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    🐺蛮族パロの続き。
    この次をどんな形にするかで悩んでる…二人に絡むモブはなるべく出したくない。

    蛮族と姫君4-2太陽が稜線の向こうへ消えようとしている。
    わかたれ時。
    城内はいつもより賑やかだった。
    姫君の私室に蛮族が通される。
    すると、もう暗黙の了解で侍女長が他の侍女達を伴い、静かに退席する。
    着飾った姫君に駆け寄る蛮族。
    「ぜるだ。きれい」
    「ありがとう」
    蛮族抱きしめ、体を擦り付ける。
    首筋に鼻先をよせる。
    「だめよ。崩れてしまいます。おりこうに」
    姫君に抵抗されて、しゅんとしながら、唇とがらせる蛮族。
    「じゃあ『キス』していい?」
    「『キス』?」
    『うん』
    「それは何?」
    「こうする」
    蛮族、姫君を傷つけぬように、頭飾りをずらすと、ちゅっとその唇に自身の唇で触れる。
    腕に触れるだけ。体を離した状態で。
    ぱっと頬を染める姫君。
    蛮族もまた幸せな笑み。
    「なっ、いけません!」
    「だめ、こと?」
    「絶対いけません!」
    「ぜるだ、うれしいのかお」
    ぱっと顔を覆う姫君。
    「かくすだめ」
    手袋に包まれた手の甲。紋がある場所に口づける。
    「っ!だめ!」
    「これおしえる。ぜるだ、いやない」
    「教える?」
    「これ。まだある。ぜるだ、おれすきいうこと」
    「これ……この紋の事?」
    「そう。すきとすき。きえない。まじないから」
    「……」
    手の甲を見つめる姫君。
    言われると、紋がじわりとあたたかい。
    「ぜるだ?」
    「時々、ここがあたたかいと感じます。貴方が言う教えるとは、そのこと?」
    縦に何度も首をふる蛮族。
    「それはあなたの言う……『愛してる』?」
    「そう!そうっ!うれしい!ぜるだ」
    がばっと抱き寄せる。
    「だめです!」
    とがめるが、聞かない蛮族。
    『愛してる。ゼルダ。愛してる。帰ろう。おれを選んで』
    彼の言葉を理解しながら、紋から喜びと想いが熱となって、じわりじわりじわりと、あがり続ける。
    そして姫君の心へと流れ込む。
    溢れそうに、苦しいほどに。
    「リンク!まちなさい!おりこうに!」
    またしてもしゅんとするリンク。今度は唇をとがらせる余裕もない。
    「……今宵の宴では、貴方はお父様の隣に。マスターソードを絶対に忘れないで。服装はあなたらしくそのままで大丈夫。今夜も素敵です」
    そう言って蛮族の装備に触れ、乱れた箇所を整える。
    腕に結ばれた『愛の奉仕のしるし』。姫君の青い袖が緩みないかも確かめる。固く結ばれたそれに安堵する。
    偽りの約定の証。蛮族の求める形で報いる事はできない。
    明日には婚約者と式をあげる姫君。
    彼は自分から『喜びのむくい』を受け取る時、それを喜んでくれるだろうか。その前に信頼を失ってしまうだろうと姫君は思っていた。
    だからこそ、それは蛮族と自分を繋ぐ唯一の物だと信じ、願っていた。
    「すてき?」
    「かっこいい。で、わかりますか?」
    ぱっと顔を明るくする蛮族。
    それを愛しく思いながら、すぐに眉根をよせる姫君。
    「私はお一人、どうしてもお連れしなくてはならない客人がいます」
    「?」
    「私はその人といるので、貴方はおりこうに。お父様の身を守ってください」
    「……わかた」
    「ありがとう」
    「よくできた。ごほうびは?」
    「ご褒美?懐かしい」
    小さく笑う姫君。
    昔、離宮での暮らしの中、言いつけを守ると蛮族の好きな食べ物をあげていた。
    「『キス』いい」
    「えっ?!」
    「『キス』なんていう?ぜるだ?」
    「……く……口づけ……です」
    「くちづけちょーだい。ぜるだ!」
    真っ赤な顔して、蛮族の口を塞ぐ姫君。
    「それをこの部屋で。2人の時以外言ってはなりませんよ」
    「やくそく。おりこうのはなし?」
    「そうです!」
    「する。やくそく。だからごほうび」
    「……それ以外では?リンゴやパンでどうですか?」
    「だめ」
    「……」
    「くちづ──」
    慌てて口を塞ぐ姫君。
    その手をひょいっとよける蛮族。
    「いま、ぜるだだけよ」
    「わかっています。けど、だめ……」
    「ぜるだ。かわいい」
    「なっ!!!」
    ますます真っ赤になる姫君。
    「どうしたの?ぜるだ。おかしい」
    「おかしくありません」
    「むかしちがう」
    「昔?」
    思い当たらず、首をかしげる姫君。
    少し残念そうな蛮族。
    赤い天鵞絨の向こうから侍女長の声。
    「姫様、お時間です」
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