福毒「ドラルク、今日の仕事だが」
「自殺志願君、お菓子食べたくないかい?」
吸血鬼対策部本部長ノースディン──某幼少期からの弟子件直属の部下曰く今日も今日とて性懲りも無く面倒事を言い渡して来そうなクソッたれ歯ブラシヒゲ本部長殿──の声を遮り、吸血鬼対策課隊長であるドラルクは、にこやかに隣にいる美丈夫、吸血鬼自殺志願に声をかけた。
幾らか前に、その場のノリと勢いと言ってしまって差し支えない形でドラルクと同居し始めてからというもの、彼の料理の腕前に文字通りすっかり味を占めてしまった自殺志願は、満面の笑みで良いお返事をする。
「食べたい!」
「そうかいそうかい。他でもない君の希望ならば仕方ない、是非とも聞いてやらねばなるまいな。……というわけで、私は強大な吸血鬼の監視任務という重大な役目がありますのでこれにて」
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