【獄空】分かれ道歩幅を合わせて歩くのがいつの間にか癖になっていた。
気にとめずに何時ものように歩いていた時に何食わない顔で俺の歩幅に付いてこようと必死に歩いてる姿も可愛かったな。と思い出に浸れるぐらいには。
事務所から寺までの道すがらそんな事を考えていると分かれ道が近い事に気がつく。
(さてと、そろそろか)
これも癖になっていること。
分かれ道が近づくとこいつは気づかれないように歩幅を狭める。
(そんな事をするぐらいなら素直に送られとけば良いのによ)
何度も寺まで送ると言っても聞きゃしねぇ。何を気にしてるか知らねぇが、そんな所も可愛いとすら思ってる俺も大概か。
そして、分かれ道までの数分のゆっくりとした時間に愛されてる事を実感して幸せを噛み締める。
(別れが寂しいのはお前だけじゃない)
何時もの分かれ道。
もう少しだけ一緒に居たいと言えない変わりに抱きしめる。
「じゃあな。まっすぐ帰れよ」
「わかっとるわ」
離れていく温もりの背中を見送り帰路に着く。
何時か分かれ道じゃなく一緒に玄関をくぐれる日がくることを思いながら。
終