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    お茶は緑茶の方が好き

    @nakijo_ocha

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    昔書いたやつで、没にしてたんだけど文字数が多かったから投稿します。BLです

    カヲシン 好きだった
    どう足掻いても、好きだった。
    この気持ちを嘘だと思いたくなくて、唯々君だけを見つめる。
    ありがとう。
    ずっと好きだったよ


    「碇シンジ」

     僕は「はい」と返事をして立ち上がった。

    「悟られないように。通信は夜中の二時、月に二回行う」
    「分かりました」
    「悟られるなよ」

     僕は、白石に残る上司を見てもう一度言う。

    「はい」

     この世界は白石という国と青国、黒国の三つの国で構成されている。
     陸の領土では白石が一番大きいが、海も含めると黒国が一番多い。
     青国の陸の領土は二番目に大きい。そこだけを聞くと白石と黒国の接戦のように見せるが話は違う。
     青国と白石の冷戦中だった。
     黒国はその国民しか発音できない言葉であって、決して「こっこく」だとか「くろぐに」だとかは呼ばない。勝手に他国がそう呼んでいるだけだ。
     白石の諜報員である僕は、敵国の情報を仕入れる為に青国に潜入することになった。
     もっとも、僕の意志ではないが。
     飛行機に乗り込んで、戸籍を偽って青国に来た。自然豊かな空を見て溜息をつく。

    「何で僕が……」

     父親は、白石の軍政府のトップだった。
     その縁があったせいで僕はこの数年間白石の組織にいた。
     通称ネルフ、特攻型と潜入型で分かれている組織だ。
     僕はその潜入型に選ばれた。
     「碇シンジ」、その名前が僕を追い詰めた。
     碇という苗字は覚えやすいらしく、よく「あいつの息子?」と聞かれたものだ。
     そして蔑んだような目で見てくる。
     何でお前みたいなヒョロイ奴が、と。

     そのせいで僕は下手な成績を取ることが出来ず、力がないなりに努力をした。
     努力に努力を重ねた。一番近いテストでは、運動審査で特攻型を含んでも上から数えた方が早く、ネルフ構成員用テストではトップをとっていた。単純な体格差ではやはり特攻型の構成員が勝っているため、どうしても負けてしまうが。

     そして遂にこの時が来た。青国の潜入はトップの成績を収めた者にしか与えられない仕事だった。
     本当は嬉しいはずなのに。通知をもらったときに、つい。
     思ってしまった。
     何で僕が?
     こんなにやりがいのない仕事の為に、自分は頑張っていたのか?

    「碇……シンジくん?」
    「あ、はい」

     視線を上げると、偽装された僕の身分証を持った女性が腰に手を当て、笑っていた。

    「此処はちとばかし厳しいけど」

     僕の肩を叩いて、身分証を差し出した。

    「頑張ってね」

     僕は頷いて、先を歩く。
     青国。
     ネルフに対抗するために組織されたヴィレ。
     ここはネルフとは違い、中学校のような安全な教育がされている。
     教育係の「先生」と構成員の「生徒」。
     現場に出されることはなく、実践形式で学んでいく。無事戦闘権利を取得した生徒のみが白石に対抗する。
     ネルフとはまるで違う。
     僕は担当スタッフに案内されて体育館、教室、寮室を確認した。

    「ここの寮は完全セキュリティなので、窓の外から外部の人間、または女子が来たときには警報が鳴るようになっています」

     中を覗くと二つベッドがあった。

    「女子寮では反対に男子が入ると警報が鳴ります。ので、注意してください」
    「はあ……」

     スタッフはくるりと踵を中心に回転して僕に笑い掛ける。

    「碇さんは入学が遅かったのですが、ちゃんとみんなには事情を話していますし、たった一週間だけの差なので安心してください」
    「……ありがとうございます」

     ドアを閉める直前に机に本が置かれているのを見た。

    「……同室の人って」
    「ああ……、相田ケンスケ君です」

     僕は頭に名前を入れてドアを閉め切る。

    「では、こちらに」
    「ありがとうございます……、あの、これから僕は」
    「訓練ですね。寮を出たすぐに訓練室があるので、対人訓練を見学してください」
    「対人訓練……?」

