ごはんを食べよう⑦ イライはどこか遠くを見るような目をして、公園で行き交う人々を見やった。
「たしかに、ここは似ているものね」
頷くと、イライはイソップに視線をよこした。
細められた目は笑っているように見えた。
けれど、イソップにはイライが本当のところどう思っているのかはわからなかった。
どれだけイライが普通にしていても、イライをここに来させてしまったという気持ちがどうしても消えない。
だってここにきた時、イソップはイライと一緒にいられることを喜んだのだ。
他の何のしがらみもない、全く知らない国で、時代で、イライと生きられて嬉しいと、そう思ってしまったのだ。イライを婚約者から、願いから無理に引き離したのはイソップだ。
この胸を占める罪悪感がいつか消える日は来るのだろうか。
ふいに、イライが何かを見つけて駆け出した。
荘園で鍛えた足だ。イライは足が速い。
それはイソップも同じだけれど。
「ソフトクリームだって! 一緒に食べよう」
「イライ、ちょっと待って……」
イライが見つけたのは、ソフトクリームを売るこじんまりとした屋台だった。
目隠しをしていない目をキラキラと輝かせてカップにするかコーンにするかを真剣に選ぶイライは、失った何かを取り戻しているように無邪気だった。
財布から硬貨を二枚取り出して屋台の店主に渡す。
イライはコーン、イソップはカップで、小さなスプーンをつけてもらった。
へにょりと折れたソフトクリームの先端にかぶりついて、イライはふふ、と笑う。
「ソフトクリームの先を一口で食べるの、すごく贅沢な気がするよ」
「……そう」
そんなふうに思ったことはなかった。イソップはソフトクリームの先端を掬い、一口で食べる。
口の中にすうっと溶ける甘みと、ミルクのなめらかさが心地いい。先端は柔らかいから、一瞬で消えてしまった。
「どう?」
「たしかに、贅沢、だと思う」