いったいどうしてこんなことになったのか、未だにもって腑に落ちない。追い立てられるように最低限の身支度をして最低限のメンバーで足を踏み入れたのは、情報もヒトの目も届かない山奥の崩れかけた旧館だ。
壊れ傾く鉄の門をくぐればその先には蔦の這う古ぼけた館が見える。門の先へと促す石畳は乱れ所々に穴が空き、砂利と雑草にまみれている。車を降りて踏みしめた古い敷石がぱしりとなる。まるで行く先を拒むように思え、歩みを止めれば咎めるようにぱしりと鳴って、意を決して先を進めばやはりぱしりぱしりと鳴って足元を急かす。
動きを見張る気配にぞわり背筋が震えた九井の歩みが止まる。それに気が付いたのは、ひとつ前を歩く鶴蝶だ。「どうした」と九井を窺ってくる。鶴蝶の低い声にはっとして、窄めた肩の強張りが解けて九井に冷静が帰ってくる。
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