     寮を出て、訓練室へと向かう。
     微かな青色が混じった白いタイルが床を敷き詰めていた。
     ガツン、と何かがぶつかる音が訓練室から漏れている。
     スタッフがドアを開ける。
     中は柔道室のような畳になっていて、赤い円に入っている二人を囲むようにして生徒が自由に座っている。
     ピタリと音が止んだ。
     視線が一斉に僕を向いて、僕は思わずたじろぐ。大丈夫、みんな僕の正体に気付かない。大丈夫。悟られないように、不審に思われないように自然に歩いた。

    「この子は碇シンジ君です。皆さん、よろしくお願いします」

     担当スタッフは「では」とお辞儀をして去っていく。背後のドアがピシャリと閉じられた。僕は取り残された訓練室内で生徒と目を合わせる。
     思わず視線を下げて、手を前で触った。

    「碇シンジです……」

     無言が続いた。緊張しい性格が相まって顔に熱が集まるのを感じる。
     何で僕がこんなことをしなければならないんだろう。

    「おーい、ワシらの自己紹介は?」

     男の子が手を上げて声を出した。顔を上げてその声の主を見ると、「ワイは鈴原トウジや!トウジって呼んでくれ。まあ、よろしゅう頼んます!」。そして隣にいた男の子の肩を抱いて「コッチは相田ケンスケ!」と白い歯を見せた。眼鏡をかけた男の子は片手をゆるゆると上げて「よろしく……」と苦笑する。

    「君がケンスケ君」
    「や、ケンスケでいいよ」

     二人の近くに行こうとすると、竹刀が飛んで来た。頭を引いて避ける。壁にガツン!と当たって落ちた。足が二歩、三歩下がって視線が竹刀に向く。一体何なんだ。
     強気そうな女子が竹刀を振りかぶった姿勢から、垂れた髪を肩の後ろに持っていく。目元に刻まれた皺が僕を威嚇していた。

    「碇シンジね、碇……」
    「式波さん、止めなさい」

     竹刀を投げた式波と呼ばれた少女は、彼女を止めた先生を睨んだ。身分証を確認した女性だった。この人の名前は確か……ミサトさんだ。ミサト先生が竹刀を持ち上げると、式波に渡そうとした。

    「嫌よ。受け取って欲しいならそこのバカに渡しなさい」
    「こら、言い方ってもんがあるでしょう」

     僕はミサト先生から竹刀を取って、式波の前まで歩いた。
     式波の相手をしていたらしい女子が汗を拭いて、「まぁまぁ、仲良くしようよ」と止めに入る。

    「碇シンジね……、っふん。どうせ怪我して入学が遅れたなんて嘘でしょ。自分を持ち上げたいのね?」
    「姫〜、止めなよぉ」

     僕が竹刀を差し出すと、それを捨てるように受け取りグイと近付いた。「覚えてなさいよ」。

    「碇!ほらこっち来い」

     腕を引っ張られ、僕はトウジの隣に尻餅をつく。

    「はい!じゃあ中断しちゃったけど再開するよー」

     ミサト先生がパンパンと手を叩いて手合わせを再開させる。
     恨めしそうな目をした式波は、面を被って視線を逸らした。

    「災難だったなぁ。なんや、アイツ血気盛んだって噂がもっぱらだから、しゃあないのも分かるんやけど」
    「噂でなら碇の方も負けてないよ」
    「っ……え?」
     ケンスケが耳打ちした。「ここは編入者は受け入れないので有名なんだ」。

    「キミは理由があって試験を受けられなかったんだろ?それじゃ来年、が当たり前なんだよ」
    「いや、僕一日だけ受けたんだけど、残り二日で高熱を出しちゃって」
    「それだ」

     ケンスケが右手を口許にもっていき、左手の人差し指を立てる。

    「一日目の試験は学力検査だろ。きっと碇の点数がぶっちぎりだったんだ。それくらいじゃないと入試を最後まで受けさせるなんてないからな」
    「……、そ、そんなぁ」
    「まあ誇ったらええやろ!」

