Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    まちこ

    twst/ジャミ監が好き rkrn/di先生が熱い 好き勝手書き散らす場所にします みんな幸せになれ

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 53

    まちこ

    ☆quiet follow

    一年生とスカラビアと監督生とお箸の話 ジャミ監

    お箸という存在そのものが無さそうだよね

    #ジャミ監
    jamiAuditor

    「ハシ?」



     食堂での昼食の時間、「食べ物がおいしい世界でよかった」と呟いたことをきっかけに、その場にいたみんなが異世界の食事情に興味を持った。異世界、というよりも日本の食文化しか伝えることができない私は、とりあえず食器から違うことを伝える。スプーンやフォークだって使うけど基本はお箸を使うことを教えれば、みんな首をひねって頭の上にたくさんのハテナを飛ばした。



    「なにそれ、どういうの?」

    「・・・二本の細い棒」

    「棒!?」

    「え、どうやって、食べるの・・・?」

    「挟んで食べるの」

    「は、挟む?」



     みんなの頭の上のハテナの数はどんどん増えて、ついにエースが私を疑い始めた。そんなものでご飯が食べられるわけがないと。



    「本当だよ」

    「じゃあ証拠見せろよ」

    「お箸がないのに使えないでしょ・・・」



     ・・・しょうがない。



    「誰かペン貸して。二本」

    「ん、これでいいか?」



     誰より早く、そして快く差しだしてくれたジャックにお礼を言って私は久しぶりに二本のボールペンを指に挟んだ。懐かしい持ち方に小さく感動をしながらボールペンのペン先をかちかちと鳴らす。起きた歓声にお箸の持ち方を両親に叩きこまれてよかったと初めて思った。



    「え、どうなってんだこれ」

    「器用だな・・・」

    「私の国ではこれが当たり前だよ」

    「・・・そんぐらい俺でもできるもんね!」



     右手に持っていたジャックのボールペンをひったくったエースは私の見様見真似でボールペンを持ってみたけど、ペン先はクロスして先と先がきれいに合わない。奮闘するものの指がぎこちなく開いたりボールペンが転がり落ちたりと散々だった。



    「はあ~!?どうなってるわけ!?」

    「僕も、やりたい!」



     手を上げて立候補したエペルにボールペンを投げやりで渡したエースは少しだけ不貞腐れている。手先が器用がゆえに普段から不器用の化身かよ!といじり続けている私に負けたのが悔しいんだろう。



    「こ、こう・・・こ・・・」

    「違う違う、まず下をこう・・・」

    「っ~~~・・・んがー!でぎねぇ!!」

    「ぼ、僕にもやらせてくれ!」



     悔しそうに顔を歪めるエペルから渡されたボールペンを嬉々とした顔で持つデュースは最初の一本を指に乗せるところまでは上手くいった。おお、これは上手くいくかも!と期待したのもつかの間、上の一本をどうしても支えきれずころころテーブルに転がしてしまう。



    「・・・もう一膳お箸があればなあ」

    「お前ら何してるんだ?」



     がっくり肩を落として落ち込むデュースの後ろから、からっと明るい声が聞こえてきた。全員が顔を上げればそこにはカリム先輩とジャミル先輩が二人そろって立っている。手には食事が持たれていてどうやら今から昼食らしい。



    「ユウがいた世界の食器の持ち方を教えてもらってました・・・」



     諦めたのかジャックにボールペンを返して地を這う低い声を出すデュースを見下ろして二人は首をかしげた。

     事の発端を簡単に説明したジャックの隣に座ったジャミル先輩と、私の隣に座ったカリム先輩は真逆の反応を見せた。興味なさそうに食事を始めたのはもちろんジャミル先輩、興味を持って顔を覗き込んできたのはカリム先輩。



    「ユウのいた世界では棒で飯を食うのか!」

    「まあ、そう、ですね・・・」



     間違ってはないけど言い方がざっくりしすぎてて苦笑いをこぼす。



    「あーあ、俺も使ってみたいなあ」

    「じゃあ俺のボールペン使いますか?さっきまでみんなこれで・・・」

    「たかが二本の棒、出せもしないのか?」



     ぱちん、と指が鳴ってころんと私の手元に転がったのは普段使っているものとは少しばかり形は違うけど、お箸だった。六人の視線は一斉にジャミル先輩に向けられて、それでも先輩は平然と食事を続ける。



    「すげぇ!」

    「ありがとうございます!」

    「ユウ、ハシってこんな感じなの?」

    「うん、こんな感じ」



     斜め前に座っているジャミル先輩にお礼を言うと一瞬だけ目が合ってすぐにそらされてしまった。



    「持ち方教えてくれ!」

    「あ、はい!」



     ・・・もちろん、カリム先輩も一発で持てはしなかったけど、今までチャレンジしてきた三人の中では一番近い持ち方だった。お手本を一回見ただけで形に近づけるなんて器用な人だ。



    「こんな難しいもんで飯を食うなんて変わってるな、ユウの世界は」

    「・・・そうですか?生まれたときからそれが当たり前だから・・・」



     改めていろんな人から言われると当たり前に使っていた自分まで不思議になってくる。そうだな、確かになんでお箸の文化があるんだろう・・・



    「ジャミルもやってみろよ!」



     思考が変なところに飛びそうなところをカリム先輩の無邪気な声が引き止める。あからさまにめんどくさそうな顔をしているジャミル先輩に差し出されているお箸。カリム先輩以外全員が絶対にジャミル先輩はこんなことしないだろ、と思っていた。

