ごはんを食べよう① じぶじぶと音を立てて目玉焼きが焼けていく。
卵の焼ける匂い、油の香りが部屋に広がって、イソップはそこでぽん、と目玉焼きをひっくり返した。
イライの好みは固焼きの両面焼きだから、イソップもそれに合わせる。
二枚同時に焼いてしまった方が楽だからだ。
火が通り切った目玉焼きは、最後に少し火を強めて表面を揚げ焼きにする。白身がカリカリして美味しくなる。以前、イライにこれを出したら目を輝かせて喜んできたから、それから目玉焼きを作る時のイソップのルーティンになった。
「イソップくん。おはよう」
「おはよう、イライ」
眠たそうな目をこすりながら、榛色の髪を揺らしてイライが降りてきた。
ずいぶん寝汚い彼は、しかし朝ごはんの香りでスッキリ起きられるらしい。食い意地が張っているというか、なんというか……そういうところがかわいいのだけれど。
イソップは皿に焼きたてのフリップフライドエッグを盛った。カリカリに焼いておいたベーコンを添えて、彩に洗って水気をとったミニトマトを飾る。
と、時間を調整していたからこのタイミングでトースターがチン、と音を立てる。
狐色より少し薄い色に染まった食パンを木皿に載せる。
テーブルに置く時にバターを添えてやって、昨日イライが作っていた苺のジャムを……また砂糖をケチったらしい、とろとろというよりサラサラだ……というのをさておき、その瓶もパンの隣に添えてやる。
カトラリーを用意していると、イライが紅茶を淹れているのが見えた。
「ミルクは入れるかい?」
「はい、お願いします」
「砂糖は?」
「スプーン一杯」
「了解」
後ろから、茶葉を蒸らしているいい匂いがする。イライが冷蔵庫から牛乳パックを取り出して、マグカップに注ぎ、電子レンジにかけている。
牛乳を温めるときはじっと見ていないとダメなのだ。吹きこぼれるから。
ここにやってきたばかりの時、イソップもイライもそんなことを知らなかった。
それを背にしてテーブルに全ての皿を揃え、カトラリーを並べ、席に着く。
まもなくイライが2人分のマグカップを持ってきてくれた。
「ありがとうございます、イライ」
「君と二人で飲むものだから」
はにかむイライがふっと目を細める。
イソップも微笑んでイライが席につくのを待った。
「それでは、食べましょうか」
「うん」
「いただきます」
「いただきます」