     トウジが僕の背中をバンと勢いよく叩いて、僕は「うへ」と間抜けな声を出した。


     ケンスケはビデオを手に生徒と何かを取るようだった。風呂上がりのポカポカした顔で寮室のドアを閉める。

    「んじゃ、今から行ってくるから」
    「んん……、いってらっしゃい」

     僕は肌にピッタリとついた服を引っ張る。ここの生徒は全員この服らしい。首元まで覆われたゴム製の服は少しだけ恥ずかしかった。ズボンはちゃんとした布だが、それでも半ズボンなため、幼さが前面に出る。

    「んん〜〜……」

     ベッドで寝返りをうち、カーテン越しに見える月を見ていた。
     ふ、と月が見えなくなる。飛行機でも通ったのかな、と思っていた頃にカーテンが空気を含んで揺れた。バサリと心地良い音がする。

    「窓開けてたっけ」

     いや、開けてない。僕は身を凍らせてベッドに膝を着いた。

    「誰だ」
    「そんな警戒する?」

     窓に足を掛けて、相手は僕を見ていた。風に吹かれたアッシュグレーが揺れた。表情は逆光で見えなかったが、声から自分と歳がそう変わらないように思えた。

    「ちょっとごめんね」

     その男は部屋に入って来て首を触った。
     ____何で警報が鳴らないんだ?!
     抵抗しようと男を殴ると、その拳を掴まれて腕を捻られた。ベッドに顎をつける形になって身動きが取れなくなる。

    「おい!」
    「動かないでよ。痛くなるでしょ」

     脚で蹴ったが、避けられる。男は僕の背中に乗り上げた。
     僕は腕を伸ばして緊急ブザーを鳴らす。けたたましい音が鳴り響いたが、男は気にする様子も見せずに僕を仰向けにさせた。警報がブツリと切れる。

    「……やっ、やめろ」

     腕を上で纏められ、服と腹の間を手が這った。ゾワッと鳥肌が立つ。「やめろ」、声が若干掠れた。

    「さ、叫ぶぞ。これ以上してみろ……」
    「うるさいなぁ」

     赤い目が僕を捉える。その目に一瞬精気を奪われて、手の力が抜けた。顔が近付いて、口を塞がれた。抵抗しようとすると男の腕の力が強まる。

    「んー!んー!」

     キスの音だけが響く。涙が頬を伝った。何の為にされているのかが分からなかった。このまま先までされるのではないか。不安を不安が覆い、更に涙が溢れた。男はキスを止めると、舌をチロと出して僕の涙を舐める。

