ごはんを食べよう⑩「私、鍋焼きうどんにするよ」
「では僕は天ざるうどんで」
注文して少しすると注文したものがそれぞれ運ばれてくる。
イライの鍋焼きうどんには大きな海老天が二本も乗っており、これは天ぷらをわけないでよかったかもしれないな、なんて思う。
大事そうに天ぷらを横に避けてうどんを啜るイライを見ながら、自分もざるうどんをもむもむと咀嚼する。
啜るというのがどうにもうまく行かない。文化の違いだろうか。慣れなくて上手く啜れないのだ。その点、イライは柔軟なのか、すぐに順応した。今は蕎麦もラーメンもずるずる啜って食べている。
ざるうどんのつけ汁は少し甘口だった。
鰹出汁が良く効いており、醤油の塩気と相まって濃く、うどんとよく合う。
薬味のネギも薄く切られて、わさびは良いものなのかツンとした辛みに反して後口は甘みがある。
「……おいしい」
「うん、うん、おいしいね」
鍋焼きうどんは見た目通り熱いらしく、イライは顔を赤らめてふうふうしながらうどんを食べている。
「そうして、ふと気づいたように言った」
「イソップくん、海老天食べないの?」
「え、ああ」
イソップは指し示された自分のトレーに視線を落とした。
大葉の天ぷらしか食べていなかった。
せっかくの海老天はすっかり冷めている。
「イライが、食べたいかと思って。でも、冷めてしまいましたね」