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    まちこ

    twst/ジャミ監が好き 幸せになれ

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    まちこ

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    一年生とスカラビアと監督生とお箸の話 ジャミ監

    お箸という存在そのものが無さそうだよね

    #ジャミ監
    jamiAuditor

    「ハシ?」



     食堂での昼食の時間、「食べ物がおいしい世界でよかった」と呟いたことをきっかけに、その場にいたみんなが異世界の食事情に興味を持った。異世界、というよりも日本の食文化しか伝えることができない私は、とりあえず食器から違うことを伝える。スプーンやフォークだって使うけど基本はお箸を使うことを教えれば、みんな首をひねって頭の上にたくさんのハテナを飛ばした。



    「なにそれ、どういうの?」

    「・・・二本の細い棒」

    「棒!?」

    「え、どうやって、食べるの・・・?」

    「挟んで食べるの」

    「は、挟む?」



     みんなの頭の上のハテナの数はどんどん増えて、ついにエースが私を疑い始めた。そんなものでご飯が食べられるわけがないと。



    「本当だよ」

    「じゃあ証拠見せろよ」

    「お箸がないのに使えないでしょ・・・」



     ・・・しょうがない。



    「誰かペン貸して。二本」

    「ん、これでいいか?」



     誰より早く、そして快く差しだしてくれたジャックにお礼を言って私は久しぶりに二本のボールペンを指に挟んだ。懐かしい持ち方に小さく感動をしながらボールペンのペン先をかちかちと鳴らす。起きた歓声にお箸の持ち方を両親に叩きこまれてよかったと初めて思った。



    「え、どうなってんだこれ」

    「器用だな・・・」

    「私の国ではこれが当たり前だよ」

    「・・・そんぐらい俺でもできるもんね!」



     右手に持っていたジャックのボールペンをひったくったエースは私の見様見真似でボールペンを持ってみたけど、ペン先はクロスして先と先がきれいに合わない。奮闘するものの指がぎこちなく開いたりボールペンが転がり落ちたりと散々だった。



    「はあ~!?どうなってるわけ!?」

    「僕も、やりたい!」



     手を上げて立候補したエペルにボールペンを投げやりで渡したエースは少しだけ不貞腐れている。手先が器用がゆえに普段から不器用の化身かよ!といじり続けている私に負けたのが悔しいんだろう。



    「こ、こう・・・こ・・・」

    「違う違う、まず下をこう・・・」

    「っ~~~・・・んがー!でぎねぇ!!」

    「ぼ、僕にもやらせてくれ!」



     悔しそうに顔を歪めるエペルから渡されたボールペンを嬉々とした顔で持つデュースは最初の一本を指に乗せるところまでは上手くいった。おお、これは上手くいくかも!と期待したのもつかの間、上の一本をどうしても支えきれずころころテーブルに転がしてしまう。



    「・・・もう一膳お箸があればなあ」

    「お前ら何してるんだ?」



     がっくり肩を落として落ち込むデュースの後ろから、からっと明るい声が聞こえてきた。全員が顔を上げればそこにはカリム先輩とジャミル先輩が二人そろって立っている。手には食事が持たれていてどうやら今から昼食らしい。



    「ユウがいた世界の食器の持ち方を教えてもらってました・・・」



     諦めたのかジャックにボールペンを返して地を這う低い声を出すデュースを見下ろして二人は首をかしげた。

     事の発端を簡単に説明したジャックの隣に座ったジャミル先輩と、私の隣に座ったカリム先輩は真逆の反応を見せた。興味なさそうに食事を始めたのはもちろんジャミル先輩、興味を持って顔を覗き込んできたのはカリム先輩。



    「ユウのいた世界では棒で飯を食うのか!」

    「まあ、そう、ですね・・・」



     間違ってはないけど言い方がざっくりしすぎてて苦笑いをこぼす。



    「あーあ、俺も使ってみたいなあ」

    「じゃあ俺のボールペン使いますか?さっきまでみんなこれで・・・」

    「たかが二本の棒、出せもしないのか?」



     ぱちん、と指が鳴ってころんと私の手元に転がったのは普段使っているものとは少しばかり形は違うけど、お箸だった。六人の視線は一斉にジャミル先輩に向けられて、それでも先輩は平然と食事を続ける。



    「すげぇ!」

    「ありがとうございます!」

    「ユウ、ハシってこんな感じなの?」

    「うん、こんな感じ」



     斜め前に座っているジャミル先輩にお礼を言うと一瞬だけ目が合ってすぐにそらされてしまった。



    「持ち方教えてくれ!」

    「あ、はい!」



     ・・・もちろん、カリム先輩も一発で持てはしなかったけど、今までチャレンジしてきた三人の中では一番近い持ち方だった。お手本を一回見ただけで形に近づけるなんて器用な人だ。