    「静かになった?」

     服を存分に弄った手はアッサリと引いた。僕の両手から手を離し、ベッドから降りる。

    「本当に手が掛かるね」

     男が口の端に垂れた涎を拭ったとき、外でドタバタと音がした。

    「大丈夫、シンジ君!」

     ドアが開き、ミサト先生が中を覗く。僕は何も悪いことをしていないのに何だか悪い気がして、口をゴシゴシと擦って衣服を正した。

    「あの……、男が入って来て」

     ミサト先生は男を見るなり「なあんだ」とホッとした顔になった。

    「その人の紹介まだだったわね。生徒の見本役、委員長みたいなもんよ」

     男は視線を僕に向けたまま、口を指の腹で拭う。

    「どうも。渚カヲルです」

     僕はギョッとした顔をして、壁の端に寄った。

    「シンジ君のクラス担当だから、明日から会うことになるわよ」

     ミサト先生は渚、と呼ばれた男を連れて外に出た。
     ドアが閉められると同時に僕は悪態をついた。指で唇に触れる。

    「初めてだったのに」

     それがあんな男に奪われるなんて。


    &&


    「渚先輩とぉ?!」

     食堂に向かっていた生徒が僕たちを見た。僕は慌てて頭を下げる。

    「ちょっ、ちょっと声が……」

     ケンスケは叫んだ口を手で覆った。

    「そ、そんな」
    「あの人って、男が好きなの?」
    「はあ?!」

     くぐもった声が響いた。僕は焦って両手をケンスケの手の上に置く。

    「うるさいって」
    「ねえ」

     別の声が背後からする。ケンスケの顔が真っ青になった。
     僕も聴き覚えのある声にブリキ人形の如く後ろを向く。

    「あと十五分で集合あるけど、間に合うの?」

     昨日の男、渚カヲルが立っていた。

    「はい! すみません!」

     ケンスケは姿勢を正すと、僕の腕を取って食堂へ走る。しかし何かに掴まれて、僕の腕が糸を張ったように伸びた。ケンスケがつんのめって睨み顔で僕を見る。

    「碇! おい……って、お邪魔でした?」

     が、すぐに遠慮顔に変わる。僕は目で「助けて」と言うも、無視された。それもそうだ。僕の手を掴んでいるのは他でもない、渚カヲルなのだから。怖くて後ろを見れない。
     ケンスケが、ぱっと手を離す。ケンスケに手を伸ばして助けを求めるが、後ろ手を引かれて元の位置に戻る。

    「あのさ」

     ウッ、と詰まって。仕方なく後ろを見た。

    「朝ご飯食べた?」

     食堂に向かう所をお前が引き留めたんだろ、とジト目で見るも、渚カヲルはどこ吹く風で僕を見ていた。

    「食べてないなら一緒に食べようよ」
    「あの……手」

     僕は自分の掴まれた手を見る。

    「え?何、もう食べたの」
    「いえ……」
    「んじゃ一緒に食べようよ」

     返事を渋った僕の手を引っ張って食堂の近くにあったドアを開けた。僕は思わず立ち止まる。

    「そこ、関係者オンリーって」

     渚カヲルは首を傾げて「関係者でしょ?」と僕の手を引いた。
     背後でドアが閉まる。渚カヲルは前を向くとズンズンと歩く。

    「あとさ、タメでいいよ。歳の差あんまないし」
    「わ、分かった……」

     部屋の隅まで歩くと、もう一つのドアを開けて部屋に足を踏み入れた。
     部屋の中には大きな長机があり、その上には溢れんばかりの料理が載っていた。

    「……うわ」
    「好きなの食べて良いよ」

     渚は壁に掛けたフォークを取って皿を持つ。適当にサラダを刺していき、口に含んだ。
     僕は不思議な気持ちで箸を取る。委員長に近いって……これくらい地位が高いんだな。

    「ん」
    「……は?」

     渚は僕に皿を突き出している。僕は皿と渚を交互に見る。

    「食べていいよ」
    「……いや、いらないけど」

     皿に残った寂しげなサラダがくたびれている。
     僕がそう言うと、渚はムッとして更に突き出した。

    「僕が良いって言ってんじゃん」

     知らないけど。

    「あー、もう! 何で分かんないの?」
    「いや、それが迷惑というか……」

     その瞬間、地が揺れた。
     壁が呼応して騒ぎ立てる。棚に置いていた皿がガチャガチャと音を立てた。僕は体制を崩して転びそうになる。が、それを渚が腕を掴んで防いでくれた。
     渚が顔を上げて言う。

    「使徒だ」


    &&&


    「戦闘要員、配置につけ!」

     渚は僕の腕を掴んだまま、食事をやめると管理室に入った。暗闇の目前に巨大なパネルがあり、構内を監視していた。大人たちが渚の為に道を開いて避ける。

    「状況は」
    「使徒が南方向から接近中です」

     渚はマイクを掴んで放送を流す。

    「目標はグループAで殲滅! 救助の方グループCで対応して」

     大人が近づいて姿勢を落とす。

    「渚司令、使徒は二体です」

     渚は舌打ちをすると、近くに備えられた青いボタンを拳で押す。ビー、ビー、と音が響いた。
     僕は場違いな気がして手を離そうとする。しかし渚の手が強まってそれは叶わなかった。

    「重機はなるべく避けろ。ミサイルを落とせ、いいな?!」

     渚は別の部屋に声を繋げた。パネルの画面も切り替わる。
     ミサト先生が立っていた。監視カメラに目を向けて、渚に指示を仰いでいる。

    「そっちはどう」
    「エヴァに頼るべきかと」
    「手の内を明かすには早い。こっちは無力だと示すべきだ」
    「……ですが、使徒を倒すには」

     渚は掌で口許を覆うと、眉を顰めた。

    「……誰が対応できる」
    「アスカに適応反応ありました」
    「よし、いけ」

     ミサト先生は頷くと、監視カメラから外れた。
     画面が変わる。
     暴れ狂う巨大に、数分して現れた人型機械が攻撃を仕掛けた。
     使徒は二人で二人のデメリットを庇うように腕を伸ばす。人型機械はその腕をナイフで斬り、姿勢を落として走り出した。回し蹴りをして一体の頭を落とす。もう一体が人型機械にゴムのように伸びる腕を巻きつかせる。
     それをものともせず頭を落とした一体の胸を貫き、すぐにもう一体の腕も落とした。腕を落とされた使徒は咆哮を上げる。人型機械は使徒の頭を両手で掴むと回転させて千切り、さっきと同じように胸を貫いた。

