波の花 こんな夢を見た。
その夢の中での季節はぎらつく夏で、夏油傑はなぜか袈裟を着た殉教者だった。足元は泡立つ浅い海辺であり、砂浜の転がる白い波の花が十字架にかされる彼の美しい身体を汚していた。そして彼はついにエリエリレマサバクタニとつぶやく。神よ、どうして私をお見捨てになったのですか、と。俺はそこでこれは夢だと気づいた。それほどに真に迫ったものだったから、勘違いしそうだったのだ。考えてみればキリスト教徒は袈裟なんて着ない。これは多分、きっと昨日二人で見た映画を夢に投影したのだろう。キリストが苦しむばかりの映画を見て、俺は恋人を脳内で苦しめようとしたのだろう。昨日ちょっと喧嘩をしたし。俺はそう思い、いやそう思ったところで、目が覚めたのだった。
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