    「こんな難しいもんで飯を食うなんて変わってるな、ユウの世界は」

    「・・・そうですか?生まれたときからそれが当たり前だから・・・」



     改めていろんな人から言われると当たり前に使っていた自分まで不思議になってくる。そうだな、確かになんでお箸の文化があるんだろう・・・



    「ジャミルもやってみろよ!」



     思考が変なところに飛びそうなところをカリム先輩の無邪気な声が引き止める。あからさまにめんどくさそうな顔をしているジャミル先輩に差し出されているお箸。カリム先輩以外全員が絶対にジャミル先輩はこんなことしないだろ、と思っていた。

     ひょい、と取られたお箸は私が持つよりきれいにジャミル先輩の手元に収まって、箸先もクロスすることなく上下に動いていた。



    「・・・す」



     ジャミル先輩が私へお箸を差しだしたのと同時にテーブルが沸いた。



    「すっげええええ!!」

    「え、どうやってやったんですか!?」

    「みんな出来なかったのに・・・」

    「ユウが使ってるところを一回見ただけっすよね?」

    「さすがジャミル!器用だな!」

    「別にこれぐらいどうってことない」



     涼しい顔をしてまた食事を再開したジャミル先輩を称賛する声があまりにも止まず、最終的に全員まとめて「さっさと食べろ!」と怒られてしまった。一旦は静かになったけどそれでもすぐにお箸の話の熱は戻って盛り上がる。これはブームになるかもしれない。もしかしたら誰かが作り出すかも。


     昼食の時間が終わってそれぞれ食器を片付けているとふいにジャミル先輩が隣に並んだ。急にどうしたんだと顔を見る前にそっと耳打ちをされる。



    「これで君のいた世界に行っても問題ないな?」

    「えっ」

    「冗談だよ」



     さっきは一度だって見せなかった満足そうな笑顔を一瞬だけ見せると、すぐにいつもの涼しい顔に戻って離れていった。普段私に冗談なんて言わないのに、しかもあんな冗談、耳が熱くなるじゃないか。
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    まちこ

    PROGRESSジャミルが逆トリップする話/ジャミ監
    監督生が成人してる
    (本当に魔法が使えないとは)



     小さく光を反射したマジカルペンを振ってみるけど自分の髪は一房も持ち上がらない。花を思い浮かべても手元に一輪だって出てきやしない。向こうの世界にいたときに当たり前に感じていた魔力は実は世界の空気自体に含まれていたようで、こっちの世界じゃ微塵も魔力を感じられなかった。

     ピンクのシーツに包まれた枕に顔を埋める。ほのかな花の香りが、制服を着た彼女の後姿を瞼の裏に思い出させる。それは懐かしい光景だった。両隣にはいつも一年生のコンビが陣取っていて、足元にはグレーの猫がリボンを揺らしながら偉そうに歩いている。俺はいつも遠巻きにそれを眺めていた。

     カタカタと響くタイピング音。たまに聞こえる咳払い、遠くからは変な呼びかけをする男の声がする。曰く“サオダケ”というものを移動販売しているときに流れてくるものらしく、昔からあるもの、なんだそうだ。

     少し顔を上げると、紺色のカーディガンを羽織った背中が見えた。瞼の裏に浮かんだ制服を着た背中より大人になった彼女がいる。長く伸びた髪は乱雑にまとめられていて細かい毛束が白いうなじに垂れているのを見るとこっちがくすぐった 1230

    まちこ

    MOURNINGずっと我慢していた感情が大爆発した監督生と、その監督生にどう接していいか分からなくてやるせないジャミル先輩のジャミ監

    ジャミル先輩好きな人ほど慰めるの下手くそだといいな(願望)
    「魔法も使えないくせによくのうのうと学園で生活できるよな」

    「いろんな寮の寮長ともつながり持ってるらしいじゃん」

    「いいよなあ、俺も異世界から来ました!とかふざけたこと言っていろいろ免除してもらいたいわ」



     聞くつもりなんてないのに、毎日嫌でも聞こえる彼女の悪口。異世界から来たから、魔法が使えないから、女だから、イレギュラーをつまんでは面白おかしくこねくり回して下品に笑う生徒を見るのは不快だった。不快に思うようになったのは、彼女の人となりを知ってしまったからだろう。必死で足掻いてる彼女を見ていたら、少なくとも俺は馬鹿らしく悪口で時間を過ごす気にはなれない。