     呆気なく2体は崩れ落ち、アスカが入っているであろう機体が血の雨を浴びる。


    &&&


    「白石は我ら青国に敵を送ります。完全無人戦闘機で、私たちはこれを『使徒』と呼びます」

     僕は初めて、自分の国がどのようなことをしているかを知った。ずっと青国から攻撃を仕掛けているのかと思っていた。
     ミサト先生は続けて話す。

    「使徒を倒すには人造人間『エヴァンゲリオン』、通称『エヴァ』に乗る必要があります。エヴァに乗るには戦闘権利を獲得する必要がありますが、その権利を得ているのは、この学校でも数名のみです」

     僕はアスカの横顔を盗み見る。

    「戦闘権利を獲得する為には、いつくかの試験を受けてもらいます。これらは強制ではありませんので」

     そんなに凄かったんだ。僕は教科書に載ってる写真を見る。
     エヴァの機体が僕を見ていた。

    「まあ、取り敢えず優秀な成績を収めている生徒には上から声が掛かると思うけど……やりたくなかったら断っても良いのよ、ということ」

     チャイムが鳴る。ミサト先生が教科書を置くと、「この後は技術鍛錬だからパソコン室ね」と教室を出て行った。

    「碇!」

     背中をバンと叩かれ、「ウッ」と声が漏れる。トウジだった。

    「一緒に行こか!」
    「分かったよ」
    「シンジくん」

     僕は渚の声に振り向いた。

    「あとで来て欲しいんだけど」
    「……ああ、うん。いつ?」
    「授業終わったら」
    「分かった」

     渚は僕の返事に頷くと、さっさと教室を出て行ってしまった。
     それを見ていたトウジが居心地悪そうに腕を摩る。

    「まだ慣れんな、渚っちゅう奴」
    「……そう?」
    「碇は初日を知らんから言えるんや!」

     トウジ曰く、入学式の次の日、つまり授業初日に酷い目にあったらしい。クラス全員に向かって「今日から担当する渚カヲルです」とにこやかに笑ったあと、対人訓練で全員を薙ぎ倒したとか。
     それ以来誰も渚に近寄らなくなったらしい。

     二人でパソコン室に向かった。ドアを開ける。

     渚カヲルが教団に立っていた。

     トウジは崩れ落ち、後ろから走って来たケンスケは滑り落ちた。


    &&&


    「シンジ君、」

     上を向くと、渚が僕のパソコンを覗き込んでいた。

    「ここはBパターンを使うべきだ」

     機械工学のマニュアルではここはCパターンだ。
     逆らう理由もないから大人しくBパターンの段取りを組む。
    Tap to full screen .Repost is prohibited

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    manju_maa

    PROGRESS※書きたいというか書いて楽になりたかったところだけ書いた完全な進捗。「」ないです。

    クライマックスみたいな流れだけど高校生編ド序盤の展開なのですがド迷走しすぎて頭抱えた。この僕っ子誰……!?
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    先導する暁さんがポケットから取り出した鍵を差し、扉を開けて中に入る。
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    しかし、そこに誰かが生活している気配はなかった。

    「ここ、誰かの部屋?」
    「ああ。今日から吾郎が住む部屋だ」
    「…え?」

    あまりにも当たり前のように言うから、聞き流しそうになった。

    「どういうこと?引っ越すの?それにしては…」

    狭すぎる。
    初めて会った日、彼は僕が自分と同じくらいの高さまで背が伸びると言っていた。実際に今の身長は暁さんと大差ない。そんな180cm間近の男二人が暮らす部屋にしてはこの間取はあまりにも無理がある。
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