕方無いとばかりに柔らかく細められた。
     従者が数人、彼に駆け寄り、リンクが馬を預ける。
    馬具から外された荷物を受け取ると、白い革手袋が、それをポンポンと2度軽く叩くのが見えた。お望みの物は、ここにちゃんとありますよ。と、そう教えてくれていた。
     ゼルダは、喜びに微笑んだ。それは望んだ物が手に入ったからだけではない。彼が無事に戻ったからだ。
     彼が一言二言、従者と言葉を交わすと、急ぎ足で三の丸に消えたのを見届けると、ゼルダも裳裾を翻し、回廊を駆た。そして、塔から私室への階段を一目散に駆け下りる。息があがるのすら、喜びに変わる。
     私室の入口。赤の天鵞絨をくぐる彼の顔を思い描きながら。その頬は、まるで花の様に染まり、新緑の瞳は煌めき輝いていた。本人はそれを知るべくもなく、ただ二人を見守る者たちだけが、それを微笑ましく、秘密をそっと胸にしまう事になる。
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