    「酷いことはやめろよー、こいつ俺たちと違ってこんなちっぽけな魔法さえ使えないんだぜ?」

    「そうだった!あの狸みたいなモンスターより何にも出来ないんだったな!」



     部活終わり、夕飯のメニューを考えていた頭に流れ込んできたのは馬鹿にしたような笑い声だった。会話にもならない暴言の内容ですぐに彼女が絡まれていることに気づいて辺りを見渡すと、大きな木の方に三人分の人影が見える。

     音を立てずにそっと近づいて行けば、は 1467

    まちこ

    MOURNING元の世界では成人していた監督生と振り回される17歳のジャミル先輩のジャミ監

    振り回されてる自覚もあるし悔しいのにどうしても相手に勝てないジャミル先輩かわいいよねって気持ちだけで書きなぐった。
    机に置いていたヘアオイルを手に取って一息つく。今日も今日とてカリムは他の寮の人間を招くもんだから仕事は忙しかった。だけどいつもよりイライラしなかったのはその中に例の寮の彼女もいたから。



     軽いノックの音。それだけで扉の向こうが寮生やカリムじゃないことが分かる。まあカリムならノックなんてせずに問答無用でずかずか入ってくるから論外か。

     扉を開けるとそこには貸した少しだけ大きいスカラビアの寮服を身に纏った彼女が笑顔で立っていた。



    「こんばんは」

    「どうした、こんな時間に」

    「会いたくなっちゃって」



     いたずらに笑う顔に胸が高鳴る。悔しいがドキドキしていることを誤魔化すために咳ばらいをすると彼女は口元に手を当ててくすくす笑っていた。



    「この年だったら、こんなかわいいこと言っても許されるんですね」

    「・・・笑うな」

    「入れてください、寒いので」



     腕に触れた小さな手は冷たくなっていて俺は慌てて彼女を部屋へと招き入れた。危機感のなさに落ち込みもするけど、喜びの方が勝ってるのがやっぱり悔しい。

     気づいたら好きになっていた彼女は、向こうの世界では成人してい 1504

    まちこ

    TRAININGくそでか激重感情をこじらせているジャミル先輩と、そんなジャミル先輩のくそでか激重感情には気づかず片思いをしていた監督生のジャミ監

    ある意味両片思い
    彼女のそばにいるといつも気を張って生きている自分が惨めになった。無邪気に誰にでも笑いかける顔に胸はかき乱されて、疑いもせず俺に接する姿に苦しくなる。悔しいことは、辛いことは、苦しいことは、悲しいことは、何も知らないような、純粋な瞳から捕らえるたびに、俺はたまらず死にたくなった。彼女が永遠に気づかないこの気持ちに付ける名前なんて見つけられなくて、ただひたすらもがくしかできない。喉をかきむしって歯を食いしばって、どうしてこんなことになったんだと、泣きたかった。



    「ジャミル先輩、好きです」



     誰もいない図書室、彼女は俺の隣に座って言った。いつもより少しだけ照れくさそうで、顔がわずかに赤く見える。彼女の言葉に嘘偽りないことは誰が見ても分かる表情だ。
     心臓が早鐘を打って気分が悪くなる。喉をかきむしりそうになった手を必死に抑え込んだ。


     彼女が気づいていない俺の気持ちには名前が付けられないのに、俺に向けられた彼女の気持ちには名前が付いている。


     何かに期待をしたような目をふさぎたかった。



    「何を言ってるんだ」



     必死になって流そうと言葉を振り絞るけど、そんな必死な 924

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    机に置いていたヘアオイルを手に取って一息つく。今日も今日とてカリムは他の寮の人間を招くもんだから仕事は忙しかった。だけどいつもよりイライラしなかったのはその中に例の寮の彼女もいたから。



     軽いノックの音。それだけで扉の向こうが寮生やカリムじゃないことが分かる。まあカリムならノックなんてせずに問答無用でずかずか入ってくるから論外か。

     扉を開けるとそこには貸した少しだけ大きいスカラビアの寮服を身に纏った彼女が笑顔で立っていた。



    「こんばんは」

    「どうした、こんな時間に」

    「会いたくなっちゃって」



     いたずらに笑う顔に胸が高鳴る。悔しいがドキドキしていることを誤魔化すために咳ばらいをすると彼女は口元に手を当ててくすくす笑っていた。



    「この年だったら、こんなかわいいこと言っても許されるんですね」

    「・・・笑うな」

    「入れてください、寒いので」



     腕に触れた小さな手は冷たくなっていて俺は慌てて彼女を部屋へと招き入れた。危機感のなさに落ち込みもするけど、喜びの方が勝ってるのがやっぱり悔しい。

     気づいたら好きになっていた彼女は、向こうの世界では成人してい 1504