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    misano414

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    misano414

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    オリーブタウンより、イオユカ。
     今日誕生日を迎えられた調味料の方へ。途中だけどこれだけでも一本の話にはなってます。

     完成版はリアル今日中に書き上げます。

     ある日、起きるなりコロポンに呼ばれたユカは、不思議な場所でとんでもない授かりものをした。

    (どうしよう、どうしよう)
     コロポンの力で牧場に戻ってきたユカの頭を占めるのは、ただひたすらにその言葉だけだ。
     ユカは牧場主である。祖父の牧場を受け継ぐためにオリーブタウンに来て、最愛の伴侶を得て、今は南の牧場で幸せに過ごしている。だがその伴侶こそが、今最大の問題になってユカの身に降りかかっている。
     腕の中には、おくるみに包まれて、すやすやと眠る赤子。
     そう、赤子である。
    (ああもうユカの馬鹿!お人良し!!)
     罪のない赤子の寝顔を見つめながら、ユカは心の中でじたばたともがく。
     この赤子を育ててほしい、なんてコロポンに言われ、何故断らなかったのか。自分はいつだってそうだ。誰かから何かを頼まれたら、まず断れない。この赤子を、どうやって伴侶に説明したらいいのだ。そもそも、コロポンのことだって何も話していない。精霊さまのことだって、彼は知らない。ユカ以外の人間の目に見えない存在のことを、どう話せばいいのか。
     と、赤子がもぞもぞと動く。思わず固まるユカの前で、赤子はゆっくりと目を開いた。
    (私とおんなじ色だ……)
     オリーブのような、綺麗な緑色の瞳。そういえば、髪は伴侶と同じぬば玉で。
    「か、かわいい……」
     お腹を痛めて産んだ子ではないけれど、というかそもそもユカと伴侶の子ではないけれど。
    「ふぇ」
     赤子は、小さく声を出した。そのまま、泣き始める。その声を聞きつけた伴侶が、自宅から出てきた。
    「……ユカ?その赤子は?」
     何も問題が解決しないままに、見られてしまった。
     ユカは心を決めた。
    「あのね、イオリ。驚かないでほしいんだけど……授かっちゃったの、この子」
    「そなたの子ではない、のか?」
    「私の赤ちゃんじゃないけど……」
     結婚して季節が二つ、そういう営みもしているけれど、一向に結果は出ず……と、それはどうでもいいのだとユカは首を振る。怪訝そうな顔のイオリに、駄目で元々、説明を試みる。牧場の敷地に昔から住んでいるコロポンという存在、彼らに助けられ、彼らを助けながら牧場経営をしてきたこと、そして北の祠に住まう精霊さまのこと。イオリはそれらをすべて黙って聞いていた。馬鹿にするでも驚くでもなく。
    「…………」
     どう答えるべきか言葉を探しているのだろうイオリの前で、また、赤子が、ふぇ、と泣く。なんだかイオリのところに行きたがっているように見えたから、ユカは、その子をさっと差し出した。イオリはその子を、当たり前のように受け取ると、腕の中にそっとおし抱く。
    「……名を決めねばなるまい。そも、この赤子は男なのか、おなごなのか」
     そして、ふっ、と笑うのだ。
    「なに、わしの故郷では貰い子などよくあること。コロポンとやらが何故、そなたにこの子を預けたかは判らぬが、せっかくだ、我らが子として迎え入れようではないか」
     話しながら、イオリの顔が何の屈託もない笑顔に変わっていく。それを見ていると、ユカの頭を占めていた「どうしよう」の言葉が、少しずつ消えていく。そう、何も心配ないのだ。イオリは、この子を受け入れた。ならば、自分も受け入れるべきだ。何より、イオリと同じ色の髪、自分と同じ色の瞳の赤子なんて、運命としか思えない授かり子ではないか。
    「うん、そうだね」
     でも、とユカは付け足す。
    「まずは、朝ご飯にしよう!」
    「うむ!」
     イオリが頷くのに合わせ、彼の腕の中の赤子が、にへら、と笑った気がした。
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    koyubikitta

    DOODLE一緒にいても何とも思わないけど一緒にいなかったらなんとなく不安になる夜帳と比鷺
    #お題ガチャ #男ふたりの色んなシーン https://odaibako.net/gacha/1739?share=tw

    早野の夜鷺さんへ贈るタイトルお題は、『書を捨てよ、此処を発とう』 です。
    #shindanmaker #同人タイトルお題ったー
    https://shindanmaker.com/566033
     浪磯の部屋を引き払って別の部屋を借りる予定だと聞いたのは、その部屋を明け渡すほんの数日前の事だった。というかつまり、今日初めて知った。
     萬燈夜帳が契約している部屋はいくつか存在しており、浪磯にあるマンションの一室もそうだった。バルコニーから海が見えるその部屋に、比鷺は何度か足を運んだ。山ほど本やCDがあるんだろうと思ったが、それほど物はなかった。当然だ。彼の自宅は別にあるのだから。広くてシンプルなのに殺風景ではない、趣味の良い部屋だと思った。
     良い風じゃん、日当たりも良さそう、トマトでも育てれば? なんていい加減なことを言いながら不思議な気分になったのをよく覚えている。出会ったばかりの頃はずっと萬燈に怯えていた。今は……今はどうだろう? 怯えたって仕方がない相手だとは思う。怖い部分もあるし、可愛い部分もある。人間らしいな、と思うときも人間らしくないな、と思うときもある。まあだから、つまり、慣れたんだろう。慣れた比鷺はふかふかのソファに寝そべってテレビで洋画を見たりもした。自分が介入できない映像を二時間も見続けるのは大変だな、と思って、次はあまり使ってないゲーム機を持ち込んだ。萬燈と対戦して、勝ったり負けたりする。……まあ、トータルでは俺が勝ったけどね。
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