     ひょい、と取られたお箸は私が持つよりきれいにジャミル先輩の手元に収まって、箸先もクロスすることなく上下に動いていた。



    「・・・す」



     ジャミル先輩が私へお箸を差しだしたのと同時にテーブルが沸いた。



    「すっげええええ!!」

    「え、どうやってやったんですか!?」

    「みんな出来なかったのに・・・」

    「ユウが使ってるところを一回見ただけっすよね?」

    「さすがジャミル!器用だな!」

    「別にこれぐらいどうってことない」



     涼しい顔をしてまた食事を再開したジャミル先輩を称賛する声があまりにも止まず、最終的に全員まとめて「さっさと食べろ!」と怒られてしまった。一旦は静かになったけどそれでもすぐにお箸の話の熱は戻って盛り上がる。これはブームになるかもしれない。もしかしたら誰かが作り出すかも。


     昼食の時間が終わってそれぞれ食器を片付けているとふいにジャミル先輩が隣に並んだ。急にどうしたんだと顔を見る前にそっと耳打ちをされる。



    「これで君のいた世界に行っても問題ないな?」

    「えっ」

    「冗談だよ」



     さっきは一度だって見せなかった満足そうな笑顔を一瞬だけ見せると、すぐにいつもの涼しい顔に戻って離れていった。普段私に冗談なんて言わないのに、しかもあんな冗談、耳が熱くなるじゃないか。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    👏👏💖💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    まちこ

    TRAINING失恋した監督生と慰めるジャミル先輩のジャミ監「迷惑だ」

    「え?」

    「大体異世界から来たなんてそんな話、誰が信じると思う?君と一緒にいると嫌気がさす」

    「どう、し」

    「はっきり言わないと分からないの?」



    “君のことが心底嫌いだよ”



     どうして、この間まで一緒に笑ってくれてたのに。楽しかったのに。本当に、好きだったのに。



     空は真っ青に晴れていて、目が眩むほど太陽が眩しい。日差しは優しく降り注いで程よい熱を制服の黒が吸収する。足取り軽く歩いて行く同級生をぼんやり眺めながら、胸はぎゅうぎゅうに締め付けられた。

     彼は優しかった。グリムを探していたらいつの間にか一人になっていた私に声をかけてくれて、探すのを手伝ってくれた。結局グリムはエースとデュースの場所にいて、何をしていたんだと理不尽に怒られるオチが付いてしまったけど、それを一緒に笑って流してくれたことが嬉しかった。錬金術の授業でペアになったときもあたふたしている私を助けてくれたし、向こうの世界の話をすれば興味を持って聞いてくれて、寂しくなって泣いてしまったときはそっと慰めてくれた。帰りたい、とこぼした私に、帰れるよ、一緒に方法を探そう、なんて、言ってくれ 2018

    まちこ

    TRAINING一年生とスカラビアと監督生とお箸の話 ジャミ監

    お箸という存在そのものが無さそうだよね
    「ハシ?」



     食堂での昼食の時間、「食べ物がおいしい世界でよかった」と呟いたことをきっかけに、その場にいたみんなが異世界の食事情に興味を持った。異世界、というよりも日本の食文化しか伝えることができない私は、とりあえず食器から違うことを伝える。スプーンやフォークだって使うけど基本はお箸を使うことを教えれば、みんな首をひねって頭の上にたくさんのハテナを飛ばした。



    「なにそれ、どういうの?」

    「・・・二本の細い棒」

    「棒!?」

    「え、どうやって、食べるの・・・?」

    「挟んで食べるの」

    「は、挟む?」



     みんなの頭の上のハテナの数はどんどん増えて、ついにエースが私を疑い始めた。そんなものでご飯が食べられるわけがないと。



    「本当だよ」

    「じゃあ証拠見せろよ」

    「お箸がないのに使えないでしょ・・・」



     ・・・しょうがない。



    「誰かペン貸して。二本」

    「ん、これでいいか?」



     誰より早く、そして快く差しだしてくれたジャックにお礼を言って私は久しぶりに二本のボールペンを指に挟んだ。懐かしい持ち方に小さく感動をしながらボールペンのペン先をかちかち 2691

    まちこ

    MOURNINGずっと我慢していた感情が大爆発した監督生と、その監督生にどう接していいか分からなくてやるせないジャミル先輩のジャミ監

    ジャミル先輩好きな人ほど慰めるの下手くそだといいな(願望)
    「魔法も使えないくせによくのうのうと学園で生活できるよな」

    「いろんな寮の寮長ともつながり持ってるらしいじゃん」

    「いいよなあ、俺も異世界から来ました!とかふざけたこと言っていろいろ免除してもらいたいわ」



     聞くつもりなんてないのに、毎日嫌でも聞こえる彼女の悪口。異世界から来たから、魔法が使えないから、女だから、イレギュラーをつまんでは面白おかしくこねくり回して下品に笑う生徒を見るのは不快だった。不快に思うようになったのは、彼女の人となりを知ってしまったからだろう。必死で足掻いてる彼女を見ていたら、少なくとも俺は馬鹿らしく悪口で時間を過ごす気にはなれない。



    「酷いことはやめろよー、こいつ俺たちと違ってこんなちっぽけな魔法さえ使えないんだぜ?」

    「そうだった!あの狸みたいなモンスターより何にも出来ないんだったな!」



     部活終わり、夕飯のメニューを考えていた頭に流れ込んできたのは馬鹿にしたような笑い声だった。会話にもならない暴言の内容ですぐに彼女が絡まれていることに気づいて辺りを見渡すと、大きな木の方に三人分の人影が見える。

     音を立てずにそっと近づいて行けば、は 1467