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    いっちょぎ

    色々やらかす腐った大人。
    現在は休暇。に大ハマりして、リゼルさんを愛でつつジルリゼを愛して精ゔんを可愛がっております。

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    いっちょぎ

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    精ゔん。
    いちゃいちゃさせたかった。一瞬、女との絡みがありますので、ご注意くださいね。
    いつかはガッツリ第三者目線の精ゔん書いちゃうもんねー!

    酔う話 イレヴンがこの店を選んだのはたまたまだった。
     この町での行きつけの一つだった。ただそれだけ。
     目立つ看板もなければ人目の付かない半地下にあって、だがどんなツテがあるのか何気に好みにうるさいイレヴンをそれなりに満足させる珍しい酒が置いてあり、そこそこ美味い食事があった。
     イレヴンが所属しているパーティのメンバーと共にこの町へ来たのは依頼の為だった。
     目的の迷宮は少々遠方にある。その為に出来た小さな町は、だがそれ故ここしか留まる場所もない為、迷宮に潜る冒険者でそれなりに潤っているらしい。
     イレヴンがそんな店に入ったのは、無事に依頼の品を迷宮から持ち帰り、夕食を終えた後。深夜と言うには少し早い時間だった。
     誰にも関わらずにひっそりと飲みたい時、これ程鮮やかな色を纏い、華やかで滴るような色香を持っているにもかかわらず、店の隅の席に落ち着いた途端、イレヴンはあっさりと気配を消してしまえる。静かな店内で一人のんびりとグラスの中にある氷を揺らしながら舌の上で酒の味を堪能していれば。
     不意にイレヴンが居る席とは反対側の店の隅。
     そこで何やら呂律の回りきらない高く媚びを含んだ複数の女の声が聞こえた。
     静かな店内に不似合いなそれに口当たりの良いグラスに唇を付けながら眉を寄せて、椅子の背もたれに背を預けるように躯を伸ばしてそちらを見やったイレヴンは、
    「……あ?」
     今度こそ不機嫌そうに眉を寄せた。
     あちらも目立たないように気配を消してはいたのだろうか。
     イレヴンが移動する時、常に影のように付き従っている『精鋭』と呼ばれる複数の手下が数名付いてきている。
     今回も「面白そうだから」と刺激を求めて付いてきている中、そこに居たのは分厚い前髪に目元を覆い隠した男。どうやら気持ち良く酔っ払っているらしい二人連れの女に絡まれ、困ったように首を竦めていた。
     一見すると地味に見え、ともすればお人好しにも見えるこの男の性質を正しく掴んでいる者は、恐らく居ないだろうとイレヴンは思っている。イレヴン自身も男を正しく理解しているかと問われれば、首を横に振るしかない。
     ただ、嗅覚の鋭い、後腐れのない一夜の遊びに慣れた女にとっては、この男は大層魅力的に見えるらしい。
     それこそ刺激を求める女にとって、地味な雰囲気に似合わぬ鍛えらえた躯を持つ男の存在は心惹かれるものになるそうだ。
     男がイレヴンと同じこの店を訪れていたのは恐らく偶然だろう。まぁ、遊びたいのであれば好きにすればいいと、イレヴンは寄せた眉を戻すと同時に姿勢も戻して、再びグラスに口を付けたのだけれど。
    「……うるせぇな」
     静かなこの店には不似合いな、媚びた女達の高い声が不愉快だ。
     イレヴンは小さく呟くと、手にしていたグラスをテーブルにとん、と置いて静かに腰を上げる。気遣わし気な店のマスターに笑顔で手を振って、イレヴンはするすると音もなく狭い席の間をすり抜け。
     ……そして。
    「お姉さん。悪ぃんだけど、今夜のこいつの相手、俺なんだ」
     静かに飲みたくてこの店に来たのに、うるさいのに捕まった。
     人目がなければ、あっさりとこのうるさい女達の喉を潰してその辺に転がしていただろうけれど、さすがに店の中で騒ぎは起こせないと、どうしたものかと穏やかな拒絶を繰り返していた男は、不意に慣れた気配が近付く事に気付いて、ハッと顔を上げた。
     それと同時に、背後から抱き付くように回された両腕と、耳元で聞こえる滴るような色気を含んだ声。
     分厚い前髪に覆われた目をちらりと横に向けると、鮮やかな色を纏った長い髪が見えた。
     戸惑う女達に人懐こい笑顔を見せて、イレヴンは男を抱き締めていた手で男の頬から鍛えられた首筋までをゆるりと撫でる。そのセクシャルな指の動きと、とろりと蕩けるように細められた赤い瞳に、女達はぐ、と息を呑んだ。
     鍛えられた男の躯に回された腕。小首を傾げてさらりと流れる、長く鮮やかな赤い髪。蕩けるように細められた赤い瞳と、ぞくぞくするような艶を含んだ声。ともすれば野暮ったく、地味にも見える男に添うように、背後からしなやかな躯を密着させている、色鮮やかで華やかな男。
     一見するとちぐはぐな二人はだが、あまりに自然に密着をしていて、見ている者を落ち着かない心地にさせる。
     今や店中の視線を集めてしまっているが、まるで気にならないかのように男に躯を擦り付けると、イレヴンはそれはそれは人懐こい、無防備にさえ見える無邪気な笑顔を見せた。
    「……だから、今夜は俺に譲ってくんね?」
     自分の持つ魅力や影響力を熟知しているが故の、イレヴンの「おねだり」という名の「命令」だが、女達を含めて誰もそれには気付かなかった。
     女たちは顔を見合わせるとぎこちなく頷いて、あっさりとイレヴンに男を譲ると店を出ていく。その後ろ姿を笑顔で見送って、イレヴンは不意に無言を貫く男の耳をぐい、とばかりに力任せに引っ張った。
    「……痛ぇ」
    「情けねぇな。あれぐらいならあしらえるだろ」
    「うっかり動くと殺しそうだったんス」
     ぼそぼそと呟くような小さな声に、イレヴンは呆れたように肩を竦めて、だが不意に「まぁ、イイか」とにんまりと笑みを浮かべる。
     その笑みに何となく嫌な予感を覚えて「う」と顎を引いた男の正面に立ち、斜め下から覗き込むように男を見上げて、イレヴンは機嫌良く口を開いた。
    「じゃ、このまま俺に付き合え」
    「は?」
     腰のポーチからテーブルに金を置いて、イレヴンは男の腕を掴むと足取り軽く店を出る。大人しくイレヴンに腕を引かれるまま店を出る男を振り返ると、イレヴンは蕩けるような笑みを見せた。
    「今夜のお前の相手は俺だろ?」
     思いがけない台詞に、男は分厚い前髪の奥の目を瞬いて、不意に堪え切れないように小さく噴き出した。
    「あんたが望むなら、幾らでも」


     ―― 一人静かに飲む美味い酒も良いけれど、その酒の心地良い酔いよりも、目の前の男に酔う方がずっと良い。
     口には出さないまま、お互い似たような事を思いながら、二人の姿は夜の闇に溶けるように消えた。
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